第十一話:独眼竜の胎動
第一部、完結への応援ありがとうございました!
ここからは第二部の開幕です。
まずは奥州のあの男を、情報の網にかけてやりましょう
羽柴秀吉という 因果 をこの世から抹消して、数日が過ぎた。
二条御所の玉座に座る俺の身体は、もはや半分以上がこの世のものではなかった。右腕に続き右足も動かず、透き通った皮膚の奥には、血の代わりに 墨の汚れ のような黒い澱みが流れている。
「……はぁ、はぁ。天の理は、まだ俺を諦めていないか」
空を見上げれば、昼間だというのに星が揺れている。いや、星ではない。天の理が、俺という 不純物 を排除するために書き換えた、新たな刺客たちの予兆だ。
その時、御所の静寂を破り、光秀が血相を変えて飛び込んできた。
「将軍様! 奥州より、伊達政宗が軍を動かしました! その数、数万……。ですが、報告によれば、伊達の兵たちは皆、死人のような形相で、あり得ぬ速さで南下しているとのこと!」
「政宗……。あの若造まで、天に操られたか」
俺は残った左手で、震える筆を握る。
視界の端には、相変わらず不気味な文言が浮かび上がっている。
『啓示:重要個体「伊達政宗」に、失われた因果の破片を付与。……「独眼竜の神罰」を執行します』
「神罰、だと? 面白い。その片目、俺がさらに深い絶望で塗り潰してやる」
俺は、もはや自身の命そのものである墨を、白紙の地図に叩きつけた。
政宗の「右目」――史実で失われたはずのその場所に、天の理が 偽りの未来 を見せている。奴は、俺がこの世界を壊す 魔王 であると吹き込まれているのだ。
『伊達政宗の右目に宿る「偽りの啓示」を、俺の「嘘」で上書きせよ。彼が見る未来を、足利の栄華と、天の理の崩壊へと書き換えろ』
書いた瞬間、俺の喉から凄まじい量の血が噴き出した。
今度の代償は 声 だ。喉が焼けつくように熱くなり、言葉が、ただの掠れた音へと変わっていく。
だが、書き換わった。
奥州を駆ける伊達政宗は、馬上で突如、右目を押さえて絶叫した。
そこに見えていた 魔王討伐 の光景が、一瞬にして、巨大な天の歯車が砕け散り、その破片に人々が押し潰される 真実の終末 へと変わったのだ。
「……なんだ、これは! 俺に力を与えた『神』こそが、この世を滅ぼす元凶だというのか……!」
政宗の進軍が止まる。
俺は、声の出なくなった喉を震わせ、形にならない笑いを浮かべた。
天の理よ。お前が駒を増やすなら、俺はその駒の 目 を奪い、俺の味方に変えるだけだ。
身体が朽ち果てるのが先か、俺がこの 世界の筋書き を奪い取るのが先か。
二部、開幕。
独眼竜よ、お前の野心、俺が物語の燃料にしてやろう。
独眼竜・政宗すらも、義昭の筆先一つで「狂信者」に変貌しました。
ここから物語のスケールはさらに加速していきます。
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