夢(1)
その夜私は、今日見聞きした内容をメモにし、眺めてみた。タブレット端末は職場の備品なので、昨日までの内容は手元にない。しかし、だいたい頭に入っていた。
発田玄治を殺した容疑者は、次の通りだ。
一、満島丈
二、発田玄治の身内を名乗り、挨拶に来た男(八雲さんの父?)
三、満島の父
四、館脇華
五、満島父の親友の老人
六、その他
六の可能性も高いのがネックだ。クローズドサークル内で起きた犯行でもないので、容疑者は限定されない。そのうえ十三年も前の事件なので、手がかりが少なかった。そもそも発田が殺されたというのも、警察の想像で根拠はない。第一発見者の満島も、病死だと言っていたし。
しかしその前提を崩すと身も蓋もないので、私はとりあえずこれが殺人事件であると仮定して推理を進めた。
動機だけで言ったら、五は外せるかもしれない。私の知り得た範囲でいえば、彼には発田を殺すメリットがない。二についても不明だ。誰だか分からないから、動機も何もあったものじゃない。仮に八雲の父だったとしたら、母親を奪われた恨みということにでもなるのだろうか? しかし五十歳近くなってから犯行に及ぶというのも納得がいかない。たまたま母の家に訪れたときに発田と出くわし、かっとなって殺したというのも無しだ。手土産を用意した計画性と齟齬が生じる。
満島の父が犯人だったら、どうだろう? 紅子との醜聞や、蓑田殺しの件で脅迫されて逆上して殺したのかもしれない。先生はああ言ったが、やはり社会的地位の高い人間にとって、不都合な過去は闇に葬ってしまいたいはずなのだ。
満島の動機はどうだ? 彼が誰かを庇っているという先生の意見には賛成だ。数回しか会っていないので断言できないが、満島は保身のために嘘をつくような人間には思えない。満島が庇っているのは、華か? 父親か? 満島に直接聞いてみたところで、多分答えてはくれないだろう。
答えの出ない問いをぐるぐると考えていたら、眠くなってきた。身体を預けていたソファーの甘い誘惑に耐えきれず、横になる。少しだけとうたた寝を許したら、浅い眠りの中で奇妙な夢を見た。




