20 願い
20話を投稿します よろしくお願いします
中央広場に残っているのは砕けた石畳と朝日に照らされた瓦礫だけ。
その中心には神域の怪物。
それに対峙するは勇者ユウヤと僧侶セバス。
巨漢であるはずのセバスでさえ、豆粒に見えるほどの異様。
ユウヤが怪物を見据えたまま片膝をつく。もう満身創痍だった。
乱れた呼吸に震える腕、剣を握る手にはもう力が残っていない。
迫り来る瓦礫の一撃をセバスと二人で受け流し、どうにかここまで来た。
「みんなは逃げ切れたみたいだな」
セバスも肩で息をしながらうなずく。
「ユウヤさんが気を引いてくれたおかげです」
そのとき、怪物が巨大ながれきを引き剥がす。
ブォン!!
山のような岩塊がユウヤたちへ迫った。
「っ……!!」
ユウヤが光の剣を構える。
閃光が黒い瘴気を焼き払う。
「この……!!」
だが、瓦礫そのものの勢いは止まらない。
ドゴォオオオン!!
剣と瓦礫が衝突する。すさまじい衝撃が両腕を貫き、大きく押し込まれる。
「ふん!!」
セバスと二人がかりで押さえつけ、どうにか瓦礫の勢いは止まった。
ゴゴゴゴ……
怪物は次のがれきへと手を伸ばす。
「目的は果たしたよな、俺たちさ……ははは」
「最低限ってやつですね、悔しいですが……」
二人とも耐えるので精一杯だった。
魔王を討つ前にこんなところで負ける。
人々をかばいながらの戦がこんなにも大変だとは思わなかった。
二度目の人生でようやく、聖剣を手にしてなお、勝てないなんて……。
「ア、アッハハハッハハハ!!」
「終わる!!世界はもう終わりなんだよ!!」
終末を叫ぶ男の笑い声が広場に響いている。
「人間があれとどう戦うんだ……」
「逃げるったってどこに逃げればいいんだ!!」
「勇者様……」
逃げ惑うもの、泣き叫ぶもの、祈るもの、多くのものたちがこの戦を見ていた。
そこに一人の少年が大きな声を張り上げた。
「負けないでーー!!!」
澄んだ少年の声が、絶望の広場に響いた。
ユウヤがはっと、その満身創痍の顔を上げる。
「あいつ……」
人混みの最前列、
必死に叫んでいるのはあの少年だった。
聖剣の鍔を拾ったあの少年。
「頑張れーー!!」
ユウヤはその声を背に再び立ち上がった。
「まだ、負けらんねえな……」
「ええ」
二人は再び立ち上がった。
ユウヤはボロボロの弱り切った手に気合いを入れ直し、聖剣を握りしめた。
聖剣もその声援に応えるように淡い光を放っていた。
そのときだった。
「頑張ってーー!!」
さらにもう一人、
「負けるな!!」
十人、百人、その声はどんどん大きく広がっていく。
広場を埋め尽くした人々の願いが一つになっていく。
キィイイイイイン――
その声に応えるように聖剣の光はまばゆく激しく光を増していく。
これほどまでにない強い輝きを放っている。
そして、
聖剣は少しずつ、ゆっくりと長さを増していった。
最初は数寸ほど、それでも確かに長くなっている。
「なんだこれは……」
ユウヤの脳裏に浮かび上がるのは崩れた教会で見た一冊の童話。
神域の怪物と対峙する馬鹿でかい聖剣を持った初代勇者。
(あれは、誇張なんかじゃないのか?)
光はなおも膨れ上がっていく。
(最初に声援をかけられた時も、剣はわずかに光を増した)
ユウヤは叫んだ。
「みんな!!もう一度、もっと声を聞かせてくれ!!」
そのとき、一瞬広場が静まった。
「勇者様!!」「負けないで!!」
「あいつを倒せ!!」
「世界を守って!!」
キィイイイイイイイイイイン!!!
聖剣がさらに激しく鳴動する。
世界中の祈りへ答えるように、光の刀身が音を立てて伸び始めた。
最初は槍ほどの長さを超えて、
家々を越えて
城壁を越えて、
伸びる、さらに伸びる。
ついには怪物と肩を並べるほどの長大な光の剣へと変貌した。
「これが……」
その姿に息をのむユウヤ。
長すぎる刀身とは裏腹に、聖剣は羽のように軽い。
魔をたちどころに両断する至高の一振り、空へと届くほどの巨大な聖剣。
「あれは、本当にあった出来事なのか……」
怪物はその異様にひるんでいる。
今まで怪物は、分裂をし、非戦闘員を狙い、建物を食らって武装することであらゆる攻撃をしのいできた。
だが、そのどれもが無意味。
あらゆる小細工が通用しない。
そんな印象がこの一撃には存在した。
「終わりだ」
ユウヤは静かにその光を奴の下へと振り下ろした。




