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第12話 オンリーワン

武器もやる気も無くなった俺はダンジョンから出て、街へと向かう。


道中、肩に乗ったバグリンが――降ろしても降ろしても勝手に乗って来るので諦めた――『うわぁ』とか『すごいすごい』とか、景色を見てずっと燥いでいた。

まあずっと洞窟の中にいたのなら、さぞ外の風景は珍しく見えた事だろう。


耳元で騒がれる俺にとっては、うるさくて敵わんのだが……


「なんでミュート機能ねーんだよ」


「ミュート?」


「気にするな」


テイムモンスターには会話機能がある訳だが、システムでそれをオフにする事も出来る様になっていた。

だがこのゲーム世界ではオプション関係を弄る事が出来ない為、それが出来ないのだ。


「すごいすごーい。いっぱいだぁ」


街に戻ると、今度は景色ではなくそこで生活する人々の姿に燥ぐバグリン。


……スライムが珍しいのか、結構チラ見されるな。


「あ、おいしそー」


俺が冒険者の横を通り過ぎようとすると、バグリンがそいつの腰にかかっている剣を見てそう口にする。


「ん?」


その剣はミスリル製ではなかった。

俺はこいつがミスリルを好んで食べるのかと思ってたが、どうやらミスリルでなくともいい様だ。

ひょっとして、鉱物全般を喰らうって感じだろうか?


「なあ、これはどうだ?」


そう思い、インベントリから鋼の塊を取り出す。


「んー、いらなーい」


が、拒否られる。

単に鋼が嫌なのか、それとも武器じゃなければ食指が動かないのかどっちだ?

まあ、武器屋に行って確認してみればいいか。


俺はそのまま真っすぐ、武器や防具を扱う店へと向かう。


「うわぁ!いっぱいだぁ!美味しそう!」


店に付くと、バグリンが興奮して俺の肩でピョンピョン跳ねた。

果てしなくウザい訳だが、まあ我慢する。


「どれが食べたい、言ってみろ」


「えーっとね、んとね……あれとあれとあれとあれとあれと、それにあれとあれとあれと」


バグリンの一部が棘の様に伸び、次々と武器を指していく。


……どの金属云々じゃなく、武器を食べるみたいだな。


選んだ武器の種類や素材はまちまちなので、金属で選んでいるという感じは無いようだった。

更に選ぶ際に防具類が全て飛ばさていたので、バグリンは武器を食べる性質なのだと俺は理解する。


食べる物は分かった。

なら、次はどの程度食べられるのかを確認するとしよう。


「すいません」


俺は店主に声をかける。

武器を買う為に。


「この店にある武器全部下さい」


「……は?」


俺の言葉に、店主が何を言ってるんだこいつ的な顔をする。


うんまあそういう反応になるよな。

店に売ってる武器全部買うとかいう、超絶大人買いなんて戦争関係以外ありえない訳だし。


「金はあるんで、武器を全部売って欲しい」


「うってー」


「うわっ!?青いのが喋った!?」


バグリンが話すと、何故か店主が驚く。


何でこの人驚いたんだ?

ああ、スライムは基本いないから、バグリンがテイムモンスターと気づかなかったんだろう。


「こいつ、テイムモンスターなんで安心してくれ」


「え、あ、そ、それは分かります。ただ……言葉を話すテイムモンスターなんて、初めて見ましたから。つい驚いてしまって」


「そうなのか?」


初めて見た?

ゲーム内のテイムモンスターは、ミュートしていない限り全て言葉を話す仕様だ。

テイムモンスターを見た事がないってんならともかく、話す奴を知らないとなると……ひょっとしてプレイヤーがテイムしたモンスターしか喋らないとか?


……だとしたら厄介だな。


他の人間からすれば、バグリンは唯一言葉を話す希少なテイムモンスターに見える筈だ。

そんなとんでもレア物である以上、それを狙ってよからぬ真似を仕掛けて来る輩が出て来ないとも限らない。


なにせここはゲームではなく、意思を持った人間が生きるゲーム世界な訳だからな。

十分あり得る話だ。


言うまでもないが、命が繋がってる以上こいつを誰かに奪われる訳にはいかない。

連れ去られた先で殺されたら、俺まで死ぬ事になってしまうから。


まあ禁じた方が良いよな……


街中では若干チラ見されてはいたが、視線を集めるって程ではなかったので、たぶん周囲には、俺が変な声で独り言を呟いているとでも思われていたんだろうと思う。

知っているのが店のおっさん一人ぐらいならまだいいが、このまま放置してたらどんどん広まって、リスクが上がるには目に見えている。


なので、バグリンには早いうちに釘を刺す必要があるのだが――


「あるじぃ、どうしたの?」


俺がバグリンを見ると、不思議そうにつぶらな瞳で此方を見つめ返して来る。


何と言うか、言う事聞かなさそう……


その頭の悪そうな言動と仕草から、どうもそう思えて仕方ない。

肩に乗るなってのも全然聞かなかったし。

まあでも肩に乗るなってのは命令じゃなかったので、言えば案外すんなり聞いてくれるかもしれない。

取り敢えず命じてみよう。


「バグリン、これからは俺がいいって言ったとき以外喋らない様に。これは主としての正式な命令だ」


「えー、やだー」


あっさり拒否られた。

この糞バグモンスターめ、言う事聞けよ。

腹立たしい。


まあ勿論、この程度で諦めたりはしない。

言う事をちゃんと聞くよう、徹底的に教育するさ。

こちとら命がかかってる訳だからな。


ああそういや、動物の躾で餌を使ってやってるのを昔テレビで見た事があったな……


「取り敢えず武器を売ってくれ。全部」


という訳で武器(エサ)を購入。

まずはこの餌で釣って、命令を聞くよう躾てみるとしよう。


「あ、ああはい……分かりました」


俺は大人買いした武器をインベントリに納め、店を出ると同時にバグリンをわきに抱えて人気のない街の外へと向かう。

躾の為に。


「わーい。たのしー」


わーいじゃねぇよ。



拙作をお読みいただきありがとうございます。


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