23 ヴェルクロア王
23話を投稿します よろしくお願いします
王都の大通りを歩く。
先ほどまで戦場だった場所とは思えないほど、人々は明るい表情を浮かべていた。
「勇者様だ!!」「道を空けろ!!」
風景が流れていく。
噂は王城近くの貴族街にまで流れており、熱狂は鳴り止まなかった。
怪物の大きさからして、きっとみんな見ていたのだろう。
「勇者ユウヤ様が来られました!!」
重厚な門がゆっくりと開く。
王城、謁見の間。
ユウヤとセバスは長い広間を歩き続ける。
左右には王家の紋章を掲げた親衛隊の姿が一糸乱れぬ隊列で並び、その奥には王国貴族たちの数え切れないほどの視線が二人へと注がれる。
その中を歩くたび、靴音だけが静かな広間に響いた。
やがて、二人は玉座の前で足を止めた。
手前には大臣の姿と、奥には先日の招集では見なかった王の姿がある。
(王様、久々に見たな……)
ヴェルクロア王国国王、アルフレッド・ヴェルクロア。
王はあまり民草の前に姿を現すことはない。だが、その治世を疑うものは少ない。
民は敬意を込めて彼を賢王と呼んでいた。
派手すぎない白のローブに深紅のマント。
その目元は年を重ねた深いしわが刻まれている。
魔王が恐怖で玉座に君臨する王なら、この男は民に支えられて玉座に座る王なのだろう。
大臣が口を開いた。
「よくぞ来てくれた、勇者ユウヤ殿。そして僧侶セバス殿」
穏やかな声が広間に響く。
「このたびは王都を救っていただき心より感謝申し上げる」
柔らかな笑みを浮かべる大臣。
そのときだった。
ひそひそとした声が広まっていく。
「……功績は認めますが、修繕費はどうなりますことやら」
「街の被害も相当なのでしょう?」
「勇者一人に戦わせるとは、騎士団も情けないものだ」
重苦しい空気が漂っていた。
騎士たちは市民を避難させ、混乱を抑え、王都を守り続けていた。 誰一人役目を放棄したものなどいない。
大臣はゴホンと大きな咳払いをする。
「おやめなさい。彼らは命をかけて王都を守った英雄なのです」
「今はまず、その働きに感謝を示すべきではありませんか」
その穏やかな言葉で、広間は少し静まった。
「ですが大臣……」
貴族たちがなおも反論をしようとしたそのとき。
「控えよ」
それは静かな一言だった。
だが、その声が響いた瞬間、広間は水を打ったように静まりかえる。
「勇者ユウヤ、そして僧侶セバスよ」
「よくぞ王都を救ってくれた」
王は深くうなずく。
「おかげで多くの民が命を救われた。王国を代表して礼を言う」
「そなたらは国の英雄だ」
その言葉に一瞬、静まりかえった。
パラ、
と言う音の拍手が巻き起こり、やがてそれは次第に大きくなった。
祝福の空気が広間全体を包んでいった。
騎士たちも胸に手を当てて静かに敬意を示している。
(まずい……)
その中でユウヤは別種の不安を感じていた。
(聖剣が壊れたって言いづらいな……)
懐にある折れた聖剣の鍔に目をやる。セバスもまた気まずそうな顔をしていた。
「二人とも顔を上げよ」
王が穏やかに微笑んでいる。
「英雄がうつむいていては、民が悲しむであろう」
「「は……ははは……」」
「それでよい」
二人にとって戦よりも辛い時間が流れていくのだった……。
続く




