第34話 不眠不休の90万軍勢でギルドと教会を物理撃破! 恐怖した神々に加護を没収された聖騎士を全自動で蹂躙します
「進め、進めぇッ! 今こそ傲慢なる人間どもに魔王軍の恐怖を刻んでやるのだ!」
魔王軍の全軍による神聖帝国への侵攻は、極めて順調だった。人類最強の剣聖を失い、さらにアルトの宣戦布告によって大混乱に陥っていた帝国の防衛線はあまりにも脆弱だった。魔王軍は行く先々の都市や街を次々と占領し、その勢いをさらに加速させていた。
だが――その魔王軍の進軍速度すら生温いと思わせるほどの『最凶の濁流』が、三つの方向へと世界を切り裂きながら突き進んでいた。
リッチの百万の軍勢から均等に分けられた、それぞれ【三十万】のアルトの不死者軍。
神聖帝国の首都を目指して一直線に突き進む『国攻略軍』。
神聖教会の本部がある大聖都を目掛けて爆進する『教会攻略軍』。
そして、世界中の利権を中抜きしていた冒険者ギルドの本部がある辺境の都市を目指す『冒険者攻略軍』。
彼らは三大欲求ゼロの完璧な社畜兵器。食事も、睡眠も、休憩も必要としない。
「二十四時間年中無休、不眠不休」で行軍する彼らの進軍速度は、生物の常識を遥かに超越して恐ろしく速かった。
「マスター、うちの攻略軍、ただ首都や本部に直行してるわけじゃないよ。途中の周辺都市すべてに寄り道してる」
魔改造された一軒家の、空間拡張された最高級ベッドの上。
お気に入りの高級娼館からの朝帰りで、心地よい疲労感(性活の証)に包まれていた俺――アルトの元へ、フェイが楽しそうに手鏡型の索敵魔導具を差し出してきた。肩の上のシルフィも「あはは! 骨のおじちゃんたち、すっごくお行儀よくお掃除してるよー!」と羽をパタパタさせている。
「寄り道? 何のためにだ。面倒な残業(無駄な戦闘)はするなとリッチに言ったはずだが」
「残業じゃないよ、マスター。道中にあるすべての『教会の支部』と『冒険者ギルドの支部』を完璧に潰すためさ」
索敵映像に映し出されたのは、途中の街に到達した我が社の三十万の不死者軍だった。
彼らの行動理念は、恐ろしいほど徹底されていた。
街の一般市民に対しては、攻撃されなければ一切手を触れない。だが、利権にすがる冒険者、教会の騎士、衛兵や領地の騎士が1ミリでも抵抗の素振りを見せれば、次の瞬間には黒騎士の大剣によって肉片へと変えられ、瞬時に壊滅させられる。
抵抗を試みた支部の街では、頑丈な鉄の門を力ずくで木端微塵に破壊。中に怒涛の如く押し入り、そこに居合わせたギルド職員や教会の関係者を一人残らず抹殺し、建屋を物理的に完全破壊。そして、金庫に眠るすべての資産や魔石を、我が社の軍資金(ニート資金)として根こそぎ略奪していく。
逆に、圧倒的な百万の威圧感に腰を抜かし、一切抵抗しなかった賢い街では――。
不死者軍は門すら壊さず、まるで一流企業の警備員のようにキビキビとした統率された美しい動作で街を進み、一般人には目もくれず、ピンポイントで冒険者ギルドと教会のみを制圧、破壊していった。
「フハハハ! 素晴らしい! 中抜きブラック組織だけを狙い撃ちにする完璧な嫌がらせ(強制執行)だな!」
俺はふかふかのベッドの上でゴロゴロしながら、他力本願で世界中のギルドの利権が崩壊していく快感に酔いしれていた。
◇◇
「神敵公布を直ちに取り下げろッ! あのアルトという男には絶対に抵抗してはならん! これは神々からの絶対の命令だッ!」
その頃、神聖教会の本部では、最高枢機卿たちが血反吐を吐くような悲鳴を上げて、世界中の支部へ大急ぎで緊急通達を飛ばしていた。
しかし、不眠不休で爆進する我が社の不死者軍の進軍速度に対し、人間の原始的な通信魔導書や伝書鳩による情報伝達はあまりにも遅すぎた。
おまけに、長年「自分たちは絶対正義の教会の戦士だ」と洗脳されていた現場の末端騎士たちにとって、この通達内容はあまりにも理解不能で、内容の理解も半分以下だったのだ。
「馬鹿なことを! 迫りくるは忌み嫌われた死霊術師の軍勢だぞ! 神敵に頭を下げろという教会の通達など、何かの間違い、あるいは魔王軍の精神魔法に決まっている!」
「我ら神聖騎士団の誇りに懸けて、異形どもを聖なる光で焼き尽くせッ!」
通達を無視し、大聖都へ迫る我が社の『教会攻略軍』の前に立ち塞がり、神聖魔法を練り上げる教会の聖騎士たちが後を絶たなかった。もちろん、彼らは練り上げた魔法を放つ前に、三十万の黒騎士たちに生きたまま踏み潰されていくのだが。
――その愚行を、神界の水晶玉から見ていた神々は、完全に発狂していた。
「あの無能な這い虫どもがぁぁぁぁぁッッ!!! 何で攻撃するなと言っているのに正面から突撃していくのよぉぉぉ!」
「天之尾羽張の機嫌を損ねたら、今度こそ我々神々が全員首を撥ねられると言っているだろうがっ!」
業を煮やした神々は、もはや通常の神託の手順を踏んでいる余裕はなかった。本来、神託を受けるには厳しい修行や高い魔力の素養が必要なのだが、背に腹は代えられない。神々は神界の魔力を限界まで絞り出し、下界の教会に所属するすべての者の脳内へ、強引に【至高神託】を叩き込んだ。
『――聞けぇ! アルトの不死者軍には絶対に手出し無用! 命が惜しければ、攻撃されないように今すぐ武器を捨てて全力で逃げなさい!!』
神々がパニックのあまり「とにかく逃げろ」と情けなく叫ぶ、前代未聞の神託。
だが、狂信的な一部の聖騎士たちは、その強引すぎる神託すら、まともに理解できなかった。
「おぉ……頭の中に神々の大いなる試練の声が響く……! 『悪魔の軍勢に立ち向かい、命を賭して戦え』と、神々が我らを鼓舞しておられるのだッ! 死霊術師アルトよ、神の裁きを受けよッ!」
「あ、あの致命的なまでの大馬鹿野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
神界の宮殿で、神々が一斉に頭骨を抱えて絶叫した。
もうこれ以上、あの無能どもの巻き添えを食うわけにはいかない。神々は恐怖のあまり、やむを得ず、さらなる強制措置を執行した。
「もういい! お前たちのようなゴミ虫に与える加護など、これっぽっちもないわぁぁぁッ!」
パキィィィィィン――!!!
世界中の大気から、すべての神聖な光の粒子が完全に消失した。
神々の強制剥奪により、教会関係者、聖騎士、神官のすべてから【神の加護】が1ミリの例外もなく完全に消滅したのだ。
その瞬間、アルトの軍勢に攻撃を仕掛けようとしていた聖騎士たちの大剣から、まばゆい聖なる光がふっと掻き消えた。
「な……? 神聖魔法が、発動しない……? 我が、神への祈りが通じないだと……っ!?」
「回復魔法も、アンデッドの封印魔法も……聖なる力が、何一つ使えない……っ!?」
加護を失い、ただの貧弱な一般人へと成り下がった教会の上層部と騎士たちは、完全に武器を失ってその場にへたり込んだ。
死霊術師の天敵であるはずの聖なる力が、神々の「アルトに逆らうな」という恐怖の自己保身によって、世界から完全に消滅させられたのだ。
「フハハハハ! ウケる! 神様たち、俺の刀(尾羽張様)が怖すぎて、自分たちの信者を全員無能にさせてやがる!」
魔改造一軒家のベッドの上で、俺はフェイと一緒にそのマヌケすぎる神界の対応を見て、お腹がよじれるほど大爆笑していた。
レベル1固定の最弱ニート、アルト。
自分は一歩も部屋から出ず、ただ娼館の次のシフトの女の子たちの顔を思い浮かべているだけ。
なのに、他力本願の極みで出撃させた三十万ずつの軍勢は、不眠不休で世界中のギルドと教会を合法(物理)的に更地へと変え、世界の信仰の根幹すらも一瞬で崩壊させていくのだった。




