8 病気
8話を投稿します よろしくお願いします
レックスの後を追うと、地下街の賑わいは次第に薄れていった。
薬草の匂いが立ちこめ、咳き込む声があちこちから聞こえてくる。建物の軒先には寝かされた病人。
桶いっぱいに水を運ぶ子供が横を走り去る。
レックスは診療所の扉を開けた。
「状況は?」
「高熱の患者が十人、子供が四人、老人が三人です!!」
白衣姿の女性が振り返る。
「よし!!やばい奴から順に教会に運べ!!」
「でも、通りには兵士が……」
「大丈夫だ。教会に直通できる抜け道がある!!」
一枚の地図を渡される。
「セバスって奴を訪ねろ!!図体のでかい坊主だ!!すぐ分かる!!」
「はい!!」
男たちは老人を担ぎ上げ走って行った。
レックスは迷いなく指示を飛ばしていく。ユウヤはそれを見てふとつぶやいた。
「……医者じゃないんだよな」
「言ったろ。駆られてるって。誰かがやらなきゃ人が死ぬ。それだけだ」
その言葉に、言い訳も誇りもなかった。
小さな少女が泣きながら母親の手を握っている。
「お母さん……」
レックスは少女の前にしゃがみ込んだ。
「大丈夫だ。先生がきっと治してくれる」
その一言だけで、少女は少しだけ安心したようにうなずいた。
盗賊。
王都ではそう呼ばれ、誰もが距離を置いている男。口も悪い、歩けば衛兵を殴るし、汚い仕事にだってすぐに手を出す。そんな男が、この地下街では誰よりも人のために動いていた。
人々が「レックスさん」と呼ぶ理由をユウヤはようやく理解した。
しばらくしてから、ひとまず落ち着くと、男の姿が見えた。
「どうだった?セバスの奴いたか?」
「はい!!全員とりあえずベッドを運んでもらいました!!」
「そうか」
レックスは眉間のしわを緩めた。
「あいつ、今日は徹夜だな……ははは」
診療所を出ようとしたそのときだった。
「レックスさん!!」
一人の男が慌てて駆け寄ってくる。
「薬草が足りません!!」
「そうか」
レックスは懐から小さな革袋を取り出した。
中には銀貨が数枚。
「これで買えるだけ買ってこい」
「で、でも……これは……」
「いいから行け。金はまた稼げばいい」
男は唇をかみしめる。
「ありがとうございます!!」
深々と頭を下げると、駆け出していった。
ユウヤは思わず口を開く。
「全部渡したのか?」
「困ってる奴がいるなら使う。それだけだ」
「リーダーは大変だな……」
「うるせえ」
その背中を見つめながら、ユウヤは少し胸の奥に来るものがあった。
レックスは腰に手を当て、いつもの不敵な笑みを浮かべた。
「仕事も片付いた。今度こそ聖剣探しだな。」
「そうだな」
ユウヤは静かに頷き、レックスの後を追った。




