表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継灯 〜最弱の僕が、亡き父と未来の息子と、時を越えて世界を救う〜  作者: 智珠
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/37

第十九話 父の知恵の出どころ

灰村燼の悲劇を知ってから、僕は、ますます過去と未来に繋ぐことが増えていた。


未来の陽から、灰村の動きを聞き。それを、過去の父に伝えて、備える。三つの時代を行き来しながら、僕は、少しずつ、戦いの糸口を掴んでいった。


その夜も、僕は、過去の父に繋いでいた。


「父さん。陽が言うには。次の満月の夜に、灰村が、また動くらしいんだ」僕は、伝えた。「だから、その前に……」


『ああ、分かっている』父が、言った。『その夜の備えは、もう、しておいた』


僕は、きょとんとした。


「……え? まだ、僕、詳しく話してないのに」


『ん?』父も、不思議そうに言った。『いや……なぜか、分かるんだ。その夜に、何が起きるか。どこに備えをすれば、いいか。――昔から、こういう勘が、働いてな』


昔から、こういう勘が、働く。


その言葉に、僕の中で、何かが引っかかった。


ふと、母の言葉を思い出した。


『お父さんね。あなたが生まれる前から、「きっと、優しい子になる」って。まるで、もう知ってるみたいに、言ってた』


まるで、もう、知ってるみたいに。


そして――あの御守り。僕が、初めて襲われた、あの夜。父は、十一年も前から、その夜にぴたりと合わせて、御守りを遺していた。まるで、その夜が来ることを、知っていたかのように。


どうして、父は、知っていたんだ。僕が、いつ襲われるかを。僕が、どんな子になるかを。未来のことを。


「父さん」僕は、おそるおそる尋ねた。「その、『勘』って……いつ頃から、働くようになったの」


『そうだな』父は、考えながら言った。『……おまえと、こうして繋がるようになってから、かもしれん。おまえや、未来の陽から、いろいろと聞くだろう。その知識が……なぜか、最初から、頭の中にあった気がするんだ。妙な感覚だが』


僕の心臓が、とくん、と跳ねた。


そうか。


そういう、ことだったのか。


「……父さん」僕は、震える声で言った。「父さんの『勘』。父さんの、未来を見通す力。それは――僕たちなんだ」


『……どういう、ことだ?』


「僕や、陽が。時を越えて、父さんに、未来のことを伝える。だから、父さんは、それを『知ってる』。僕が、いつ襲われるか。どんな子になるか。全部――未来の僕たちが、父さんに教えたことが。父さんの中で、『最初から、知っていた』ことになってるんだ」


時の彼方で、父が、息をのむ気配がした。


僕は、震えていた。


僕が、初めて襲われた夜。僕を救った、あの御守り。父が、その夜に合わせて遺せたのは――未来の僕が、父に「その夜、僕は襲われる」と伝えたから、だ。


でも。僕が、父にそれを伝えられるのは、僕が継灯に目覚めたから。そして、僕が継灯に目覚められたのは、あの夜、御守りに救われたから。


ぐるり、と円を描いていた。


未来が過去をつくり、過去が未来をつくる。終わりのない、円。父の愛が、時を越えてぐるぐると巡り、僕を守っていた。


「父さん……」僕の頬を、涙が伝った。「父さんが、僕を守ってくれた、あの灯は。元をたどれば、僕自身が、父さんに託したものでもあったんだ。父さんと、僕とで、時を越えて繋いだ、輪っかだったんだ」


『……灯真』父の声も、震えていた。『そうか。おれの、この勘は。おまえだったのか。未来のおまえが、おれに力を貸してくれていたのか』


僕たちは、しばらく、言葉もなく、ただ、互いの温もりを感じていた。


時を越えて巡る、愛。それは、どこが始まりで、どこが終わりか、分からない。ただ、確かなのは、父と僕が、時の壁を越えて、ずっと互いを想い、支え合ってきた、ということだけ。


翌日。僕が、このことを守屋さんに話すと、彼は、深く唸った。


「……因果の環、か」守屋さんは、言った。「未来の行いが、過去の原因となる。継灯を極めし者だけが、織りなせる、時の綾だ。――灯真。それは、変えてはならん。その環は、すでに『起きたこと』。おまえは、それを、変えるのではなく、満たすのだ」


満たす。変えるのでは、なく。


「うん」僕は、頷いた。「分かってる。僕が、父さんに伝えることは、もう、起きたこと、なんだね。だから、僕は――ちゃんと、伝えなきゃ、いけない。父さんが『知っていた』ことを、現実にするために」


そして、僕は、気づいた。


この環を、逆に使えるかもしれない。


未来の陽が、見通した、灰村の動き。それを、僕が、過去の父に伝えれば、父は、三十年の時をかけて、備えを整えられる。そして、その備えが、現在の僕を助ける。


未来の知恵。過去の備え。現在の行動。それが、環をなして巡るとき、僕たち三世代は、どんな敵にも――灰村燼の灰返りにすら、抗えるかもしれない。


「……陽。父さん」僕は、胸の灯に語りかけた。過去と、未来。その両方に。「僕たちで。この繋がりで。きっと、運命を、変えてみせる」


三つの時代を貫く灯が、今、一本のより糸のように、固く結ばれはじめていた。


そして、僕は、まだ知らなかった。


この、強まりゆく絆が、やがて、最も過酷な真実と向き合うことになるのを。


未来の息子・陽が、これまで、ずっと隠してきた――ある、哀しい秘密と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ