第2話
「というわけで、債務者の娘になったよ」
翌朝、青葉はいつもの通学路で、東条家に起きた悲劇を幼馴染へ語っていた。
隣で頬を引き攣らせながら絶句しているのは、青葉と同じ高校に通う同い年の少女だ。
名前を北見小夜。母型の祖母がフィンランド人で、それに由来してロングヘアは鮮やかな銀色。夏の朝日を浴びて輝く銀の前髪の中には、吸い込まれるような黄金色の瞳。
背丈は青葉と変わらず平均的ではあるが、思わせぶりな笑みを常に浮かべるその顔は、整ってこそいるもののやや幼くあどけない。
夏らしい半袖のブラウス、規則通りのスカート丈に厚手のタイツを穿いた青葉に対して、小夜は少しスカートを折っており、靴下がくるぶしまでしかないこともあって脚が眩しい。
彼女は幼稚園時代からの幼馴染であり、青葉にとって最も信頼できる親友とも呼ぶべき相手だ。そんな小夜は健康的な半袖の夏服から覗く絹織りの肌をした手で己の口を覆うと、同情をするかと思いきや、開口一番苦い声を出す。
「うわぁ~……なんか、幼馴染の家のそんな生々しい話を聞きとうなかったよ」
「そう言わないでよ。もしかしたら引っ越すかもしれないんだから」
第一声が心配よりも軽口とは、いかにも北見小夜らしい。
青葉が苦笑しながら最悪のケースを持ち出せば、小夜は少し真面目に唇を尖らせた。
「あー、自己破産とかだと家も持ってかれるんだっけ? あれ、賃貸じゃないんだ」
「持ち家だね。ま、個人再生にすれば家は持ってかれないだろうけど」
個人再生による債務整理をした場合、債務の一部は返済をする必要があるが、代わりに自己破産に比べて残せる資産が多いというメリットがある。最悪の場合はそれを頼ることになる。恐らく引っ越しをするといったことはなくなるだろうが、しかし幼馴染には伝えておきたい。
小夜は茶化すような顔を僅かに曇らせると、不安そうに青葉を見る。
「そか――それで、返済の目処はついてるの?」
「ついてると思う? この薄暗い顔を見てごらんなさいよ」
「いつもと変わらないブスだね」
真顔で拳を振り上げる青葉。ギャグ漫画の如くすたこらと走って逃げ出す小夜。
青葉は走れず、歩きながら少し足を引くようにしてその背を追う。
数歩ほど離れた辺りで、小夜は何かを思い出したようにハッと歩調を緩める。それからくるりとターンして青葉の凄絶な手術痕が見える左脚を見ると、更に極端に歩幅を短くした。
その顔は笑みを浮かべているが、ぎこちない。
やがて歩いて追い付いた青葉は、そんな顔を見ながら「えい」と一発殴っておく。
おどけた顔で殴ってやるから、その申し訳なさそうな顔をやめてほしかった。
上手に笑いきれない微妙に軽薄な顔で一撃を受け止めた後、小夜は再び青葉の横で前を向き直り、そして顎を摘まみながら唸り声を上げる。
「こほん……んー、しかし三千万円。ちょっと頑張ってどうこうって額じゃないね」
「だねぇ。ただ個人再生にするにしても数百万くらいは返済することになるから。どちらにしても、娘として、何かできることはないか探そうと思ってはいる」
放課後にアルバイトを始めるのは勿論だが、学校でも何かできることはないか。
お金になりそうなものが学校にないか、青葉が遠い目で記憶を辿っていると、ちょいちょいと青葉の夏服の袖が引っ張られる。「ん」と視線を寄越せば、隣で小夜が不敵な笑み。
YouTubeの動画を表示したスマホを片手に、もう片手の親指で己を指して豪語した。
「アイアム企業系ブイチューバー! アイハブ貯金五千万円!」
時価総額千億を超える株式会社が運営する、大手バーチャルタレントグループ。
小夜が持つスマホに表示されている動画には、そのグループに所属する、淑やかな黒髪に宝石のような輝く瞳が可愛らしい人気バーチャルYouTuber。
その中の人が、何を隠そう青葉の目の前にいる北見小夜である。
青葉は暫し険しい顔でスマホの画面を見詰めた後、瞑目しながら薄く頬を緩める。
「活動始めたの一昨年とかじゃなかったっけ? もうそんなに稼いだの?」
「ふひひ、私こう見えてボイスの売り上げがいいんですわよ」
ボイス――特定のテーマに沿って演者が声を収録した、音声コンテンツのことだ。
ニヤニヤといやらしい笑顔を浮かべながら口元をスマホのキャラクターの顔で隠す小夜。そして青葉を見ながら軽くウインクをすると、悪戯っぽく緩めた唇をスマホから覗かせた。
「そんなにお金に困ってもいないからね。あげよっか? 三千万」
青葉は悩ましい笑みで親指をトンと己の額に置くと、唸り声を上げた。
「ん……まあ正直、困ったら小夜を頼ろうみたいな浅ましい考えはあったけども」
青葉としては懺悔にも近い白状なのだが、不思議と小夜は頬を綻ばせて嬉しそう。だが青葉としては、そこで嫌がってくれない幼馴染だからこそ、自らは努めて慎ましやかでなければならないという自制心を作用させている。
「――だからこそ、あまり安易に頼るのも気が引けるよ」
む、と一転して小夜が不服そうに眉を顰めるが、青葉はそれを笑顔で誤魔化した。
「お金は大事だよ。三千万、大事にしなさいな。私は私で頑張るから」
小夜は冷たい目でスマホをポケットに戻すと、容赦のない声色で詰問する。
「そうは言うがね、青葉さんや。そう言ってられる状況でもないでしょうよ」
「それはマジでそうなんだよね。いやもう本当に仰る通り」
幼馴染が優しいからこそ頼り過ぎるのも――なんて言っていられる状況ではない。青葉は冷や汗を浮かべながら殊勝に頷いて小夜の糾弾を認め、小夜は流石に心配の色を濃くする。
「お金の工面ができなければ個人再生? ってやつなんでしょ? よく分からないけど、ああいうのって債務者がブラックリスト入りするんじゃないの?」
「するね。お母さんが今後保証人とかになれなくなると思う」
「奨学金とか一人暮らしの時に困るでしょ。どうすんの」
どうしよう、と素直に何も考えていないことを返せば怒られそうなので、青葉は変な汗を浮かべながら曖昧な笑みで首を捻って誤魔化しておく。小夜は眉をピクピク動かして唸る。
「意地張ってる場合じゃないでしょ。受け取りなよ、お金。友達じゃん」
だが、青葉としては本当にどうしようもなくなれば小夜を頼りたい気持ちはあるものの、現時点で友達の厚意だからと安易に飛びつくのも浅ましい気がして気が引ける。
青葉は誘惑に屈しそうな気持ちを、ぎゅーっと目を瞑って堪え、声を絞り出した。
「……いや! 流石に悪いし、もう少し自分でどうにかできないか頑張ってみる」
小夜は唇を尖らせて一つ唸った後、まったく釈然としない様子で、
「まあいいけどさ」
と、心にもないことを呟いた。
「ということで急遽のお金が必要なんです。皆さんのお知恵をお貸しください」
登校して間もなく、青葉はクラスでも取り分け親しい友人女子四名に相談した。クラスの委員長を務める女子と、よくその机に張り付いてわいわいと騒いでいる三名だ。
ド派手に真っ赤なインナーカラーを付けたセミロングヘアの委員長は、席に着いたまま考える素振りを見せる。あまりに突拍子もない相談に動揺を隠せない様子だったが、
「えーっと、いくらだっけ?」
どうにか平静を取り戻しながら改めて借金総額を確認した。
青葉は委員長の机の前に膝を突いたまま、項垂れつつ答えた。
「三千万円です」
委員長の左右と背後にいた佐藤、山田、田中の三人は顔を見合わせて、
「パパ活」「FX」「銀行強盗!」
間もなく一人ずつ委員長から両脇を掴まれ、少し離れた場所に置き去りにされていった。
やれやれと真面目な顔に呆れと疲弊を浮かべた委員長が席に戻ってきて、青葉は申し訳なく思いながら慇懃に会釈を返す。委員長は頬杖を突いて青葉を見詰めた。
「さて、真面目な話だけど、頑張って返すくらいなら債務整理の方がよさそうに思うよ」
開口一番の忠言に、青葉は腕を組んで捻じれるくらいの勢いで首を捻る。
「やっぱり……そうですよねぇ」
「うん、弁護士通した交渉が上手くいっても、十年百二十回払いで毎月二十数万とかでしょ? 利子も付く。大学費用とかも払えないだろうし、高卒で就職になるかも? 資格勉強をする時間とかもなくなるだろうから必然的に生涯収入も落ち込むだろうし、メリットに乏しいよ」
改めてリストアップすると、やはり債務整理するべきかという念が強くなる。しかし、
「ただ――デメリットも充分に多いから、返せるなら返した方がいいんだよね」
実際にはそれに踏み切れない心情も理解できる様子で、委員長は笑ってくれた。
青葉も彼女の言う通りに債務整理を勧めるのが正しいのだろうとは思いつつも、そうせずに済む道があるのならそうしたいという気持ちと共に頷いた。
「ですね。それに……借りたものは返すべきだとも思ってて。とはいえ、自力ではどうにもならないように思ってまして。恐縮なのですが、委員長のお知恵もお借りできると」
委員長が特別に債務についての知見を持っている訳ではないのだが、しかし豊富な知識と広い顔、感心するような思慮深さを持っている女史であるため、ついつい頼ってしまう。
縋るような青葉の顔を遠い目で見詰めた委員長は、難しい顔で一本、指を立てた。
「一応、学生にしては高時給のバイト。心当たりがないわけでもない」
「こ、こんにちはー。南野雲雀さんっていらっしゃいますか?」
昼休み。青葉がやってきたのは二つ離れた教室だった。
顔と名前が一致しないので、扉を開けて大きな声で名前を呼べば、こちらに集った視線があっという間にその人物へと移っていく。そこは、教室窓際後方の席だった。
そこでは、少しくすんだ亜麻色の髪を編み下ろしにした美少女が、大勢のクラスメイトに囲まれていた。毛髪が染色でないことは日本人離れしたコバルトブルーの瞳が証明しており、真っ直ぐな鼻と柔らかそうな薄桃色の唇、その顔立ちは並外れて端整だ。
明らかに一般人ではないオーラのようなものを醸し出す彼女は、青葉の呼び出しに眉を上げて反応すると――気さくな笑みを浮かべながら「はーい」と椅子を立ってくれた。
目の前までやってくると、その圧倒的な存在感に青葉は気圧されそうになる。
背丈は青葉と殆ど変わらないはずなのだが、思わず見上げるような角度を取りそうになりながら生唾を一つ呑み込む。シミ一つない肌に寸分の狂いもなく配置された顔のパーツ。吸い込まれるような瞳に、どこか可愛らしい印象を与える丸みを帯びた顔のライン。
「どうしたの? もしかして告白とか?」
本当に美人だ。青葉は思わず感嘆の吐息をこぼしながら苦笑を返す。
「広義的にはそうかもしれません」
「お。じゃあ場所を変えた方がいいかな」
そう言いながら寸分も動揺する素振りを見せず、眠たげに目を細めて教室を出る雲雀。
告白され慣れているのだろうか。まあそうだろうなと思わせるような美貌だ。青葉は悪いと思いつつもお言葉に甘えてその背中を追って、廊下の少し離れた窓際まで向かう。
そして向かい合った雲雀は『さあどうぞ』とばかりに両手を広げ、青葉は一拍の呼吸。
「――実はですね、南野さんが女優業をされているとお伺いしまして」
開口一番に青葉が委員長から聞いた話を伝えると、雲雀は目を細めてにこりと笑う。
「されてるよ、女優業。というか流石に同学年の人は皆知ってると思ってたけど?」
知らなかったことを咎めている訳でもないだろうが、青葉は手を振って弁明する。
「ああ、いや、私も二年生に女優をしている人がいるというのは知ってたのですが、お名前とお顔が合致することはなくて。お会いできて光栄です」
青葉は慇懃に頭を垂れ、まずは畏まっておくことにした。
委員長に彼女のことを紹介される前、一年生の頃から『南野雲雀は女優をしている』という話を噂程度に聞くことはあった。しかしそれをわざわざ確かめるのも何だかミーハーみたいで嫌だったので、そう深くは確かめずに今までやってきたのだが、そうもいかなくなった。
「――初めまして。手前、東条の青葉と申しやす。貴重なお時間をありがとうございます」
あんまり畏まっても鬱陶しいかと、青葉は少し冗談めかして自己紹介。「東条の青葉さんね」と雲雀が可笑しそうに頬を吊り上げ名前を繰り返してくれた。
「それで? 告白っていうと、そんな可愛くて素敵な女優様とお付き合いをしたい的な?」
勿論冗談らしく片目を瞑ってお茶目な笑みを見せる雲雀へ、青葉も口を隠して軽く笑った。
「あはは、それが叶うなら是非ともお願い申し上げたいのですが、実はもう少しだけ込み入った事情でして」
青葉はそう言うと己の口を隠していた手を離し、神妙な顔へ。
そして顔の前でパンと手を拝み合わせると、腰を直角に曲げて懇願した。
「単刀直入に申し上げます。お仕事を頂けないでしょうか!」
雲雀は笑顔で何か相槌を打とうしつつも、しかし理解が追い付かない様子で瞬きを繰り返す。そして不思議そうに笑みを濃くしてぎこちなく首を捻ると、唸るような疑問の声を出した。
「――んんん?」
そこで青葉は昨夜明かされた衝撃の事実を、当然母親の痴態は伏せて説明した。
最初は怪訝そうだった雲雀も、まるで自分をハローワークと勘違いしているのではないかと思いたくなるような依頼の元凶を知ると、同情の眼差しで頬を引き攣らせていった。
「ははー、なるほどね。告白っていうのはつまり、借金三千万ってことか」
いつの間にか廊下の壁に背を預けるようにして、二人横並びに言葉を交わす。青葉は恥ずかしさにほんのりと頬を赤く染めながら、殊勝に瞑目して頷いた。顔が熱い。
「お恥ずかしながら。叶うなら普通のアルバイトよりも高時給なものだとか、学校でもできるような内職だとか。そういったものをご紹介いただけるととても有難く、それで色々な人に相談をしている内に南野さんに行き着いたという次第でございます」
「ふーん」と顎を摘まんで唇の両端を吊り上げた雲雀は、目を細めて微笑む。
「告白って言うから。好きって言われるのかと思ったよ」
「その割には平然としていましたね。慣れているんですか?」
「逆に訊いてみようかな。そんなイベントに不慣れそうな顔してる?」
恋人ならとても面倒くさい質問も、これからお世話になりたいと願う相手なら別だ。青葉は満面の笑みで全く淀みなく、べらべらとよく回る口で歯の浮くような世辞を並べ立てる。
「まさか! 女性愛者なら一度は惹かれるべきご尊顔をされていらっしゃいますので――おっと空から流れ星! っと思ったら南野さんのお顔でした。へへへ!」
「お世辞も過ぎると悪口になってくるね」
「おいブス」
「悪口が過ぎてもお世辞にはならないんだよ」
阿といえば吽。テンポよくツッコんで吹き出しながら青葉の頭にチョップを落とす雲雀。ゴツンとこれが冗談であったことを強調するように大袈裟に頭を揺らせば、雲雀は相好を崩して話を本題に戻した。
「さて――ここでボケを挟んでくる君の度胸に免じて、本題のお仕事の件に答えるね」
「大変失礼いたしました。よろしくお願いいたします」
とてもいい人だ。青葉は感謝の念に堪えず真面目くさった顔で再び手を拝み合わせる。
「前提として君の境遇には同情するし、力になってあげたい気持ちはあるんだけど」
「けど」
何だか不穏な言葉尻に、青葉は冷や汗を一筋こめかみに伝わせながらオウム返し。
「まあ難しいよね。無資格未経験の人材を使える仕事っていうのもあんまりないかな」
――まあ、そうだよなあ。青葉は落胆を隠せずに溜息をこぼす。
「……ですよね…………」
当然の話ではあるが、しかしやはり、状況が状況だけに期待をしてしまった。
肩を落とす青葉を見て、雲雀は申し訳なさそうに腕を組んだ。
「一応、撮影現場とかで人を募集していないか訊いてあげることはできるけど、多分、時給はそんなに変わらないと思うよ? 芸能界に興味あるとかでなければ、普通に塾講師とか家庭教師とか、ちょい高めのバイトを頑張って探した方がいいんじゃないかな」
青葉は下唇を噛んでぐーっと目を瞑り、そして溜め込んだ言葉を全て呑み込む。
それでも、だとか。しかしながら、だとか。そんな言葉が浮かんではくるが、結局それらは感情論。合理的かつ論理的に考えれば全面的に雲雀が正しいので、弱々しく頷いた。
「……はい」
「ごめんねぇ、力になれなくて」
「と、とんでもない! こちらこそ、ご歓談中にお時間いただいてごめんなさい」
露骨に落ち込んでいては相手の罪悪感を刺激するばかりで、それは少し狡いか。
それに気付いた青葉は慌てて笑顔を取り繕うと、ぶんぶんと両手を胸元で左右に。そして振った手をにこやかに顔の横に合わせて添えると、力強い笑みを返す。
「活動、応援しています。頑張ってください!」
殆ど初対面とも呼ぶべき相手の唐突で突拍子もない申し出に、ここまで真剣に応えてくれたのだ。こんな人格者のこれからの活躍を祈らずして何とする――と思っていると。
「南野さん?」
雲雀はそんな青葉を見て、悩ましそうに眉を顰めて唇を尖らせていた。どうかしたのだろうかと重ねて尋ねるように顔を覗き込むと、やがて雲雀は頭を掻いて嘆息した。
「……んー、東条さんいい人だし、あんまり気は進まないけど一応」
何の話かという疑念と、もしかしたら何か妙案がという期待。
どう反応していいのか分かりかねて無言で先を促せば、雲雀は指を一つ立てた。
「私は所詮、結局のところ一介の女優に過ぎないから。撮影現場では単なる労働者でしかなくて、雇用をする権利だとか立場ではないんだけども――」
そして雲雀は、その立てた指を二年B組の教室へと向けた。
「実はこの学年に一人、雇用する側の人がいるんだよね」
指を追って教室を見た青葉は、心当たりがなくて首を傾げる。
どうやら彼女にとってはあまり好ましくない相手の様子で、先ほどまで和やかかつ穏やかだった雲雀の表情が僅かに曇っていた。
「いかにも自分に自信がありますって感じが私と合わなくて、紹介はしてあげられないんだけど。名前くらいなら教えてあげられる……って言っても、知ってる人は知ってるけど」
あまり顔の広くない青葉は全く知らなかったその人の名を、雲雀は告げた。
「あの有名IT会社『西浦サイバーセキュリティ』の社長令嬢でね。本人もホテル会社の代表取締役をやってる女社長――西ヶ浦琥珀」




