表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継灯 〜最弱の僕が、亡き父と未来の息子と、時を越えて世界を救う〜  作者: 智珠
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/37

第二十六話 第二章の結び

焔と別れてから。事態は。急速に、動きだした。


ある夜。胸の灯を通じて繋がった、陽の声が。これまでにない、絶望と緊張を、帯びていた。


『父さん……ついに、来た』陽は、言った。『灰村燼が……自ら、時の淵へ、降りる準備を、始めた』


「時の、淵……」


『「始まりの灯」へ至る、もう一つの道』陽の声が、硬かった。『前は、楔で、無理やりこじ開けようとした。でも、今度は、違う。燼は、自分の命を燃やして。直接、太古の――一族の始まりの時へ、遡る、つもりなんだ』


「自分の命を、燃やして……?」


『ああ』陽は、言った。『継灯の、究極の使い方だ。己の灯を、すべて燃やし尽くして。誰も行けない、時の最果てへ、至る。――燼は、もう、自分が生きて帰ることなんて、考えちゃいない。ただ、紫苑さんの死を、なかったことにするために。世界がどうなろうと。自分がどうなろうと。燈本を、始まりから消す。それだけのために』


僕は、ぞっとした。


最愛の人を喪った、哀しみ。それが。ここまで、人を。突き動かす。自分の命さえ燃やし尽くして。世界を消そうとする、ほどに。


『もし、燼が、始まりの灯に辿り着いて。それを消したら』陽の声が、震えた。『燈本は、過去から消える。父さんも。じいちゃんも。俺も……みんな、最初からいなかったことに、なる。そして……世界そのものも。崩れる』


これが。灰返りの、最終局面。


僕は、守屋さんと、鈴に。そして、過去の父と、未来の息子に。そのことを、伝えた。


「みんな」僕は、言った。「最後の戦いだ。灰村燼が、始まりの灯に辿り着く前に。僕たちで――止める」


『ああ』過去の父が、力強く応えた。『おれも、おれの時代から。全力で支える』


『俺も』未来の陽も、言った。『〈灯路〉で、燼の行き先を。最後まで、見届ける』


「わたしも、いるよ」鈴が、笑った。「最後まで、一緒。相棒、だもん」


「うむ」守屋さんも、頷いた。「燈本のすべてを、賭けた戦いだ。わしも、老骨に鞭打とう」


過去に、父。未来に、息子。現在に、仲間。


僕は、もう。あの、教室の隅で、一人震えていた、灯真じゃ、ない。三つの時代を繋ぐ、灯を宿した。燈本灯真だ。


そして――その決戦を、前に。


僕は、もう一度、感じた。あの気配を。


胸の灯が、ふと、揺れる。誰かが、遠くから。僕に、語りかけようとしている。けれど、それは。父でも、陽でも、なかった。


『……燈本』


掠れた、小さな声。それは――焔の声、だった。


「焔!? どうして、お前が……」僕は、驚いた。継灯は、血族にしか繋がらない、はず。なのに。


『分からない』焔の声も、戸惑っていた。『なぜか……お前の灯に、触れられた。ほんの少しだけ、だが。……いや、今は、それより』


焔の声が。切迫した。


『聞け、燈本。父上は……本気だ。自らを燃やし尽くして。始まりの灯へ、向かう。止めたければ……明日の夜。古い神社の跡地に、来い。そこが、入口だ』


僕は、息をのんだ。


「焔……お前、なんで。それを、僕に」


しばらく、沈黙があった。やがて、焔は。ぽつりと言った。


『……分からない』その声は。迷子の子どものようだった。『ただ……このままでは。いけない気がした。父上も。おれも。お前の言った、「本当の想い」が……まだ、おれにも、あるのか。それを……確かめたく、なった、のかもしれない』


それは。鎖に縛られた少年が。初めて。自分の意志で。何かを選ぼうとした。その、最初の一歩、だった。


『……時間だ。長くは、繋げない』焔は、言った。『燈本。おれは、まだ。お前の敵かも、しれない。明日も、お前と戦うかも、しれない。だが……』


その先を。彼は、言わなかった。ただ。


『……来い。待ってる』


そう言い残して。焔の気配は。消えた。


僕は、しばらく。胸の灯に残った、その、かすかな温もりを。見つめていた。


焔の鎖が。軋みはじめている。彼の心が。動きはじめている。


明日。すべてが、決する。


灰村燼の、最後の企て。焔の、最後の選択。そして――三世代の灯の、真価が問われる、決戦。


過去と、現在と、未来。失った過去と。繋ぐ未来の、まんなかで。


僕は、最後の戦いへと。向かう。


長い、長い物語が。いよいよ、その結末へと。動きはじめた。


――第二部 了――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ