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19/38

19 伝承の怪物

19話を投稿します よろしくお願いします

ズズズズズズズ……


黒い怪物は教会中へと広がっていく。


床を這い、柱をよじ登り、壁の亀裂へと潜り込み、梁という梁を黒く染め上げていく。


「まずい……!」


バキバキバキッ!!


礼拝堂全体が悲鳴を上げた。


黒く染まった梁が大きく歪み、天井が崩れ始める。


「きゃああああああああ!!」


崩れ落ちる瓦礫は一直線にシスターたちへ降り注ぐ。


「皆さん、伏せてください!」


セバスが駆け出す。


ドゴォォォン!!


振り上げた拳が巨大な梁を真正面から打ち砕いた。


崩れた天井からは朝日が差し込んでいた。


(もう朝か……)


その光の中で、土煙がゆっくりと晴れていく。


そこに立っていたのはもはや黒い塊などではなかった。


砕けた梁を骨格とし、瓦礫を鎧とし黒い瘴気を神経とした異形。


まるで建物そのものが命を得たかのような、巨大な怪物が更地と化した礼拝堂の中央でゆっくりと身を起こす。


「来るぞ!!」


ゴゴゴゴゴ……


巨大な怪物がゆっくりと腕を持ち上げる。


いや、それは腕ではなく、礼拝堂にあった大きな柱だった。


「全員遠くに逃げろ!!」


ユウヤが叫んだ。


怪物は大きく振りかぶってから、それを右から左へなぎ払った。


ドオオオオオオオン……


すさまじい衝撃が頭上を駆け抜け、瓦礫が雨のように降り注ぐ。


顔を上げたときには、礼拝堂は跡形もなく消え去っていた。


石畳だけがむき出しになった広場の中央で巨大な怪物だけが立っている。


「セバス……大丈夫か……」


「はい、どうにか……」


ふと、崩れた本棚からユウヤの目の前に一冊の本が落ちる。


それは飽きるほど読んだ勇者レディウスの童話。


描かれているのは怪物とそれと同じくらいの巨大な剣を掲げる初代勇者。


(こんなの、子供向けの神話の話だろ……)


その異様は、建国の時代、人々を滅ぼしかけた神域の怪物を思わせる異形のよう。


「何の騒ぎだ?」「教会が無くなってる!?」


崩落の轟音を聞きつけ、街の人々が次々に視線を集める。


一人、また一人、


視線の先にあったのは、跡形もなく崩れ去った教会、それと、


「何だあれは……」


その残骸を血肉に変え、悠然と立つ巨大な怪物と、それに立ち向かう勇者ユウヤの姿。


王都中の視線がその二つへと注がれていた。


続く

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