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第36話 毎日トラック数台分の金貨が上納! 勘違いして突撃してきたギルドマスターを返り討ちにして利権を完全買収します

「ちょっと待ってよ、マスター! 我が社の玄関が、金貨の山で完全に埋まって中に入れないんだけどっ!?」


 魔改造された一軒家《隠れ家》の、空間拡張されたプライベートルーム。


 お気に入りの最高級娼館しょうかんでの自堕落な朝帰りを終え、バイク風ボアのふかふかシートに揺られて帰還した俺――アルトの元へ、ホムンクルスの肉体を得て銀髪の絶世の美女となったフェイが、呆れ果てた声を響かせた。


 見れば、外見はただのボロい平屋である我が家の前に、超古代文明の工作アンデッドたちが運転する大型魔導トラックが数台、一列に並んで停車していた。


 トラックの荷台からドサドサと無造作に吐き出されているのは、眩いばかりの輝きを放つ【純金貨の巨大な山】。


 前話で、中抜きブラック組織(旧・冒険者ギルド中央)を脱退した各地の支部を、我が社の傘下『新生冒険者ギルド《しんせいぼうけんしゃぎるど》』として再スタートさせた結果――何一つ働いていない俺の懐に、世界中のギルドの総利益の【1じゅっぱー】が、毎日トラック数台分の規模で爆速で転がり込んでくる永久機関が完成してしまったのだ。


「フハハハ! 素晴らしい! これぞ究極の他力本願! これだけ金があれば、娼館の女の子たち全員に毎晩最高級のシャンパンをおごってもお釣りが来るな!」


「マスター、本当に三大欲求に全振りした神様ニートだねぇ。」


「ロッド、セバス!金貨の山は邪魔だから城に保管してくれ、これからは城に保管しておけよ」


「「御意!」」

ロッドとセバスは不死者を使って金貨の山を城に運び出す。


「……あ、そういえばリッチたちから、各地の攻略軍の戦況報告書が届いてるよ」

 フェイが金貨の山を器用に避けて、書類を差し出してくる。


 報告によると、もぬけのからとなった教会の建物を片っ端から粉砕・略奪りゃくだつした『教会攻略軍』は、その役目を完璧に終えて、魔女の拠点の地下へと一斉送還リターンされた。


 一方、神聖帝国しんせいていこくを追い詰めている『国攻略軍』は、帝国の首都(帝都)の目の前に三十万の陣を敷き、約束通り魔王軍まおうぐんの進軍をのんびりと待つニート状態に入っていた。


「帝都の中は、今頃ひっくり返って大混乱らしいよ。精神的支柱の教会は夜逃げされて空っぽだし、冒険者ギルドは既にうちの『新生』に変わっちゃったからさ。帝都の冒険者もギルド職員も全員、さっさと職場(帝都)を捨てて、他国の新生ギルドへ大急ぎで『異動』しちゃったんだって」


「ハッ、当然だな。中抜きしか能のない無能な帝国上層部と運命を共にするより、我が社の1割上納ルールに守られた新生ギルドでホワイト労働する方が、百倍マシに決まってるだろ」


 俺はふかふかのクッションに寝そべりながら冷淡に鼻で笑った。


 残るゴミ組織はあと一つ。世界中の冒険者を搾取し、俺を最上位指名手配《DEAD or LIVE》した、諸悪の根源――冒険者ギルドの本部だけだ。


「よし……それじゃあフェイ、シルフィ、尾羽張おはばり様。我が社の最後の大掃除、ちょっと見学・・に行こうか」


「あはは! マスター、自分で戦うわけじゃないのに見学に行くんだ!」


 金髪ギャル風の美少女シルフィが、俺の肩の上で手のひらサイズになってクスクスと笑う。


 俺はバイク風ボアのアクセルを『ブロロロロンッ!』と吹かし、三十万の『冒険者攻略軍』が包囲する、遥か最果ての領都りょうとへと空間転移でひと飛びした。


 ◇◇


 最果ての領都。そこの中心にそびえ立つ、城塞のような規模を誇る冒険者ギルドの本部。


 その巨大な城壁の頂上に、一人の男が立っていた。


「まさか、これほどの不死軍勢が押し寄せてくるとはな……」


 男の名前は、ギルバート。


 世界中の冒険者の頂点に君臨する『ゼネラルマスター』であり、自身もかつて数々の伝説を残した、最高峰のSランク冒険者だった。


 彼は生まれながらに万物の真実を見通す【神眼しんがんの加護】を持ち、その瞳で、ギルド本部を完全包囲する三十万の漆黒の骸骨騎士たちをじっと凝視していた。


「フッ……三十万の軍勢を正面から全滅させるのは無理だ。だが――」


 ギルバートの瞳が、冒険心をギラギラとたぎらせて鋭く輝く。


「中抜きだの何だのと我がギルドの利権を脅かす死霊術師め。どれほどの大軍だろうが、その軍勢を統べる『ボス』さえ一瞬で討ち取れば、アンデッドの契約はすべて強制解除される! 我が神眼は、すでに最奥にいる貴様の姿を捉えたぞ!」


 彼は、三十万の軍勢の最後方にどっかと構え、豪華絢爛な魔術衣を纏って最高級の魔導杖を輝かせている【圧倒的な強者の気配】を放つ存在を、神眼で完全に見定めた。


 アルトがレベル1の最弱オーラしか放っていないため、ギルバートの神眼は、何億年も生きた伝説の化け物である『エンシェントリッチ』こそが、このミリオンクラスの軍勢を率いる絶対的なボス(死霊術師アルト)だと、完璧に【勘違い】してしまったのだ。


「神の加護の前に、骨くずが平伏せぃッ! ――短距離転移ショート・ジャンプ!」


 バチィィィィィンッ!!!


 ギルバートは躊躇ちゅうちょなく城壁から空間を跳び、三十万の軍勢の頭上を無視して、一瞬で最奥のリッチの眼前に現れた。


 人類最高峰のSランクの武威。神速の抜刀。リッチの脳天を目がけて、光り輝く神聖な大剣が無慈悲に振り下ろされ、リッチが斬られる――まさに、その一瞬の直前だった。


 キィィィィィン――。


 世界から、完全にすべての光と音が消失した。


 リッチの遥か後方、バイク風ボアのシートの上で、俺がただ刀の柄にそっと触れただけ。

 

 主である俺の、そして我が社の最高執行責任者リッチへの明確な殺意を感知した神殺しの神剣『天之尾羽張アメノオハバリ』の自動迎撃システム(安全運転)が、その神速の極限において作動したのだ。


 閃光が一閃。


「え――」

 それが、世界中のギルドの頂点に君臨した男が遺した、最後の言葉だった。


 何が起きたのかすら理解できず、神眼で剣の軌跡を捉えることすら許されなかったギルバートの首が、綺麗な放物線を描いて宙を舞った。


 ドサリ、と崩れ落ちる、最高位Sランクの頭部のない肉体。


「キャハハ! おじちゃん、また一瞬で首チョンパしちゃった!」


 宙を舞ったゼネラルマスターの首と胴体は、地面に落ちるよりも早く、シルフィが展開した闇属性魔法の中へと容赦なく吸い込まれ、完全に消滅した。格付け完了、100%完璧な証拠隠滅だ。


「……ハッ!? 今、我を救ってくださったのは……冥界神様……っ!? おお、なんと大いなる慈悲、なんと底知れぬ圧倒的な神威……っ!」


 リッチがガタガタと狂喜の涙(骨だけど)を流しながら、俺の方を振り返って五体投地した。


「いや、俺はただ安全運転をお願いしただけだけどな」

 俺はバイク風ボアのハンドルをトントンと叩きながら、冷淡に鼻で笑った。


 ちなみに、これまで天之尾羽張様によって首を撥ねられ、シルフィの闇に吸い込まれたクソ勇者やカイン、アレン、そして今回のゼネラルマスターたちの遺体は――すべて、リッチの超古代魔法によって、主の命令に絶対服従する『高ランクアンデッド』へと魔改造され、我が社の地下工場に強制収容されていた。


 食事も、睡眠も、文句の三大欲求も一切言わず、二十四時間年中無休で働き続ける、無限に増えていく最高級の労働力(社畜)だ。


「よし、リッチ。――トップのゴミ虫は片付いた。ギルド本部に眠るすべての財産とマジックバッグを根こそぎ略奪して、我が社の利益にしろ」


『御意のままにぃぃぃッッ!!!』


 主を失って完全に戦意喪失した冒険者ギルドの本部は、わずか数分で三十万の不死者軍によって跡形もなく完全解体・蹂躙じゅうりんされ、世界中から中抜きしていた莫大な富のすべてが、我が社の資産へと反転強奪されたのだった。


「フハハハ! 完璧だな! これで俺を指名手配したゴミ組織はすべて全滅だ!」


 俺は魔改造一軒家へと空間転移で戻り、毎日トラック数台分届く金貨の山を眺めながら、最高に自堕落な優越感に浸っていた。


 レベル1固定の最弱ニート、アルト。


 自分は指一本動かさない他力本願の極みで、世界最高のギルドマスターをワンパンざまぁし、世界中の利権を完全買収。


 面倒な戦後処理は全て骨に丸投げし、溢れんばかりの神話級の軍資金を手に入れた彼は、今夜も最高の笑顔で、お気に入りの最高級娼館へとボアのアクセルを最大まで吹かすのだった。


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