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第21話 裏で襲撃してきたゴミ権力者を即消去! 傷だらけで逃げてきた聖女様を保護して偽りのクソ勇者を潰します

「……ふぁ。フェイ、お茶のお代わり。あと、最高級のふかふかクッションも追加で」


「はいはい、マスター。本当に至れり尽くせりだね。お望みのもの、すぐ持ってくるよ」


 魔改造された一軒家(引きこもりシェルター)の、空間拡張された一室。超古代文明の最高級寝具に身を沈めながら、俺――アルトは自堕落な朝を迎えていた。


 自分で働くのは絶対に嫌。だが、他力本願で構築した『冥界食堂』と、丸投げしたクラン『鉄の牙』の経営は、今日も勝手に莫大な富を俺の懐に運び込み続けている。


 そんな中、俺の肩の上で手のひらサイズになって浮いているシルフィが、クスクスと小悪魔的な笑い声を響かせた。


「ねえねえマスター、昨日の夜もすっごく面白いことがあったんだよ?」


「ん? なんだ、またゴミ虫が湧いたのか?」


「そうそう! 冒険者ギルドの幹部に唆されたっていうDQN冒険者たちがさ、夜中にこっそり『冥界食堂』に忍び込んで、油を撒いて放火しようとしてたの。本当にやることが短絡的でウケるよね!」


 俺は紅茶を啜りながら、冷淡に鼻で笑った。


 放火、ね。二度も組織に裏切られて過労死(?)した俺が、自分の拠点や縄張りの防衛セキュリティを怠るはずがないだろうに。


「それで、その放火魔たちはどうなったんだ?」


「私の部下のダークフェアリーたちが影からこっそり風の刃で四肢をバラバラにして、そのあと闇の魔力証拠隠蔽しちゃった。今頃、この世界のどこを探しても爪の先一つ残ってない『消息不明』だよ!」


「完璧な仕事だな。これで我が社の隠蔽コンプラも安心だ」


 違法行為が全く通じないのは、それだけではない。


 定食屋の爆発的な利益に嫉妬した、あの孤児院を潰した『地上げ屋(悪徳商人)』もまた、夜裏のルートを使って動き出していた。彼はこの街の裏社会を牛耳る『闇ギルド』に莫大な報酬を支払い、夜間の定食屋を徹底的に破壊し、従業員のスラムの子供たちを皆殺しにするよう依頼したのだ。


 しかし――。


「マスター、その闇ギルドの精鋭とかいう暗殺者たち、店に一歩足を踏み入れた瞬間に、リッチの黒騎士デスナイトたちに首をへし折られて、そのまま冥界の闇に吸い込まれて消えちゃった」


 フェイが楽しそうに報告を続ける。


「闇ギルドが、本物の『冥界の闇』に勝てるわけないのにねぇ。彼らも全員、一瞬で消息不明。地上げ屋のオッサン、今頃『なんで誰も帰ってこないんだ!?』って部屋でガタガタ震えて途方に暮れてるよ」


「哀れなもんだな。さらに商業ギルドのお偉いさんからも、色々と営業停止処分だの税金の吊り上げだの、圧倒的な権力を使った圧力がかかってるらしいが……」


「あはは! うちの店に手を出してただで済むとおもっているのかしら?おもしろーい」


 そうして数日後。ついに業を煮やした俺は、ボア(バイク風)の上からリッチに一言だけ念話を送った。


「あの地上げ屋と闇ギルド達は、俺の快適な睡眠の邪魔だから、関係者は消しといて」


 その日の夜、地上げ屋の悪徳商人は、自宅の厳重なセキュリティで守られた寝室から、跡形もなく『消息不明』となった。


 そして闇ギルドと商業ギルドお偉さんもその存在を消されていた。


 バックを失った商業ギルドの上層部は、今や完全にパニックに陥り、打つ手なしで途方に暮れている。


  ◇◇


「……ちっ、商業も裏社会も全滅かよ! なら、力ずくで毟り取るまでだ!」


 次に動き出したのは、冒険者ギルドの上層部だった。あの受付嬢のバックにいる、腐ったギルド幹部どもだ。


 彼らは俺たちが強奪したクラン『鉄の牙』に所属する、低級の人間冒険者たちをギルドの個室に呼び出し、激しい脅迫を始めた。


「お前たち『鉄の牙』は、最近不審な利益を上げているな? 密輸か? それとも犯罪行為か? 正直に吐かなければ、冒険者資格を剥奪し、この街から叩き出すぞ!」


 全盛期のクランなら、この脅しに屈していただろう。


 だが、今の『鉄の牙』の現場には、常にリッチ配下の『黒騎士デスナイト』と、姿を消した(インビジブル)『ダークフェアリー』が同行しているのだ。


「資格剥奪? 別にいいですよ。僕たち、今のオーナー(アルト様)のおかげで、ギルドの依頼なんて受けなくても、影の護衛(黒騎士)と一緒に魔の森の素材を狩るだけで、一生遊んで暮らせるだけの金を貰ってますから」


 低級冒険者は、ギルド幹部の顔を鼻で笑い、同行していた黒騎士が無言の圧力をかけると、あっさりと部屋を出ていってしまった。


 ギルドの権力という最大の武器が、我が社の圧倒的な「資金力」と「物理的暴力(チート護衛)」の前には、1ミリも通じない。組織のゴミどもは、自分たちが完全に無視されている事実に、ただただ震えるしかなかった。


「ふははは! 痛快だな! 冒険者ギルドも商業ギルドも、全員まとめて手も足も出ずに『ざまぁ』されてやがる!」


 俺は魔改造された一軒家のベッドで、ザクザクと運び込まれてくる利益の金貨を数えながら、最高に自堕落な優越感に浸っていた。


  ◇◇

 

 ――だが、そんな完全無欠のニートライフに、突如として『神の悪戯』のような、激しい濁流が流れ込んでくる。


 その日の夕方。


 クランの経営を丸投げしているセバスから、極めて珍しく、緊迫した念話が俺の頭の中に直接飛び込んできた。


『アルト様! 大変です! 今すぐクランハウスの裏口へお越しください!……いえ、これはロッドや私では、判断がつきかねる案件にございます……っ!』


「あん? なんだよセバス、俺はこれから高級娼館の夜のシフト(客として遊ぶ時間)が入って――」


『そんな場合ではございません!……“聖女”が、逃げてきたのです!』


「……は?」


 聖女。この異世界において、教会の頂点に君臨し、神の奇跡を操るとされる、最高位の清らかな女性。そして、死霊術師にとって致命的な天敵。


 俺は面倒臭さに顔を顰めながらも、セバスのただならぬ気配を察し、魔改造ボアのアクセルを吹かしてクランハウスへと急行した。


 裏口の薄暗い路地。


 そこに横たわっていたのは――ボロボロに引き裂かれた、かつては純白だったはずの聖衣を纏った、一人の美しい少女だった。


 だが、その姿はあまりにも凄惨だった。


 全身は殴られたような青あざと、引きずられたような生々しい擦り傷で覆われている。何より、その虚ろに開かれた瞳には、この世のすべての絶望と憎悪を煮詰めたような、昏い光が宿っていた。


「……う、あ……たすけて……いや、殺して……っ、あの化け物、勇者・・から……私を、遠くに……っ!」


 少女はガタガタと震えながら、血の混じった涙を流して、俺の靴にしがみついてきた。


「マスター、この子……」


 フェイがその凄惨な様子に、かつて自分が勇者にハメられて足を切られた過去を重ね合わせたのか、骨の身体(ガワは人間だが)を激しく怒りで震わせた。


「教会の最高神の託宣によって、半ば強制的に『勇者パーティ』に入れられた聖女様だよ、マスター。……だけど、あのクソ勇者は、大衆の前では聖人君子を気取りながら、裏では彼女をただの性処理の道具として扱い、毎夜のように『強姦』し、暴力を振るい続けていたんだ……っ! 彼女、命がけでその地獄から逃げ出してきたんだよ……!」


 静まり返る裏路地。


 聖女の、血を吐くような嗚咽だけが響き渡る。


 信頼していた組織(教会)に強制的に差し出され、世界の英雄(勇者)に尊厳を徹底的に踏みにじられ、心身をボロボロにされて、この街へ逃げ延びてきた傷だらけの少女。


 その境遇は――辺境伯として領民のために全てを捧げた結果、信頼していた団長に裏切られて断頭台へ送られた、俺の「二度目の死」と、あまりにも、あまりにも似すぎていた。


「……勇者、か」


 俺の胸の奥で、これまで感じたことのない、どす黒く、冷徹な『怒り(ヘイト)』の炎が、静かに、しかし爆発的に燃え上がった。


 フェイを嵌めて足を切り、村を焼き払い、聖女を陵辱して使い捨てる、この世界の「偽りの英雄ゴミクズ」。


 腰の天之尾羽張様が、鞘の中でキィィィィンと、これまでで最も激しい『神殺しの狂気』を孕んで鳴り響く。


「よし、セバス。この聖女を今すぐ俺の魔改造一軒家に運べ。超古代の美味い飯を食わせて、最高級のベッドで寝かせろ。我が社の全医療リソース(超古代魔学)を使って、傷を完全に癒してやるんだ」


「……マスター。あの勇者と教会を、敵に回すことになるよ?」


 フェイがじっと俺の顔を見つめる。


 俺はニヤリと、これまでにないほど凶悪で、絶対的な支配者としての笑みを浮かべた。


「敵に回す? 違うな、フェイ。向こうが勝手に、俺の快適なニートライフと、我が社の『新入社員(聖女)』の尊厳を脅かすゴミ虫になったんだ。……リッチに伝えろ。百万の軍勢を、いつでもあの勇者の国へ進軍できるよう、爪を研いでおけとな。――偽りの英雄どもを、全員まとめて地獄の底へ『ざまぁ』してやる時間が来たようだ」


 レベル1の最弱ニート、アルト。


 傷だらけの聖女を保護した彼の決断は、この街の腐った権力闘争を遥かに超えて、世界を救ったはずの「勇者パーティ」、そして「教会」そのものを、百万の不死の軍勢を以て完全に文字通り圧殺・蹂躙する、神話級の大戦争への引き金となるのだった。

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