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【第三章】現代文講師・蓮見修介の告白

警察の皆さんは、なぜ私の言葉を真っ直ぐに信じようとしないのですか。「致命傷が特定できない」「他にも自首した人間がいる」などと、まるで私が狂人か、あるいは自分の罪を軽くするために虚偽の証言をしているかのような疑いの目を向けてくる。心外極まりない。私は論理と真実を重んじる現代文の講師ですよ。私自身の記憶と、この両手に残る大理石の重み、そして生々しい感触を疑う余地など微塵もありません。あの夜、私が城ヶ崎勉の頭を重厚な灰皿で何度も叩き割り、その忌まわしい命を絶ったのです。他の誰でもない、私が真犯人です。


私は秀英アカデミーの看板講師として、長年教壇に立ってきました。論理的で明快な授業スタイルは生徒たちから圧倒的な支持を集め、私の名前を冠した参考書は全国の書店でベストセラーとなっています。テレビの教育番組から出演オファーが来ることも珍しくありません。私は自らの教育方針に絶対の自信と誇りを持っておりましたし、日々厳しい受験戦争の重圧と戦う生徒たちの未来が常に気にかかっておりました。私は彼らのために、自分の人生のすべてを捧げてきたと胸を張って言えます。


しかし、城ヶ崎勉理事長という男は、教育という崇高な営みを、単なる金儲けの道具としか見ていない下劣な男でした。


彼は生徒の成績を根本から伸ばすことよりも、いかに親の不安を煽って高額な夏期講習や無意味なオプション講座を数多く取らせるかということばかりを重視していました。彼にとって予備校とは、教育機関ではなく、効率よく現金を吸い上げるための集金装置に過ぎなかったのです。

私が「これ以上の無闇な詰め込みは、生徒の精神をすり減らすだけだ。一人ひとりの課題に合わせた質の高い指導、真の学力を育むための時間を確保すべきだ」と真っ向から反論しても、彼は鼻で笑うだけでした。「予備校はビジネスだ。君は黙って客を惹きつけるピエロを演じていればいい」と吐き捨てる始末。教育現場の最前線で命を削っている私の進言など、一顧だにされませんでした。


私は夜も眠れないほど憤りを感じていました。純粋に医学部を目指す教え子たちが、あの男の私利私欲のために搾取されている。その事実が、どうしても許せなかったのです。


事件当日の夜、私はこの決定的な教育方針の違いについて、最終的な決着をつけるべく理事長室へ向かいました。私の講師控室の机には、彼からの呼び出しのメモが置かれていました。

『二十一時四十五分、理事長室。今後の契約についての最終通告だ』


彼はおそらく、私がこれ以上彼の阿漕な金儲けの邪魔をするつもりなら、専属契約を打ち切るつもりだったのでしょう。私の授業方針に従わないならクビだ、という露骨な脅しです。しかし、私も引き下がるわけにはいきません。生徒たちをただの「金づる」としてしか見ていないあの男の独裁を、これ以上許しておくわけにはいかなかったのです。私は秀英アカデミーの未来を背負う覚悟で、三階の理事長室へと続く階段を上りました。


二十一時四十五分。私がドアを開けると、そこは言葉を失うほど異様な空間でした。コートなど着ていられないほどの、肌を刺すような暴力的な熱気が部屋中に充満していたのです。まるで地獄の釜の底に足を踏み入れたかのような息苦しさでした。


部屋の明かりは落とされ、不気味な静寂が満ちていました。その薄暗い空間の奥、デスクの向こう側に、城ヶ崎の巨体が椅子にもたれかかっているのが見えました。


私が無言で歩み寄ると、暗がりの中から、あの人を小馬鹿にしたような、傲慢で冷酷な声が部屋に響き渡りました。


『君は用済みだ』


その短い一言が、私の心の中に辛うじて残っていた最後の理性の堤防を、完全に決壊させました。


用済み、だと?この秀英アカデミーの躍進を現場で支え、何百人もの生徒たちの学力を引き上げてきた私に向かって、己の汚い金儲けの邪魔になるというだけで、そんなゴミを捨てるような言葉を吐くのか。真の教育者を排除し、この学舎を完全に腐敗させるつもりか。

私が築き上げてきた誇り、そして生徒たちへの純粋な想い。そのすべてを踏みにじる言葉に、私は激しい怒りで目の前が真っ白になりました。私の頭の中で、何かが弾ける音がしました。


気がついた時、私の右手はデスクの上に置かれていた、来客用の分厚い大理石の灰皿を強く握りしめていました。ずしりとした冷たい重みが、私の正義と殺意を肯定してくれているように感じました。


私は獣のような叫び声をあげながら、椅子の上の城ヶ崎に飛びかかりました。そして、その巨大な頭部に向けて、灰皿を何度も、何度も、力の限り振り下ろしたのです。


ゴッ、メチャッという、骨と肉が砕ける鈍い衝撃音が室内に響きました。振り下ろすたびに、何か温かくて生臭い液体が私の顔や手に飛び散る感触がありました。城ヶ崎は反撃してくることも、悲鳴を上げることもなく、ただ重力に従ってその頭を力なく横に傾けました。デスクの上がみるみるうちに赤黒く染まっていくのが、暗闇の中でもはっきりと分かりました。完全に動かなくなったその頭部は、もはや人間の形を保っていなかったかもしれません。


私は血まみれになった灰皿を床に落とし、肩で荒い息を吐きながら自分の両手を見つめました。酷い有様でしたが、不思議と胸の中は澄み切った秋空のようにすっとしていました。私はついに、教育という聖域を汚し続けてきた悪魔を倒したのです。これで生徒たちは救われる。


私が殺した。それでいいじゃないですか。なぜ他の人間の名前が出るのですか。他の誰でもない、私がこの手で結末をつけたのです。城ヶ崎勉を裁き、処刑したのは私、蓮見修介です。それ以外の真実など、この世に存在しません。

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