表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/41

第13話 封印(仕事)を押し付けようとした『魔女』をネクロライズ! 24時間不眠不休のワンオペ管理(終身雇用)を命じます

 ドガァァァァァンッッ!!!


 『魔女の森』の南側は、一瞬にして光と闇が狂い咲く、壮絶な戦場へと変貌していた。


 急襲してきたのは、数万もの風の妖精軍。大気を切り裂く無数の風の刃が雨あられと降り注ぐ。


 だが、迎え撃つ我が社の戦力は、それを遥かに凌駕していた。


「突撃ィィィ! 我が主に仇なす羽虫どもを、一匹残らず叩き潰しなさいッ!」


 骸骨顔スケルトンとなった風と闇の王女・シルフィが、漆黒の嵐を纏って先陣を切る。


 その後ろからは、何億年も生きた伝説の化け物・エンシェントリッチが率いる【百万の超古代アンデッド軍団】。重厚な漆黒の鎧を纏った骨の騎士たちが、圧倒的な質量で妖精軍を蹂躙していった。


「よし、落ちた『素材(新入社員)』は片っ端から一括採用だ! ――【死霊創生ネクロ・ライズ】!」


 俺は戦場の遥か後方で、ボアスケルトンの上で右手を掲げ続けた。


 『死霊術師UR』のバグ魔力が自動的に戦場を駆け巡り、倒れた妖精たちが次々と『妖精スケルトン』へと反転して立ち上がる。彼らは即座に元の仲間へと襲いかかり、我が社の戦力は戦うほどに増殖していく。完璧な他力本願無双だ。


 ただ――。


「……くそ、お尻が痛ぇ」


 ボアの骨の背中、ゴツゴツしていて、数時間の激戦に耐える俺の臀部はすでに限界だった。レベル1固定の一般人未満の身体をナメてはいけない。


「おやおや、冥界神様。神体にそのような苦痛を与えるなど、配下としての恥。超古代の魔学技術よ、我が主の座を至高の玉座へと作り替えよ!」


 リッチが杖を振るうと、超古代の工作アンデッドたちがボアの身体に群がった。


 ピキピキと未知の金属が骨格と融合し、なんとボアの背に、どこからどう見ても『バイク風のバックレスト付きふかふかレザーシート』と、方向転換用の『スタイリッシュなアメリカンハンドル』が装着されたのだ。


「おおっ! 快適! これならいくらでもニート移動ができるな!」


 魔改造されたボア(バイク風)に跨り、俺が他力本願の悦びに浸っていると、森の奥の空間が、バリバリと強大な魔力によって引き裂かれた。


「よくも……よくも私の可愛いシルフィを、私の同胞たちを、無残な骨に変えてくれたなァァァッッ!!」


 空間から姿を現したのは、怒り心頭、凄まじい神聖魔力を放つ『妖精女王』。


 そしてその背後には、森の東西北を守護する、残りの三人の妖精王女たちが大軍を引き連れて控えていた。


「我が主に牙を剥く愚王め、身の程を知れ!」

「お母様、今すぐあなたも私たちの仲間(社畜)になりましょう!」


 リッチが放つ超古代の『極大暗黒魔法』と、妖精女王が放つ世界をも穿つ『極大神聖魔法』が、正面から激突した。


 ドォォォォォンッッ!!!


 空間が歪み、大気が沸騰する。互角、いや、何億年も生きてきたリッチの魔力が僅かに女王を押し込み始めた、その瞬間。


 キィィィィィン――。


 俺の腰の天之尾羽張様が、またしても自動迎撃システム(安全運転)を作動させた。


 空間を無視した神速の一閃。青白い雷光が戦場を横切り、


「え――」


 抵抗の余地すらなく、妖精女王の首が綺麗に宙を舞った。


 ドサリと崩れ落ちる女王の肉体。東西北の王女たちが絶叫する間もなく、俺の『死霊術師UR』の魔力が自動で発動し、妖精女王は一瞬にして、禍々しい輝きを放つ『妖精女王スケルトン』へと変貌を遂げた。


「……ハッ!? 私は一体……。あ、頭の中に、マスターへの絶対の忠誠が流れ込んでくる……っ!?」


 骨の顔となった女王が、その場にカチカチと跪く。勝負ありだ。東西北の王女たちも、母親が完全に屈したのを見て、絶望のあまりに武器を落とした。


「そこまでじゃあぁぁぁッ!!」


 その時、空間転移でボロボロの老女が戦場へと飛び込んできた。この森の主――『魔女』である。


 魔女は、完全にアンデッド化して跪く妖精女王の姿を見て、老衰間近の顔をさらに真っ青に引き攣らせた。


「ア、アルト……! なんということをしてくれたんだ! 私はお前を邪神の封印を引き継ぐ『最高の後継者』として、この森に呼んだというのに……っ! 森の守護者である妖精族を全滅(アンデッド化)させるなんて、これじゃ本末転倒じゃないか!」


 焦りまくる魔女は、必死の形相で俺に両手を広げた。


「話を聞いておくれ! 私はもう全面降伏する! この森のすべて、私の魔導知識のすべてを今すぐお前に譲る! だからこれ以上の破壊はやめて、大人しくこの森の王として、邪神の封印を管理する『仕事』を引き継いでくれ……っ!」


 魔女の必死の提案。


 だが、バイク風ボアのシートの上で、俺の脳内にある『社畜(前世)としての危機察知アンテナ』が、ビンビンと最大級の警報を鳴らした。


(……待てよ。魔女のすべてを譲り受けて、この森の王になる? それってつまり、これから毎日、邪神の封印っていうクソ重いタスクを、俺が責任者として『働かされる』ってことじゃねえか!)


 二度も過労死(?)した俺だ。上司(魔女)が耳触りの良い言葉(全財産譲与・王の座)で、面倒なブラック案件(邪神の封印維持)を押し付けようとしている裏の意図を、見抜けないはずがなかった。


(冗談じゃねえ。俺は一生、1ミリも働きたくないんだ。そんな面倒な仕事、誰が引き受けるかよ。じゃあ、どうすればいい?)


 答えは一つしかなかった。


 押し付けられそうな仕事の責任者を、そのまま『24時間年中無休で動く社畜』に変えてしまえばいい。


「尾羽張様。あのババァ、俺にブラック残業を押し付けようとしてます。……一発、お願いします」


『ククク、我が主に過重労働を強いる不届き者か。――消え失せよ』


 カチリ、と俺が刀の柄に手をかけた瞬間。


 魔女が「え?」と間抜けた声を上げるのと同時に、天之尾羽張の神速の刃が、魔女の細い首を容赦なく撥ね飛ばした。


 ポーン、と宙を舞う魔女の頭部。


 どさりと倒れる老衰間近の死体へ、俺は冷酷に右手を突き出した。


「【死霊創生ネクロ・ライズ】。――我が社の終身雇用(ブラック労働)へようこそ、魔女さん」


 ボコボコボコッ!


 魔女の肉体が融解し、立ち上がったのは、全身の骨格に凄まじい魔導回路が刻まれた『魔女スケルトン』だった。


「……あ、ああ……。私、死んじゃった……。っていうか、身体から老衰のガタが消えて、無限の魔力が溢れてくる……。それに、マスターの命令に逆らえない……っ!」


 骨の顔となった魔女が、愕然としながらも、主従のパスによって俺の前にカチカチと跪いた。


「よし、魔女。お前は生前、邪神の封印をずっと守ってたんだよな?」


「は、はい……」


「なら、その仕事、骨になっても『24時間365日、不眠不休』でそのまま継続しろ。俺は一生、指一本動かさずに、完成した城の中で寝て暮らすからな」


「そ、そんなぁぁぁ! 死んで骨になってまで、永遠に邪神のワンオペ管理(ブラック残業)をさせられるなんてぇぇぇッ!!」


 魔女スケルトンが、絶望のあまりに頭骨を抱えて泣き叫んだ(骨だけど)。


「ふはははは! これで邪神の封印の自動化も完了だ!」


 俺はバイク風ボアのハンドルを握り直し、高らかに爆笑した。


 これにて『魔女の森』は、名実ともに、完璧に自動化された俺のニート要塞へと生まれ変わった。

 

 手元には、神殺しの神剣。配下には、何億年も生きたリッチと百万の超古代軍、そしてアンデッド化した妖精女王と数百万の妖精軍。さらに、邪神の封印を永遠にワンオペで回し続ける魔女。


 世界最強の『不働の帝国』を築き上げたレベル1の最弱ニート、アルト。


 彼を裏切った騎士団長や、フェイを嵌めたクソ勇者たちが、この世で最も冷酷な「ブラック社長ニート」の存在を知り、絶望のどん底へ叩き落とされる『ざまぁのターン』は、すぐ目の前まで迫っていた――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ