6 捜査開始
6話を投稿します よろしくお願いします
「死んで、未来から来た。王都は崩壊する。か、まあ、馬鹿正直なお前がいうんだから、まあ本当なんだろうな……」
少し考えてから、レックスは歩き出した。
「捜査開始だ。着いてこい」
「どこに行くんだ?」
「地上に聖剣や盗賊の影は影も形もなかった。だったら、俺らのすみかをもう一度徹底的に洗い直すって訳だな」
レックスはグラン通りの脇道をずんずんと歩いて行く。
「まさか……地下街に行くのか!?」
「おう、それ以外何があるんだ?」
ユウヤは怪訝な顔した。
地下街と言えば、入口には常に衛兵が立ち、普通の人間は近づくことすらできない場所だ。
まあ歩いてりゃ分かるさ、と彼は笑った。
(……この辺初めてきたな)
表の通りの騒々しさから一転、裏通りの空気はなにか物々しさを感じる静寂に包まれていた。
「俺の情報網ではよ。聖剣はどこかのごろつきがあっさり手に入れちまったらしいんだ」
その話にユウヤは呆然とする。やはり聖剣は一度何者かによって盗まれているのか。
「でも大臣が守りは万全って……」
「あー、お偉方の万全は当てにならねえよ。地下街には無数の穴があるんだ」
その地域は貧困が進んでおり、盗難や人さらいなどが後を絶たない。
レックスはそこの出身だ。事情には精通しているのかもしれない。
「王宮に喧嘩なんか売りやがって、どこの誰だかしらねえが、はた迷惑な野郎だぜ。ったくよ」
道ばたの石ころを蹴飛ばす。
レックスは内心焦っているのだろう。期限までに見つけなければ地下街を燃やす。
そう脅されているのだから。
「……大体よ、聖剣って高く売れるもんなのか?」
「どういう意味だ?」
「聖剣つっても、千年前だか昔の代物なんだろ?」
「まあそうだな。伝承によると国ができた時にもうあったとか言われてる」
ふむ、と少し考えてから、レックスは腰のナイフを取り出した。よく磨かれたナイフだ。鋭く鍛え上げられた鉄がキラリと光っている。
レックスはそれを爪の先でピンとはじくと、
「ほら、ナイフだって手入れしなきゃ、一月すりゃ錆びるだろ?じゃあ、その聖剣、絶対ボロボロだろって話。そんなガラクタに危険を冒して盗みに入る意味が分からん」
「そういう見方もあるのか……」
いや、貴族なら権威がどうのとかで高く買うもんなのか……?などとぶつぶつやる彼を見ながら、ユウヤは苦笑する。
(相変わらず金のことばかり考えてるな)
昔の友人たちは一癖も二癖もある人間たちだった。
皆、何かしらの強烈な欲を持っている。
レックスの場合は「金」。
昔から金のことにばっかり執着がある。
「……あ、勇者様の前だったな」
「別にいいさ」
地下街出身というのも彼の欲を裏付けるものなのかもしれない。
「それにしてもいいナイフだな」
レックスはお目が高い、と笑いながらナイフを回していた。
自慢の一品らしい。
「道具は命だからな」
そう言って鞘に収めるレックス。
ユウヤは腕を組みながら一人黙々と考えながら歩いている。
(そういう視点で物を考えたことは無かったな……)
長い通路を歩き続けると、
急にぴたりとレックスは足を止めた。
「ほら、ついたぞ」
たどり着いたのは、住宅と住宅の間に挟まる、石で出来た暗闇に繋がる怪しげな階段。
ユウヤは入り口に書いてある毒々しい色の張り紙に目を見開く。
『ここより先、立ち入り禁止』
鉄で出来たバリケードの向こうは何人もの衛兵がその階段を見守っていた。
「あれを突破するのか……?」
そのとき、レックスはあり得ない行動に出た。
くるりときびすを返すと、民家に無断で侵入し始めたのだ。
「……は?」
いいから入れ、といわれて渋々ユウヤも入っていく。
「お、おい……人の家だぞ……」
中は普通の民家だった。部屋の奥には石造りの暖炉が添えられているだけだった。
レックスは慣れた手つきで暖炉の石を動かす。
ごごっという重い音の後に、
石が横へとずれ、その奥から地下へと続く暗い石階段が姿を現した。
「ようこそ、地下街へ」




