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22 英雄

22話を投稿します よろしくお願いします

怪物を討伐した後のグラン通り中央広場はまるで大災害でもあったかのような様相を表していた。


崩れた瓦礫が散乱している。


教会は見る影もない。道路は潰れ、修復が必要だ。


栄華を誇るグラン通りの中央広場が見るも無惨な姿になっている。


勇者ユウヤとセバスは満身創痍、特にユウヤは立つこともままならない状況だ。


だが……


「勇者万歳!!」


「ありがとう!!ありがとう!!」


熱狂は鳴り止まなかった。泣き崩れるもの。家族を抱きしめるもの。


先ほどまで死を覚悟していた王都はまるで祭りのような熱気に包まれていた。


その中心でその当の本人たちが青ざめているのもいざ知らず。


「……どうしよう」


勇者ユウヤと僧侶セバスは手に乗る二つの鉄片を見つめる。


つい数秒前まで王都を破壊する巨悪を両断した、最強の剣……だったもの。


今はただの黒く焦げた鉄くずだった。


「どうしたものですかね……」


セバスもただうなることしか出来なかった。


「聖剣って壊れないよな……?」


「ええ、そんな話は聞いたことがありませんね」


セバスは恐る恐る鉄片へと手を伸ばした。


指先で触れたところから、


ぼろっ。


「あっ」


黒ずんだ鉄くずの欠片が崩れ落ちた。


「あんまり触らない方が良さそうですね」


先ほどの精巧な彫刻も神々しい黄金の細工も今は見る影もなかった。


ユウヤは額を抑えた。


「王様になんて説明しよう……」


そのとき、人混みをかき分ける男たちの影があった。


「勇者様――!!」


王家の鎧に旗、間違いない、王城の兵士たちだ。


「ご無事でしたか!!」


「陛下がお待ちです!!すぐに王城へお越しください!!」


ユウヤとセバスは顔を見合わせた。


衛兵は壊れた剣には気づいていないようだった。


ユウヤの周りには人々が途切れることなく集まってくる。


「勇者様!!」


「王都を救っていただきありがとうございます!!」


花束を差し出すもの、焼きたてのパンを押しつけるものまでいる。


「い、いや、どうも……」


人助けをすることは好きなのだが、感謝されることは昔からどうにも苦手だった。


王城へ行きたいものの、なかなか人混みを抜け出ることが出来なかった。


そこへ、一人の少年が前に現れる。


「勇者のお兄ちゃん!!」


「おや……」


人混みから抜け出てきたのは一人の少年。


「助けてくれてありがとう!!」


「お前こそ、あんなに応援してくれてありがとうな」


聖剣の光の力は人々の応援によって伸びる。それに気づかせてくれたのはこの少年だ。

この子がいなかったらきっと負けていただろう。聖剣の力だけじゃない。


ボロボロの時、立ち上がる力をくれた。


「うん!!」


そのとき、ユウヤには言わなければならないことが思い浮かんだ。

ボロボロになった聖剣の鍔の話だ。


「あ、えっと、君の宝物の話なんだけど……」


ユウヤはそう言い、手の中の鍔を差し出した。

黒く焼け焦げ、黄金の装飾は失われ、ぼろぼろになった鉄片。


先ほどまで王都を救った聖剣の姿は、もうどこにも残っていなかった。


「その……守れなくて、ごめん」


隣でセバスも静かに頭を下げる。


「私からも、お詫び申し上げます」


少年はしばらく黙って鍔を見つめていた。


そして、小さく笑う。


「……ううん」


首を横に振ると、少年は真っ直ぐユウヤを見つめた。


「いいよ。勇者様が持ってて」


その言葉にユウヤは驚いて目を見開いた。


「……いいのか?」


「うん!!」


セバスが言うには、少年はこの鍔を片時も手から離さなかったという。


それをこんな風にボロボロにしてしまったのだ。

事情はともあれ、凄く怒られるのを覚悟して言ったのだが、こんな風に言われるとは思わなかった。


「でも、その代わり、またみんなを助けてね!!」


その言葉を聞いた瞬間、ユウヤの内に戦いの光景がよみがえった。


(この子はずっと応援していてくれたじゃないか)


この子なりにユウヤのために気を遣ってくれたのだ、ということに気づいた。


(なら、俺が言うべき言葉は……)


少年から託された願いに応える言葉は一つしか無い。


「ああ。もちろんだ、また誰かを助けるとも。約束だ」


にっこりと少年は笑った。


「うん!!約束だからね!!」


そして、人混みへと去って行った。


ユウヤは喧噪の中、その少年の先を見つめる。


「あれで良かったのかな……」


「まあ、あの子が良いというのであれば私からは言うことはありませんね」


セバスもうなずいていた。


ユウヤは壊れた鍔を握りしめた。黒く焦げ今にも崩れそうな鉄片。

もうここに聖剣としての価値はほとんどないだろう。


だけど、その重さは先ほどまでより大きく感じる。


人から何かを受け取ることは昔から苦手だったユウヤだが、これだけはきちんと受け取ることにした。


『またみんなを助けて』


少年が託したその願いも、ユウヤは握りしめるのだった。


「じゃあ、行こうか」


「そうしましょう」


英雄として歓声を浴び、確かな重みを感じながら、二人は誰にも知られぬ問題を抱え王城への道を歩き始めた。


続く


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