表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/41

第28話 【朗報】人手不足なので難民を全員一括採用! 元聖女を看板娘にして村を巨大都市へ急成長させます

「お、おい……マスター。本当に、これ全部うちの敷地エリアなの……?」


 移転してきたばかりの最高級娼館しょうかんでの、自堕落極まりない昼のシフト(客として女の子たちと至福の時間を過ごす労働)を終え、魔改造された小さな一軒家シェルターの前に戻ってきた俺――アルト。


 バイク風に魔改造されたボアのシートにどっかと跨がり、ふにふにとお尻の肉を馴染ませていると、ホムンクルスの肉体を得て銀髪の絶世の美女となったフェイが、隣で大きな目を丸くして街の景色を見渡していた。


 現在の俺たちの本拠地――魔の森の奥深くにある、かつての静かな『辺境の村』。


 何億年も生きた伝説の化け物・エンシェントリッチと百万の超古代アンデッド軍団が、俺の「拠点を作れ」という命令を神格化して作り上げたのは、天を衝くほどの漆黒の巨城と、それを囲む広大な『城下街じょうかがい』だった。


 だが、問題はここからだった。


「マスターの言う通り、クランメンバーと定食屋のスラムの子供たち、それに娼館の女の子たちだけじゃ、この巨大な街の『機能』が全然追いつかないよ。見てよあそこ。お店の買い出しも、道路の掃除も、建物のメンテナンスも……全部、スケルトンたちがやってるじゃん」


 フェイが呆れたように指さした先では、リッチ配下の漆黒の黒騎士デスナイトや骨の兵士たちが、二十四時間年中無休、不眠不休の超ブラック体制で、不夜の街の至る所でせっせと働いていた。


 街のセキュリティやインフラ維持を他力本願で自動化するのは、俺のニート精神にとって大正解だ。だが、商業としての『経営』を考えた時、これでは致命的な欠陥があった。


「あー……。いくらリッチたちの技術が凄くても、骨がカウンターに立ってたら、客が恐怖で逃げ出すからな。定食屋の給仕も、娼館の接客も、やっぱり生身の『人間の従業員』が大量にいないと、ビジネスとして成り立たないか」


 俺がレベル1の貧弱な頭でうーんと悩んでいると、影の中から姿を消していた(インビジブル)ロッドとセバスの念話が、頭の中に響いた。


『フフフ、アルト様。ご安心ください。我ら優秀な骸骨執事コンビが、そのような初歩的な経営リスクを、見過ごすはずがないでしょう』


「あん? 何か裏で悪巧みでもしてたのか、ロッド」


『悪巧みとは人聞きが悪い。……マスターが娼館で大人の階段を上り続けている間、我々は、あの街のスラム街から【比較的真面目で、働く意欲のある浮浪者】を、何百人もこの村へと極秘に移住させておいたのです』


「……お前ら、本当に最高の人事部(骨)だな」


 流石は生前、辺境伯時代の俺を支えてくれた内政チートコンビだ。彼らはスラムで行き倒れ寸前だった浮浪者たちをスカウトし、超古代の美味い飯と清潔な住居(社宅)を与え、完璧な就労トレーニングを施して、いつでも我が社の『新入社員(労働力)』として実戦投入できる準備を完了していたのだ。


 さらに、セバスが愉しげに言葉を続ける。


『それに、アルト様。労働力は向こうから勝手に、一列に並んでやってきている状況ですよ。ほら、あちらをご覧ください』


 セバスが指し示した城門の方角。


 そこには、あのクソ勇者の自分勝手な暴挙によって、大通りを破壊され、家と仕事場を同時に失った、あの街の『大量の難民なんみん』たちが押し寄せていた。彼らは、更地にポツンと残されていた『辺境の村で営業再開します』という立て札だけを命綱にして、魔の森の危険な獣道を必死の思いで越えてきたのだ。


「な、何なんだ……この街は……っ!?」


「ただの寂れた辺境の村だと思って来てみれば……王都よりも巨大な、黒いお城が建っているぞ……っ!」


 押し寄せた難民たちは、目の前にそびえ立つ神話級の極大の城と、眩いばかりに整備された近未来的な城下街の光景に、開いた口が塞がらずにガタガタと震えていた。


 自分たちは最果ての僻地に捨てられたのだと絶望していたのに、そこにあったのは、この世のどこよりも安全で、豊かな『楽園』だったのだから。


「皆さん、遠いところをよく頑張って歩いてこられましたね。もう大丈夫ですよ。ここは、とても温かくて、安全な場所ですから」


 城門の前で、難民たちを聖母のような優しい笑顔で出迎えたのは、エプロンドレスを身に纏った元・聖女のエルナだった。


 世界最強の勇者に陵辱され、教会に使い捨てられた彼女だからこそ、家を失った人々の痛みが誰よりも分かる。彼女がその場に跪き、一人一人の手を優しく握りしめていく。


「え……っ、あ、貴女様は、行方不明になっていた神聖教会の聖女、エルナ様……っ!?」

「女神様だ……! 本物の聖女様が、私たちのためにご飯を配ってくれているぞ……っ!」


 難民たちは涙を流してエルナの前に平伏し、口々に感謝の祈りを捧げた。


 教会というブラック組織を脱退し、我が社の『神聖ウェイトレス兼経理』として第二の人生キャリアをスタートさせた彼女のブランド力は、ここでも大爆発だった。


「よしよし、エルナが難民たちの心を完全に掌握したな。……フェイ、セバス。あの難民たちも全員、我が社の労働力として一括採用だ。定食屋の拡大、娼館の規模拡張、城下街の商店の運営……やりたい仕事を与えて、不眠不休とは言わないが、きっちりシフトを組んで馬車馬のように働かせろ」


「「はあ、……本当にブレないブラック社長ですな、我がマスター」」


 さらに、この噂はリッチが他国へと展開している極秘の『素材密輸ビジネス』のルートを通じ、瞬く間に世界中へと拡散していった。


 教会の不条理な免罪符や、悪徳貴族の重税に苦しんでいた他国の平民、行き場を失った有能な職人たちが、富と安全を求めて、辺境の村へとあとを絶たずになだれ込んでくる。


 結果として――。


 焼き払われたただの廃墟だったはずの「辺境の村」は、わずか数日のうちに、周辺の大国の【領都りょうと】をも遥かに凌駕する、未曾有の熱気と大混雑に包まれた『巨大交易都市』へと、大化けすることになったのだ。


 ◇◇


「フハハハ! 完璧だ! 勝手に人が増えて、勝手に経済が回って、利益は100%我が社のモノ!」


 数日後。


 俺は城下街の一等地に配置された、お気に入りの『小さな一軒家』のふかふかベッドの上で、ザクザクと運び込まれてくる天文学的な金貨の山を眺めて、最高に邪悪な高笑いを響かせていた。

 

 エンシェントリッチが気を利かせて、城の内部に「冥界神のための広大で豪華な王座の間」を用意してくれたらしいが、俺はそんな場所に住む気は1ミリもない。


 広い城の移動なんてただの労働(筋肉痛)だし、掃除も管理も面倒くさい。人間、自堕落に寝起きするなら、この『畳一畳分の魔改造シェルター』があれば十分なのだ。


「よし! 今日も街は大繁盛、経営と労働は全て骨と難民たちに丸投げ完了! ――それじゃあ俺は、一等地に移転してきたばかりの最高級娼館へ、夜のシフト(客として遊ぶ時間)に行ってくるわ!」


 俺は魔改造ボアのハンドルを握り締め、不純すぎる性欲を満たすためにアクセルを最大まで吹かして隠れ家を飛び出した。


 国家から指名手配され、世界中の教会から『神敵しんてき』として狙われているレベル1固定の最弱ニート、アルト。


 自分は指一本動かさない他力本願の極みで、大国並みの不死帝国と極上の城下街を完成させ、彼は今日も、小さな家からお気に入りの娼館へと、満面の笑みで通い詰めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ