第39話 辺境の村が10倍規模の超巨大都市に成長!? 骨に丸投げした自動工場と超古代魔改造娼館で世界中の富を独占します
「……いや、もうこれ絶対に『村』じゃないよね? マスター」
魔改造された一軒家《隠れ家》の、空間拡張されたリビング。
ホムンクルスの肉体を得て銀髪の絶世の美女となったフェイが、手鏡型の索敵魔導具の映像を眺めながら、引きつった笑みを浮かべていた。
その横では、金髪ギャル風の美少女シルフィがソファの上で「あはは! 人間も魔族も、みーんな骨たちに頭を下げて歩いてるよー!」と、豊満な胸を揺らして大爆笑している。
俺たちの現在の本拠地――かつて焼き払われた静かな『辺境の村』。
他力本願の経済政策として、周囲の主要都市へ繋ぐ大規模な道路工事をロッドとセバスに完全丸投げ《・・・・・》した結果、この地は恐ろしい勢いで隆盛を極めていた。
中央にそびえ立つのは、大国の王都の城を遥かに凌駕する漆黒の極大の城。
だが、この城に王なんて高尚な生き物は住んでいない。俺自身は城下街の小さな一軒家に引きこもっている。では、この巨大な城は何なのかといえば――その正体は、ありとあらゆる物資を無限に生み出す【特大自動生産工場】だった。
「リッチ、今日の生産ラインの稼働状況はどうだ?」
俺が高級クッションに寝そべったまま念話を飛ばすと、何億年も生きた伝説の化け物であるエンシェントリッチが、脳内で『御意のままに、我が絶対の神、冥界神様。本日も1ミリの遅延もなく稼働中でございます』と、狂喜の涙(骨だけど)を流して平伏した。
城の内部は、超古代文明の魔導科学と、三大欲求ゼロの不死者軍による、二十四時間年中無休、不眠不休の超ブラック生産ラインが敷かれていた。
広大な魔導温室で爆速で実る小麦や米、新鮮な野菜、肉、超古代の秘伝調味料、日用品、家具に至るまで、仕入れ値ゼロの最高級品が文字通り無限に生産されている。もちろん、情報漏洩(コンプラ違反)を防ぐため、工場内は不死者以外は一歩も『侵入禁止』だ。
この完璧な自動化により、我が社の直営店『冥界食堂』は、元・聖女のエルナによる神聖ウェイトレス効果もあって相変わらずの大行列。さらに、城の工場で生産された最高級の素材を城下街の他の店にも相場より安く卸しているため、街全体の市場はかつてないほど充実し、景気の良さは爆発寸前だった。
そして――何より俺が最も予算《ニート資金》を投じた、あの一等地にある『最高級娼館』は、もはや天国そのものの領域へと達していた。
「あぁ……今日も最高の朝帰りだわ。あの部屋の魔導温泉、マジで疲れが1一秒で吹き飛ぶな」
「マスター、本当にあそこの魔改造だけは気合の入り方が違ったよねぇ」
フェイが呆れたように笑う。
娼館の設備は、部屋の温度管理からベッドの最高級シルク、疲労回復の温泉水にいたるまで、超古代のチート技術で天国級に魔改造されていた。
おかげで、一晩で家が建つほどの信じられない超高額な料金設定であるにもかかわらず、世界中の富豪や貴族たちからの予約が数ヶ月先まで後を絶たない。
そして、そこで働く娼婦たちやスタッフの生活環境、専用の高級寮までもが完璧に魔改造されているため、彼女たちも「この天国のような職場を絶対に手放したくない!」と、かつてないほどの最高レベルのモチベーションで接客(ホワイト労働)に励んでいた。
その噂が世界中に広まった結果、
「あの伝説の娼館で働かせてください!」と、他国からの求人の応募が殺到。
こんな夢のような環境に憧れない人間などいるはずがなかった。それどころか、人間以外のエルフやドワーフといった亜人、さらには人との共生を望む高い知性を持った魔物までもが、この極上の楽園に憧れて次々と移住を希望し、連日のように押し寄せていたのだ。
「……マスター、報告。城下街の規模が、先週の【10倍】に広がったよ。もう難民や浮浪者だけじゃなくて、大国の本物の大商人や職人たちが、街を丸ごと引っ越してきてる」
フェイの手鏡の映像には、地平線の彼方まで美しく広がる、活気に満ち溢れた超巨大な近未来都市が映し出されていた。
初めてこの地を訪れた人々は、一歩足を踏み入れた瞬間に、その圧倒的な安全、最高に美味い飯、そして見たこともない娯楽施設の虜になり、全員が「もう自分の国になんか帰りたくない!」と涙を流して定住を決意する。
大国や教会から『神敵』として手配された男の隠れ家だったはずの場所は、いつの間にか世界中の誰もが羨む、世界最大の巨大都市へと大化けしていた。
外の世界では、畏怖と羨望を込めて、この街をこう呼ぶようになっていた。
――『魔女の森王国の王都』、あるいは『不死者の国の王都』、と。
「王都ねぇ……。ま、呼び名なんて、村でも街でも都でも何でも良いよ。大事なのは中身だからな」
俺は魔改造ボア(バイク風)のハンドルをトントンと叩きながら、最高に自堕落な笑みを浮かべて、完全に頓着していなかった。
村と呼ばれようが王国と呼ばれようが、俺が自分で働かず、仕入れ値ゼロの1割ロイヤリティを中抜きし、毎日超古代の飯を食って最高級の娼館へ安全運転で直行できるなら、外のゴミ虫どもが勝手にどんな大層な名前をつけようが知ったこっちゃないのだ。
「よし! 今日も街は勝手に大儲け、経営と労働は全て骨と難民たちに丸投げ完了! ――それじゃあ俺は、今日も元気に最高級娼館の昼のシフト(客として遊ぶ時間)に行ってくるわ! お前たち、24時間年中無休でしっかり働けよ!」
俺は不純すぎる性欲を満たすために、最高の笑顔でボアのアクセルを最大まで吹かして一軒家を飛び出した。
レベル1固定の最弱ニート、アルト。
自分は指一本動かさない他力本願の極みで、世界最高峰の『不死者の楽園(巨大国家)』を完成させ、彼は今日も、小さな家から愛する娼館へと、満面の笑みで通い詰めるのだった。




