第20話 孤児院を捨ててスラムの子供を無制限雇用! 勘違い貴族や悪徳ギルドを黒騎士で返り討ちにし全権力を爆破します
「お、おい……嘘だろ。あそこにいるの、スラムの汚いガキどもじゃないか?」
「なんで……なんであんな綺麗な服を着て、美味そうな肉を運んでるんだよ……っ!」
連日連夜、街の大通りを埋め尽くす大行列が続く定食屋『冥界食堂』の遥か後方。
ボロボロの衣服を纏い、空腹で腹を激しく鳴らす少年たちが、愕然としながら店内の様子を遠目から覗き込んでいた。
彼らは数日前、俺を地上げ屋の仲間だと勝手に決めつけ、真っ向から大声で罵倒してきた「あの孤児院」の子供たちだ。
あの一件の後、俺が即座に交渉を打ち切って立ち去ったため、孤児院は地上げ屋の本隊によって予定通り跡形もなく叩き潰された。優しかった女主人のシスターは莫大な借金のカタとして高級娼館へと売り飛ばされ、残された生意気な孤児たちは住処を失い、一瞬で路頭に迷う惨めな浮浪児へと成り下がっていた。
他のWeb小説であれば、どれほど生意気で身の程知らずなガキであっても、主人公がなんだかんだと理由をつけて孤児院の子供たちに手を差し伸べ、救済するようなお決まりの展開になるのだろう。
だが、俺はそんな胸糞悪い善人ごっこなど絶対にしない。労働の嫌いなニートにとって、反抗期のガキの教育やケアなんて面倒なタスクは害悪でしかないのだ。
そんな彼らが、日頃から「汚いスラムの泥棒猫」と見下し、暴言を吐いてはいじめていたスラム出身の子供たちが、我が社の完璧な福利厚生(超古代の極上飯と快適な住居)によって見違えるほど綺麗な服を着て、楽しそうに生き生きと働いている姿を見て、絶望のどん底に叩き落とされていた。
「あ、あの時……あのボアに乗ったお兄ちゃんの話をちゃんと聞いていれば、僕たちが……っ」
「あそこにいるのは僕たちだったのに……」
「そしたらシスターやお姉ちゃん達も連れ去られる事だってなかったんだ……」
「なんであの時、ボアのお兄ちゃんにあんな事を言ったんだよ」
あの時、俺に大人ぶって大反対した生意気な少年達が、血を吐くような強烈な悔しさと後悔で、泥だらけの地面を血が出るほど強く掻きむしる。
すると、店内から色鮮やかな高級布の制服を着た元スラムの子供たちが、ゴミ捨てのために裏口から悠々と出てきた。彼らはボロボロの元孤児院のガキどもに気づくと、暴力を振るうような真似は一切せず、心底哀れむような極上の見下し笑顔を浮かべた。
「あら? あそこにいるの、以前私たちに『スラムの汚いゴミ人間』って石を投げて笑っていた孤児院のお坊ちゃんたちじゃない?」
「やだ、本当だわ! 毎日ドブ水を飲んでるみたいな凄い顔をしてるよ? 可哀想に〜」
「ふふっ、僕たちはアルト様のおかげで、毎日お肉もお魚も食べ放題で、ふかふかのベッドで眠れるのにね! 君たちも並べば? あ、お金が一銅貨もないから無理か〜!」
子供というものは、時に大人以上に残酷だ。過去にその残酷は酷い虐めを受けていた元スラムの子供たちは、手すら汚さず、圧倒的な立場の逆転と幸せの格差を見せつけることで、優越感にどっぷりと浸っていた。
店の裏にも黒騎士がおり、元スラムの子供達の後ろで目を光らせているので、元孤児院の少年たちは、恐怖に怯え、反論の言葉すら出ず、ただ屈辱と空腹でボロボロと涙を流すことしかできない。
だが、面倒なイベントを即座に切り捨てた俺には、今更彼らを救う義理など1ミリもない。すべては因果応報、自業自得だ。
「いらっしゃいませー! 学食形式ですので、トレイを持って一列にお並びくださーい!」
店内では、スラム出身の子供たちが高級ホテルのような完璧な笑顔と清潔感で、爆速の給仕を行っていた。
仕入れ値ゼロの最高級和牛風肉のステーキ定食や、超古代魔導の濃厚スープが驚愕の激安価格で食えるのだ。今日も店は頭がおかしくなるほどの大繁盛であった。
だが、当然のようにこのゴミ異世界特有の「横入りをしようとするDQN冒険者」が現れる。
「ガハハ! どけどけぇ! 命知らずのガキども、俺様はB級パーティ『紅蓮の牙』様だぞッ!」
全身を重厚な鎧で固めた大柄な冒険者たちが、行儀良く一列に並んでいた客たちを乱暴に肘で押しのけ、列の最前列へと当然のような顔で割り込んでいく。
「おい、そこの腰抜け! 俺様に席を譲れて光栄に思え! 文句があるならその首、胴体から叩き落としてやろうかぁ!?」
先頭に並んでいた気弱そうな町人を胸倉掴んで持ち上げ、大剣の柄をちらつかせながら下劣な笑みを浮かべて脅しつけるDQN冒険者。
普通なら、周りの客は悲鳴を上げて怯え、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す場面だ。
――しかし、整然と並ぶ客たちの反応は、まったく違っていた。
誰一人として恐れおののく者はいない。それどころか、列に並ぶ町人や他の冒険者たちは、まるで「あーあ、可哀想に……何も知らないんだな」とでも言いたげな、冷ややかで同情に満ちた生暖かい視線を一斉にDQNたちへ向けたのだ。
「……あ? なんだその目はよぉ! ぶっ殺されたいのかテメェらッ!?」
周囲の異常な反応に、DQN冒険者は首をかしげて不快そうに顔を歪める。
「おいおい、どいつもこいつも貧気臭ぇ顔しやがって! 噂の激安飯に群がる雑魚どもが、調子に乗ってんじゃねぇぞゴミクズどもがッ!」
訝しみながらも、自分の威圧が効いていないことにイラついたDQNどもは、唾を撒き散らしながら周りの客へ下劣な暴言を吐き捨てた。
自分たちが今、どれほど愚かで致命的な「禁忌」を犯しているのか、その脳みそで理解することすらできないまま――。
「「規則違反。即刻、排除する」」
言い終わるより早く、店の影に潜ませたリッチ配下の『黒騎士』たちが、重厚な漆黒の鎧を激しく鳴らしてDQNの首根っこを力任せに掴み上げた。そのまま、粗大ゴミのように裏路地へ豪快に投げ飛ばす。
「ぎゃあああああっ!? なんだこのバケモノ騎士はっ!?」
出入り禁止(出禁)を言い渡されたDQNどもは、その後も変装したり、夜間に窓から忍び込もうとしたり、あの手この手で極上ステーキを食おうと画策した。だが、シルフィの部下の『ダークフェアリー(インビジブル)』たちに影からすべての行動を看破され、その都度、黒騎士に骨をメキメキとへし折られて外へ叩き出された。一切の不正が通じない無敵の絶対セキュリティ。
さらに、この爆発的な噂を聞きつけた商業ギルドのお偉いさんが、これみよがしに高価な服を着て、行列を無視して大堂々と突入してきた。
「おい、私はこの街の商業ギルドの副会長だぞ! 圧倒的な権力を持つこの私を、こんな汚い一般人と一緒に並ばせる気か! 今すぐ最高の特別席へ案内しろ!」
だが、我が社の規則は絶対だ。黒騎士たちは商業ギルドの権力など鼻で笑い、無言のまま巨大な大剣を副会長の首元へピタリと突きつけた。
「ひ、ひぃっ!? ぼ、暴力か! 商業ギルドを敵に回す気か!?」
「「列を乱す者は例外なく出入り禁止とする。失せろ」」
有無を言わさぬ冷徹な声。副会長は顔を真っ赤にして股間を震わせ、悔しそうに情けない悲鳴を上げながら逃げ帰っていった。
それは傲慢な『貴族の使者』であっても完全に同じだった。
「無礼者め! 私は伯爵家の使者だ! 我が主のために、この料理を今すぐ屋敷へ持ってこい! さもなくば、この店を即座に営業停止にし、その料理人ごと強引に連行して我が家で働かせてやるぞ!」
だが、そんな我が儘で横暴な要求も、黒騎士たちによって「当店はテイクアウト不可、引き抜きは死罪に処す」と、無慈悲に物理で阻まれた。どれほど地位が高かろうが、列に並ばないゴミクズどもは、全員等しく飯にありつけない。この上ないカタルシスだ。
しかし、これほど街のパワーバランスをめちゃくちゃに破壊すれば、当然、既存の「ゴミ上層部」が嫉妬と警戒で蠢き出す。
魔改造された一軒家(引きこもりシェルター)の空間拡張されたふかふかベッドの上で、俺はフェイから差し出された報告書を眺めて、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。
「マスター。私たちが強奪した『鉄の牙』が急激に儲かりだしたのを不審に思って、冒険者ギルドの上層部が本格的な『裏の調査』に乗り出してきたよ。……例の、ギルドでマスターに難癖をつけてきた、あの受付嬢のバック(ギルド幹部)が動いてるみたい」
「へぇ、あの時のゴミどもが、わざわざ自分から釣られてやってくるのか」
さらに、フェイは楽しそうに言葉を続ける。
「それだけじゃないよ。この『冥界食堂』が儲かりすぎて嫉妬した、あの孤児院を潰した『地上げ屋(悪徳商人)』と、さっき出禁にされた『商業ギルド』の上層部が手を組んで、うちの店に大規模な【妨害工作】を仕掛けてくるってさ。役者が揃ってきたね、マスター?」
「フハハハ、素晴らしいじゃないか。わざわざ向こうから『ざまぁ』されに、一列に並んでやってきてくれるなんてな!」
俺はふかふかのベッドの上で、他力本願な復讐計画のパズルが完璧に組み上がる快感に、ゾクゾクと身体を震わせた。
レベル1固定の最弱ニート、アルト。
自分をハメた組織の縮図のような、冒険者ギルド、商業ギルド、そして悪徳商人。この街の腐った権力者どもが、俺の自堕落な性活を邪魔しようと勝手に牙を剥く。
「よし、リッチ、シルフィ。――我が社の利益を脅かすゴミ虫どもを、今から全員まとめて地獄の底へ『ざまぁ』してやろう。いつでも百万の軍勢を動かせるよう、準備しておけ」
不純な欲望から始まった街への進出は、ついにこの街の「すべての権力構造」を巻き込んだ、圧倒的かつ容赦のない大蹂躙劇へと突入していくのだった。




