36 フィナの孤独
36話を投稿します。よろしくお願いします。
王都にて、平民街の路地。
ここは主要通りからは遠く、人通りもまばらになっている。
ようやく実家の前についた。
「お帰り!!」
家の前では、妹のリリアが明かりの漏れる玄関先で待っていた。
「ただいま」
リリアはふと、目線をユウヤが担いでいる何かに向けた。
「あれ……その人。フィナさん?」
「ははは、そうなんだ」
「ええっ!!本当に!?」
「ああ。今一緒に……」
……盗難事件の犯人を追う仲間で、とは言いかけてやめた。
ユウヤはあまり自分の殺伐とした状況を妹には語りたくなかった。リリアには平和な世界で笑って欲しかったからだ。
「でも、なんでお兄ちゃんがおんぶしてんの?」
「え、あ、これは……」
しまった。状況を説明できないせいで何と言ったらいいのか分からない。
「飯食ったらこいつが酔い潰れたんだよ。ははは……」
「じゃあお兄ちゃん、女の人をお持ち帰りしたんだ……」
リリアが冷たい目で言った。
「おいおい、人聞きの悪い言い方をするな」
「違うの?」
「酔い潰れたから介抱しただけだ。こいつの家わかんないし」
「つまり、拾ってきたと」
「その言い方だと、捨て猫みたいだな……」
そのとき、フィナが口をもごもごさせながら何かを発した。
「にゃあ……」
本当に猫だったみたいだな……。
そう言いながら、フィナをとりあえず使っていない個室のベッドに寝かしつける。
「自分の部屋じゃないあたり誠意が持てるね、お兄ちゃん」
リリアの目が怖い。
「な、何言ってんだ……」
あんなに景気よく飲んだせいで、フィナは具合が悪そうだ。
「大丈夫?何か手伝おうか?」
「いや、フィナのことは俺が面倒見る。心配はかけないよ。リリアはお母さんの看病もあるだろう」
「こんな時間に起きてるの珍しいな。祭り行ってたのか?」
「お兄ちゃん、戦争に巻き込まれたって聞いたから、いても立ってもいられなくて」
「戦争に?」
ユウヤは驚いた。
「地下街と平民の喧嘩から始まった大騒ぎが国を巻き込んだ大戦争に発展」
「さらにはこないだ倒した怪物まで復活して窮地に追いやられる勇者ユウヤ!?彼の運命は!?って噂になってたから心配したよー!!」
リリアの大げさな語りに呆然とするユウヤ。
……おいおい、話が飛躍しすぎてるぞ。
「喧嘩、のところまでは本当だな」
「大丈夫?怪我してない?」
「ああ、たいした喧嘩じゃないよ」
戦ってきた魔王の配下たちに比べれば、あんな喧嘩など軽い準備運動さ。
とユウヤはひとり心の中でつぶやいてみる。
「よっ、英雄様」
「いやいや……」
「じゃあ私寝るね。」
「おう」
そういってリリアは寝室へと上がっていった。
ユウヤはただ、すやすやと眠るフィナの姿を見つめていた。
怪物とか魔女とか言われてるが、こんな様子で寝ていると全くそんな風には見えない。
ただの年相応のその辺にいる少女のようだ。
「飲み過ぎだろ……」
ユウヤは酒を飲んだことはない。だが、長年の旅の経験から毒を避ける癖がついていた。無意識的に手が止まってしまったのだ。
一方、フィナは酒は飲んだことがないと言っていた。加減が分からなかったのかもしれない。
彼女のことだ。きっと敵も多く、気の休まる時間など無かったのだろう。だからだろうか。彼女が自由な外の世界に行きたがっていたのは。
一度目の人生でもフィナは何度も何度も俺の所に来て勝手についてくるくらい冒険に出たがっていた。……そして死なせてしまった。
俺はそのときの記憶をそっと胸にしまって、
「今度は冒険、一緒にしような」
とそっとつぶやいた。
その時、
「うぇ……」
フィナの口がもごもごと動いた。
「うわ!!バケツバケツ!!」
……前言撤回。やっぱ冒険したくないかも。
フィナが無意識にやらかした惨状に振り回されながら、夜は更けていくのであった。
続く
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