第20話:最前線
戦場が白く弾けた。
轟音。
衝撃。
そして暴風。
俊也は咄嗟に腕で顔を庇う。
地面が揺れる。
崩れたビルの破片が吹き飛ぶ。
何が起きたのか。
一瞬、誰も理解できなかった。
やがて風が晴れる。
そこに立っていたのは――
神代零牙だった。
ただし。
いつもの零牙ではない。
空気が違う。
周囲に淡い白い光が流れている。
まるで身体そのものが発光しているみたいだった。
「……」
誰も言葉を発しない。
それほど異様だった。
人型エネミーが動く。
ドンッ!!
踏み込み。
ただそれだけ。
だが音が遅れて届く。
速すぎる。
俊也の目が細くなる。
(見えない)
今の自分では。
追うことができない。
次の瞬間。
零牙が消えた。
そして。
人型エネミーの頭部が弾け飛ぶ。
爆発。
衝撃。
地面が沈む。
「すげぇ……」
誰かが呟く。
だが。
俊也だけは知っていた。
終わっていない。
吹き飛んだ頭部。
その断面から黒い線が伸びる。
絡み合う。
増殖する。
そして。
数秒で元に戻った。
「は……?」
新人たちの顔が青ざめる。
倒したはずだった。
なのに。
何事もなかったように立っている。
零牙は驚いていない。
舌打ちもしない。
ただ。
静かに構え直す。
「やっぱりそうか」
一言。
それだけ。
俊也は理解した。
(知っていたのか)
Aランク。
強いだけじゃない。
経験している。
こういう敵を。
通信が入る。
『回収部隊到着まで三分』
『撤退準備を開始してください』
三分。
長い。
今の状況では、長すぎる。
その時だった。
俊也の視線が再び止まる。
崩壊したビル。
黒煙の奥。
半分埋もれた銀色のケース。
まだある。
消えていない。
(本物なら……)
心臓が少しだけ速くなる。
前世で見たことがある。
だが手に入らなかった。
人類強化装備アーティファクト。
ロストギア。
もしあれなら。
未来が変わる。
その瞬間。
人型エネミーの赤い目が動く。
ゆっくり。
俊也を見る。
そして。
銀色のケースを見る。
俊也の表情が変わる。
(まさか……)
次の瞬間。
人型エネミーが動いた。
向かった先は。
零牙ではない。
俊也でもない。
銀色のケースだった。




