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13/38

13 記憶

13話を投稿します よろしくお願いします

教会の最奥の一室、庇護の間では、子供たちが変わらず元気に遊び回っていた。


その中で勇者ユウヤとセバスは、窓際のベッドで少年が大事そうに抱える小さな布袋へ静かに視線を向けていた。


「それを、ちょっとお兄さんに見せてもらえるかな?」


「うん」


少年は何の疑いもなく布袋を差し出した。ユウヤは慎重に中身を取り出す。


掌に乗ったのは、鈍く黄金に輝く金属片。竜を象った精巧な王家の紋章が刻まれている。


その瞬間、心臓が大きく脈打った。


(これは……!)


脳裏に、一度目の人生の記憶がよみがえる。


王城の祭壇に光り輝く剣、熱狂にわいた人々。


そして、自分が高々と掲げた一本の聖剣。黄金の鍔に刻まれた、竜の紋章。


見間違えるはずがない。


「……聖剣の鍔だ」


「そうなんですか……?私には何が何やら……」


セバスが不思議そうに金属片をのぞき込む。


「そんな大層な物なのですか?」


「ああ」


ユウヤはゆっくりとうなずいた。


「二週間後の勇者任命式で使われるはずだった聖剣。その一部だ。」


セバスの表情がわずかに曇る。


「では、この子が事件に巻き込まれている可能性が……?」


「いや。」


ユウヤは首を振った。


「この子は拾っただけだ。」


そう言って少年へ視線を向ける。


「これを拾った場所、もう少し詳しく教えてくれないか?」


少年は少し考えるように首をかしげる。


「えっとね。洞窟を出てすぐの道に落ちてた」


「誰かいたか?」


「知らないおじさんが歩いてた。おじさんが落としたんだ」


「顔は覚えてる?」


少年は申し訳なさそうに首を横へ振った。


「頭にフードをかぶってたから、よく見えなかった。」


ユウヤは静かに鍔を見つめる。


(犯人は地下街を抜け、この教会の近くまで来ていた……)


少なくとも、追うべき道筋は見えてきた。曖昧な像が少しずつ形になっていた。


「じゃあ、これ借りてくぞ!!」


鍔をつかもうとしたが、ひょいとそれを避けられてしまった。


「いや、……いけません」


「なんでだよ」


セバスは静かに首を横に振った。


「これはこの子の持ち物です。そう簡単に持ち去っていいものではありません」


「本物であるという証を、私にも示してください」


「そのうえで、この子が自ら手放すと判断した場合のみ、持ち出すことを認めましょう」


ユウヤは頭を抱えた。

(確かにそうだ)


ユウヤは確かに分かるが、セバスやこの子がこれが聖剣の一部だと知る根拠はどこにもない。しかしどうやって……


「おお、そうです」


セバスが何かを思い出したように口を開く。


「教会の書庫に、初代勇者の古い資料がありましたね」


「資料?」


「はい、教会の書庫に保管されている古い写本です。もしかしたら聖剣に関する挿絵などもあるかもしれません」


ユウヤはわずかに目を細める。


(絵と一致、か……)


証拠としては弱い。だが、ゼロではない。


「……まあ、合っていたら私からは何も言うことはありません」


ふらっ。

その瞬間だった、少年の体が膝ががくりと下がった。


「お、おい!!」


ユウヤが反射的に駆け寄り、倒れる寸前の肩を支えた。

少年の顔は、さっきまでの血色を失っていた。唇がわずかに紫がかり、呼吸が浅い。


「急に……どうした?」


セバスの表情が一変する。


「離れてください!」


静かな声だが、迷いがない。

彼はすぐに少年の額に手を当てる。熱は高い。だが、それだけではない。


「これは……疲労と、冷え。それに……」


ユウヤの脳裏には地下街の咳き込む人々、そして教会の寝込む人たち。


「流行病……」


「おそらくその可能性が高いでしょうね」



続く

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