第19話 仕入れ値ゼロの超古代食材で学食風定食屋を開業! 地上げ屋をぶっ飛ばし、労働を丸投げして爆利を貪ります
「……え? 溢れ出す肉汁と濃密な旨味の最高級和牛風の肉も、新鮮で甘みとみずみずしさが弾ける採れたて野菜も、超古代の秘伝スパイスも……さらに超希少な魔導魚の極上刺身や、濃厚なコクのある伝説の乳製品まで、辺境の村の拠点で全部『無制限』に生産されてるのか!?」
魔改造した一軒家(引きこもりシェルター)のふかふかベッドの上で、俺はエンシェントリッチからの定期報告を聞いて勢いよく飛び起きた。
何億年も生きた伝説のバケモノであるエンシェントリッチと超古代アンデッド軍団は、俺が指示した通り、拠点の自動農地と自動調理システムをフル稼働させ、神話級の極上料理の「原材料」を仕入れ値ゼロで無限に大量生産し続けていたのだ。
(仕入れ値が完全にゼロ……。つまり、これを使って定食屋でも開いたら、売上=100%利益のバケモノ店が作れるんじゃね?)
娼館通いの資金はクランの上がりで十分足りているが、金はいくらあっても困らない。何より「仕入れ値ゼロで周囲を価格破壊する」という、前世のブラック企業への復讐じみたビジネスモデルに、俺の邪悪なニート精神が最高に疼いた。
「フェイ、セバス。今すぐ街の適当な場所に、潰れかけた食事処の物件を買い取ってくれ。人件費のかからない『定食屋』を始めるぞ」
「りょーかい、マスター!」
「御意のままに。爆速で手配いたします」
俺自身は一歩も動かず、有能な配下たちに物件の買収を丸投げした。
開業する定食屋のシステムは、前世の日本の「大学の食堂(学食形式)」だ。客が自分でトレイを持ち、カウンターで料理を受け取って、食べ終わったら自分で食器を下げる。注文を取ったり配膳したりする無駄な労働(人件費)を一切省いた、究極の効率化。
当然、この品性の欠片もない異世界では、列に並ばない奴や、横入りする乱暴な冒険者、列を乱すチンピラなどの「ゴミ客」が現れる。
だが、そんな奴らは、店の影に潜ませたリッチ配下の『黒騎士』たちが裏路地へ引きずり込み、二度と街の土を踏めないレベルで徹底的に叩き出して出入り禁止(出禁)にした。セキュリティも他力本願で完璧だ。
「ただ……マスター。カウンターで料理を盛って渡す『給仕係』だけは、人間の一般人が必要だよ。骨を出すわけにはいかないし、私たちがやったら、せっかくのマスターの引きこもり時間が減っちゃうでしょ?」
フェイの言う通り、俺のニートライフを維持するには、自分の代わりにカウンターに立つ労働力が必要だ。
暇を持て余した俺は、魔改造ボアに跨がり、給仕係になりそうな人間を探して街の片隅にある「孤児院」へと向かった。……だが、そこは最悪な修羅場の真っ最中だった。
「ひひっ、おいおいシスターのババァ! 今日までにこの土地を明け渡すって約束だったろーが!」
「待ってください! ここを追い出されたら、この幼い子供たちは行く当てもなく路頭に迷ってしまうのです……!」
「ハッ! ガキの命なんざ知ったこっちゃねえんだよ! この土地を買い叩いて高級な娼館を建てるんだ! 邪魔するならその汚ねぇ顔を殴り飛ばして、ガキどもと一緒にスラムのドブ川に叩き込んでやるぞッ!」
強面の下品な地上げ屋たちが、ドス黒い下衆なニヤニヤ顔で大声を出し、涙を流す女主人のシスターを力任せに突き飛ばしていた。下品な唾を撒き散らし、怯える子供たちを足蹴にしようとしている。
(……面倒だな。騒音は耳障りだし、さっさと片付けるか)
俺が指を軽く鳴らすと、背後に控えていたフェイが、呆れ顔で一歩前に出た。
「マスター、ここは私がサクッと追い払っておきますね」
フェイは冷ややかな目を地上げ屋たちに向け、身の丈に合わない巨大な地上げ屋の頭目を、軽々と片手で首根っこを掴んで持ち上げた。
「なっ、なんだこの女ぁ!? 離しやが――」
「うるさいよ、ゴミ」
ゴツンッッ!!!
「ぎゃあぁぁぁっ!?」
フェイは一切の加減なく、地上げ屋の顔面を孤児院の石壁へと豪快に叩きつけた。鼻骨が砕ける不快な音が響き、頭目は激痛に顔を歪めて悲鳴を上げる。
「な、なんだてめぇらはッ!? 『鉄の牙』の息がかかった俺たちに手を出す気かッ!?」
残りの地上げ屋どもが怒り狂って刃物を抜こうとした瞬間、フェイが恐ろしいスピードで間合いを詰め、胸元や顔面に強烈な拳と蹴りを叩き込んだ。
「ごぶっ!?」
「ひ、ひぃぃぃっ!?」
ボキボキと骨の折れる音と共に、地上げ屋たちはゴミ袋のように宙を舞い、そのまま大通りの泥水の中へと派手に突っ込んで叩きつけられた。
「痛ぇぇぇ! 鼻が、鼻が折れたぁぁっ!」「覚えてろよ不細工ども! 街で生きていけないようにしてやるからなぁぁっ!」
顔面を血と泥でぐしゃぐしゃにした地上げ屋どもは、情けない悲鳴を上げながら、股間を濡らして脱兎のごとく逃げ出していった。
静寂が戻った庭で、シスターは涙を流して感謝し、俺を院長室へ招き入れた。
紅茶を飲みながら、俺は淡々と契約の話を切り出す。
「地上げ屋の借金は俺が全額肩代わりしてやる。その代わり、子供たちを俺の経営する店で『給仕係』として雇いたい。給料と飯は十分に保証する」
「本当に……本当ですか!? 子供たちの命と生活も保障してくださるなんて……! アルト様は神様のようなお方です……!」
シスターの瞳には救世主を見る熱い光が宿り、震える手で契約書にサインしようとした。
……その刹那、ガチャン! と激しい音を立てて扉が開かれた。
「ふざけるなッ!!」
現れたのは、一人の生意気そうな少年だった。彼は俺を指差し、憎悪に満ちた目で叫ぶ。
「さっき地上げ屋を追い返したのは、ただのパフォーマンスだろ! この人は地上げ屋よりもタチが悪いんだ! 高級な服を着て、僕たちを『便利な道具』として安く買い叩こうとしてるだけなんだよッ! こんな大人の言う通りにするなんて、シスターは間違ってる!」
少年は、俺を「悪徳な搾取者」だと決めつけ、周囲の子供たちもそれに同調して「僕たちを騙すな!」「大人なんて大嫌いだ!」とギャーギャーと騒ぎ始めた。
(……あ、これ、めんどくさい)
前世の社畜時代、理不尽なモンスタークレーマーを相手にした時のあの精神を削られる疲労感が、脳内でフラッシュバックする。
子供の教育、反抗期のケア、感謝されない善意の押し売り……。
そんな生産性のない労働に、俺の貴重なニート時間を割く価値があるか? 否。ゼロだ。
「……分かった。じゃあ、この話は無しだな」
「……え?」
シスターの呆然とする声を聞き流し、俺は即座に契約書をビリビリに破り捨てて立ち上がった。
「フェイ、セバス。この孤児院は却下だ。ガキの教育とか面倒すぎて割に合わない。他を当たれ」
「「……承知いたしました、マスター」」
俺は一顧だにせずボアに跨がり、その場を後にした。
その後、俺たちが立ち去った孤児院に、ぶっ飛ばされた地上げ屋たちが本隊を引き連れて舞い戻り、散々暴れまわったらしいが、そんなことは俺の知ったことではない。自業自得だ。
フェイとセバスは即座にスラム街へ向かい、行き倒れ寸前だった素直なみなしごたちを多数雇用。リッチの拠点で用意させた清潔な住居と、超古代文明の美味い飯を与え、執事ロッドが生前の知識で「徹底的な接客・衛生教育」を叩き込んだ。
そして数日後――学食形式の定食屋『冥界食堂』が、ついにグランドオープンを迎えた。
提供されるのは、仕入れ値ゼロの最高級和牛風肉のステーキ定食や、超古代魔導の濃厚スープ定食。それが、普通の食事処の三分の一以下の「超圧倒的激安価格」で並ぶ。
しかも、スラム出身の子供たちが、ロッドの教育によって高級ホテルのような完璧な接客と清潔感でキビキビと給仕を行うのだ。
「な、なんだこの美味さは……!? これが銀貨3枚なんて有り得ねえ!」
「肉汁が口の中で暴れるぞ! 毎日並んででも食うわ!」
店は大爆発的な人気となり、初日から街の大通りを埋め尽くすほどの超大行列が連日連夜形成された。
並ばないゴミ客や横入りするチンピラは黒騎士に一瞬で裏路地へ引きずり込まれて徹底的に「ざまぁ」され、店内は常に秩序正しく、超高速で客が回転していく。
「フハハハ! 完璧だ! 売上は100%利益、経営と労働は全て骨とスラムの子に丸投げ!」
俺は魔改造された一軒家の空間拡張された部屋で、超古代のふかふかベッドに寝そべりながら、ザクザクと運び込まれてくる金貨の山を眺めて高笑いした。
レベル1の最弱ニート、アルト。
自分は指一本動かさないまま、価格破壊の他力本願ビジネスで街の商業を完全に支配し、さらなる「自堕落な性活」へのカウントダウンを刻むのだった。




