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4 レックス

4話を投稿します よろしくお願いします

日も落ちかけ、王城のメインストリート、グラン通りは夜闇に包まれ始めていた。

酒場が賑わい始め、街には明かりが灯る。


その街路を勇者ユウヤは歩いている。


横には銀髪の冒険者レックス。着古された服に腰にはギラギラ光るナイフ。こなれた印象が感じられる。


「で、頼みたいことってなんだよ。ユウヤ」


「……泥棒の犯人を一緒に捜して欲しいんだ」


「泥棒……?」


あー、と、レックスが上を向いた。


「……っていうと、そりゃ王宮に入ったとかいう馬鹿の話だな」


「もうお前にも伝わってるのか……」


あたりまえだろ。俺は地獄耳だぜ?と彼は軽く笑った。


「……聖剣が盗まれたってやつだろ?もうみんな知ってるぜ」


ユウヤは歩く足を止めた。


(なんだって……!?)


その瞬間、ユウヤの体中の血の気が引く感触があった。


(侵入しただけじゃない……もう盗まれていたのか……!!)


今朝の大臣の発言と食い違っている。嘘だ……。


ユウヤには少し後の光景が浮かんだ。


崩壊する王都、魔王が持つ聖剣。


(魔の手どころか、もう侵略は終わっていたんだ……!!)


レックスは俺の顔を見て疑問そうな顔をしたが、話を続ける。


「……まあ国はひた隠しにしているがな。で、どうするんだ……?どうせお前のことだ。追うんだろ?」


「まあな……」


うんうん、とレックスはうなずいてから、少し顔をしかめた。


「俺もな、勇者様とは理由が違うが追いかけなきゃならねえ理由があるんだ」


「お前まさか……」


聖剣はこの世に一本しかないといわれる品物。ユウヤとは理由が違う。それは金だ。金が好きなレックスならやるかもしれない。


彼は地下街を取り仕切るリーダーだ。


地下を知り尽くす彼にかかれば地上の警備など容易いはず。


レックスは軽く笑って、


「聖剣か、まあもらえるもんはもらうのも悪くねえかもな」


その言葉に考えもしなかった疑念が頭をよぎる。


(レックスなのか……!?)


ガッ!!


「何やってんだよ!!見損なったぞ!!」


気づいたときにはものすごい剣幕でつかみかかっていた。


「……うお!!何すんだよ!!」


「お前なんだな!?お前が盗んだのか!!」


焦りと失望で、訳が分からず、ユウヤは怒鳴りつけていた。

(レックスは魔族と結託してたのか!?)


ユウヤには幼少期からの十年間が映る。

初めて会ったときのこと、そして街を駆け回った記憶。

いろんな思い出がよみがえる。


(それを……裏切られたのか……!?)


バシッ!!という音がする。


衝撃。


その回想が急な頬への衝撃でピタリとやんだ。

途端、ユウヤは手を離した。


「落ち着けって!!」


「……は?」


レックスはふーっと息を吐き、呼吸を取り戻した。


「俺が盗んだなら、わざわざお前に会うわけねえだろ……」


その一言でユウヤの脳の混乱が少しずつ収まっていく。

(……まあ、確かにそれはおかしい、か)


普通、泥棒をしたのであれば、そのことはよほどの人格破綻者でない限り、他人に言ったりその話題を出すことすらしないはずだ。


それも勇者である自分にそれを言うのはさらにおかしい。


「……本当のことを言うとな、地下街に捜査が入ったんだ。昨日な」


「地下街に?」


「ああ。俺たちはただでさえ怪しい身だ。真っ先に疑われるに決まってんだろ」


「そうか……」


王国から見れば、地下街は真っ先に疑う相手かもしれない。

地下街は人気の無い薄暗い路地にあり、王都民は立ち入り禁止とされている。


そこでは喧嘩や犯罪など悪い噂が絶えない。


地下街の人間は自分のことだけを考えて生きている。そんな偏見を誰もがどこかに持っている。


(だけど……)


レックスがなぜこんなにもお人好しなのかはユウヤにはよく分からなかった。


「……犯人が見つからなかったら最悪、地下街は終わる」


レックスは拳を握りしめた。地下街はレックスの故郷。


「絶対見つけ出さなきゃならねえ……そんなとき、お前を見つけて思ったんだ。勇者は盗む理由なんかねえって」


「もちろん協力してくれるよな?」


その言葉にユウヤは頷いた。


頼るどころか、頼られてしまった。


気づけば俺は、地下街を背負う一人の冒険者に手を貸す側になっていた。


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