14 祈り
14話を投稿します よろしくお願いします
ユウヤはただひたすらに走る。
二つの桶を手に持って鍛えた体を必死に動かし、バンと庇護の間のドアを開ける。
「水と薬草もって来たぞ!!」
ユウヤは肩で息をしながら診療室へ駆け込んだ。
「ありがとうございます!」
シスターがすぐに桶を受け取り、薬草をすり鉢へ入れていく。
子供の咳き込む声と、シスターの走り回る足音。
ユウヤも必死に仕事を手伝っている。
部屋の中は慌ただしかった。
そんな中、セバスの落ち着いた声がその緊迫した部屋を支えていた。
「先生……」
少年が苦しそうに咳き込む。
セバスは冷静に膝をつき、病の気配を探るように目を閉じる。
「大丈夫です。私を信じてください。必ず治します」
シスターが床へ円を描くように薬草と塩を並べている。治療というよりは、儀式の準備のようだ。
ユウヤが首を傾げた。
「薬草を飲ませなくていいのか?」
「いえ。これは儀式なのです。病気とは悪しきものが人の体に寄生し起こるものです。まずはそれを発見する所から始めるのです。」
医療魔術とはそういうものですよ。とシスターは笑った。
「……ユウヤくんは我々が何を信仰しているか分かりますか?」
(神……?)
ユウヤは考えるそぶりを見せる。
ユウヤは勉強がどちらかと言えば嫌いなので、あまりピンとこなかった。
それに自らが感じてきた一度目の不幸もある。世界が崩壊して教会が潰れる瞬間も当然見てきた。
ユウヤはあまり神を信じるたちではない。
しばらく考えたが分からなかった。
「それは偉大なるレディウス神です」
ユウヤの背筋に汗が走った。
レディウスと言えば初代勇者の名前だ。
「そう。あなたが憧れている初代勇者の神格化した姿です」
「祈りを通して、私たちは彼の力の一部を借りることが出来ます」
セバスは少年の胸にそっと手を置いた。
「今から使うのは、強化された五感です。それだけのものですが、病を扱うには十分です」
張り詰めた空気。
セバスは目を閉じ何かをぶつぶつと呟き続けている。
「そこ!!」
トンとセバスの指が少年の肺の部分を指す。
そのとき、
ボコ……ボコ……と少年の体から何かがうごめく。
体がぴくりと跳ねる。
「っ……!」
喉の奥にその何かがせり上がっていく。
「げほっ!!げほっ!!」
少年が激しく咳き込み、その拍子に黒い塊が口から飛び出した。
(これが病の元か……)
こぶし大はあるそれがどろりと床に落ちる。粘体のようなそれをセバスがすかさずつかんで布に包みあげる。
「これが今、巷で急増している病気の元です」
少年の呼吸が一気に楽になった途端、そのまま眠るように意識を失った。
ユウヤは布に包まれた黒い塊を見つめる。
(……これが病を抜くってことか)
セバスは静かに手を引いた。
その横顔には、疲労の陰が薄くにじんでた。
「……この儀式は誰にも出来るものではありません」
シスターがぽつりとつぶやく。
「神の力を身に宿して行使する。そのためには肉体が絶えられなければならない。ですから我々は日々体を鍛え上げているのです」
ユウヤは感心するようにセバスの丸太のような腕を見る。
よくみると他の教会の人々、女性であるシスターでさえ、鍛え上げられた跡が見える。
その言葉には誇りと言うより、義務のような重みがあった。
(これが教会か……)




