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21日目の神

11月分 1/1

「神だと当然だって、どういうこと?」

 1レベルであることをむしろ誇らしげにしているシトラスに聞く。

「能力のベースが違うのです。神にとっての1レベルは人族の1000レベルに相当すると言ってもいいでしょう」

 1000レベル? 遠いような近いような絶妙なレベル差だ。

 やっぱり遠いか、1000レベルに到達するためには1000レベル相当の魔物を倒さないといけないのだから。


「レベルが上がったって言うのはおれたちと同じように16レベル上がったってこと?」

「そうですね」

「そうか、1000レベルが1016レベルになったんだ」

 1000レベルで始めてしまえば、レベルを上げるためには1000レベル前後の魔物を倒さなくてはいけない。

 シトラスはおれたちの中では一番強いのだろうが、ソロで同等の魔物を倒すのは相当にきつい。

 今までレベルを上げられなかったのも当然のことだろう。

 そもそも1000レベルの魔物なんて存在するのか?

 神々同士で戦うか、神話級の大物しかいないんじゃないだろうか。


「わたしもそうなると思ってたんですけどねー」

 歯切れ悪いな、違うのか。

「どうやら神として16レベル上がってしまったようです」

 ん? つまり?

「神として17レベル、人として換算すると1万7千レベルですね」

「いちま、え?」

 シトラスの周りに集まっていたみんなは現実感のない数字に呆然としている。

 ニアとキアはお互いを見つめ、ユズはおれにウインクしてきた。

 余裕あるなこいつ。わかってないんじゃないか?


 1万7千。あらためて見てもすごい数字だ。

 能力値や経験値ではなくレベルだというのだから、どれほどの物かと言われても想像もつかない。

 レベルがこれなら経験値はどれほどのことになってるやら。

「なるほどな、それでこちらの経験値は上乗せされなかったわけじゃな」

 おれも感じていた疑問をユズが口に出す。

 シトラスが1レベルだったのなら経験値の総量が増えるわけがないのも納得だ。


「ちょっとがっかりかナ」

 思わず漏れてしまったキアの言葉に場が凍り付く。

 こらっ、思ってても言うんじゃない!

 おれも自分のレベルがどれだけ上がるんだろうと身構えていたから肩透かしなところはあるが、それ以上にシトラスのレベルが上がることの恩恵はでかいのだから。

 でかすぎておれも含めて実感できてない所はある。


「もも、申し訳ありません」

 キアの失言に隣にいたニアがキアの頭をわしづかみにして頭を下げさせる。

「あら、気にしてませんよ。確かにわたしが頂きすぎのようですし」

 シトラスは顎に指を当てて小首をかしげる。

「そう言うことならわたしも人として参加した方がいいかもしれませんね」

 謎めいた事を言うシトラス、何か心構えで違いが出たりするのか?


「シトラスが1万6千?もレベルが上ったら魔物を狩るのも馬鹿らしくなって来るな」

 魔物の経験値は格下であればあるほど少なくなる。

 シトラスがいるだけでこの辺りの魔物はどれだけ倒してもろくな経験値を落とさないだろう。

「そうですね、また移動しますか?」

 ニアの言葉に頷く、どこまで行っても適正レベルにならない気はするが、その時はその時で討伐報酬稼ぎに切り替えることになるだろう。

「今日も移動だ」


 魔物のレベルが上がれば数が減るもので、整備された街道は高レベルエリアに入るほど安全になる。

 商人や一般的な旅人の数も増えてきて、王都が近づいていることを感じさせた。

「王都の先に行くことになるのかな?」

 王都での適正レベルは200。

 冒険者の最終目標と言われ、そこまで到達したものは王国に騎士として雇われ一生安泰と言われている。

 だがおれたちのレベルはそれを越えていくし、騎士になる予定もない。

 王都の先、急速に人がいなくなる魔境がおれたちの目的地だ。


 シトラスの成長がけた違いだったことで心強く感じる反面、他のメンバーと自分自身の成長には不安を感じていた。

 『所有経験値増加』のスキルを均等に割り振ってもシトラスだけが1000倍の速さで成長していく。

 シトラスの経験値は強さに対して1000分の1なので経験値の増加分に貢献することはない。

 結果、シトラスと他のメンバーの成長に格差が出来てしまうことにバランスの悪さを感じる。

 今は神の威光があるのでそんな不満は出ないが時間が経つとどうなるかわからない。


 だが、 2つの街を越えて宿屋で眠りについたおれたちはそんな疑念は吹っ飛ぶことになる。

「リーダー、リーダぁ」

 肩を揺すられ顔をぺちぺちと叩かれて目を覚ますと膝立ちのキアがおれのベッドにしがみ付いていた。

「腰でも抜かしたのか?」

「リーダー、緊急事態ダ」

 そういってキアは自分の目の前を指さす。

 おれからは見えないがステータス画面を開いているのだろう。

「ステータス画面か?」

 ウインドウの縁をなぞるように指さしてうんうんと頷くキア。

 そんな言葉すら忘れたのかキア、ニアはどうしたんだと目を向けると呆けたように口を開けて天井の隅を見つめていた。

 シトラスは平然としているし、ユズはまだ寝ているようだ。


 急かされるままにステータス画面を開いたおれはその変化に驚愕する。

「なんじゃあこれ?」


『遊佐 蕗 魔法使い

レベル 230+318=548

HP 290+318=608

MP 750+954=1704

攻撃 260+318=578

防御 260+318=578

知性 490+636=1126

精神 490+636=1126

敏捷 260+318=578

SP 291+318=609

EXP 114823+159153=273976

NEXT 274000

スキル(+)』


『ニア 術師

レベル 173+318=491

HP 233+318=551

MP 579+954=1533

攻撃 203+318=521

防御 203+318=521

知性 376+636=1012

精神 376+636=1012

敏捷 203+318=521

SP 51+318=369

EXP 86062+159153=245215

NEXT 245500

スキル(+)』


『キア 剣士

レベル 173+318=491

HP 579+954=1533

MP 233+318=551

攻撃 376+636=1012

防御 376+636=1012

知性 203+318=521

精神 203+318=521

敏捷 203+318=521

SP 51+318=369

EXP 86062+159153=245215

NEXT 245500

スキル(+)』


『ユズ 闇術師

レベル 401+318=719

HP 461+318=779

MP 1263+954=2217

攻撃 431+318=749

防御 431+318=749

知性 832+636=1468

精神 832+636=1468

敏捷 431+318=749

SP 201+318=519

EXP 200260+159153=359413

NEXT 359500

スキル(+)』


『シトラス 光術師

レベル 16717+318=17035

HP 16722+318=17040

MP 50156+954=51110

攻撃 16722+318=17040

防御 16722+318=17040

知性 33439+636=34075

精神 33439+636=34075

敏捷 16722+318=17040

SP 16000+318=16318

EXP 8358000+159153=8517153

NEXT 8517500

スキル(+)』


 レベルが倍?

 300レベル上がって?

 経験値がいち、じゅう・・・15万?16万!?

「何が起きた!?」

「ボクもわかんないヨ」

 キアの情けない声、誰か事情を説明できないかと部屋を見回す。

 ニアは呆けてる、ユズは寝てる、シトラスは微笑んでる。

 自然な笑みなのにおれからするとしてやったりとほくそ笑んでいるようにも見えてしまう。


「シトラス、ちょっと来て」

 呼んでいる間にステータスを見直すと、シトラスだけレベルがおかしい。

 1万7千ってレベルの数字じゃねえぞ?

「どういうこと?」

「どうとは?」

「レベルが、経験値がおかしいんだけど?」

 とぼけた返答につい口調が荒くなるが別にシトラスが悪いわけではない、たぶん。


「お役に立てました?」

 と、シトラスは自身のステータスを開き満足そうにうなずく。

「こんなレベルになってる事、知ってたのか?」

「レベルの事は知ってました、フキさんのスキルに適用されるかはわからなかったので黙っていたんです。

 どうやらうまくいったようですね」

 昨日見た時にはシトラスのステータスは?マークだった。

 本人の言葉を信じるなら元のレベルは一桁、『所有経験値増加』のスキルによってやっと二桁になった所だった。

 ただし神として。


「千倍ってそう言う・・・」

「そうですよ、人として生きるって言ったじゃないですか」

 神として上がったレベルを人として能力値変換したらレベルが千倍になって?

 それに見合った経験値が『所有経験値増加』のスキルでおれたちに割り振られた?

 ガバガバってレベルじゃない。

 このゲーム、デバッグした方がいいぞ!?(数日ぶり3度目)


「おかしいだろ? 神としてレベルを上げたら千倍の能力値がそのまま上がって?

 人として能力値換算したらレベルも経験値も千倍になってるって」

 そんな仕様だと神の時にレベルを上げて人になったら経験値をみんなにばらまくとか、そんな事が出来ちゃうぞ。

 実際にそれをやったわけだし。


「待って、もしかして人になったらもう二度と神に戻れないとかそういう制限があるとか?」

 気楽にやってたんで誤解したが、シトラスは人として生きていくって覚悟を決めてそうしたのか?

 そんな覚悟されても責任取れないのに・・・

「いえ、戻れますよ」

 しれっと言うシトラス。

 覚悟なんてなかった。


 神モードになるとシトラスが成長する。

 人モードになるとおれたちが成長する。

「それなら経験値増加の配分を変えた方がいいのか?

 神モードの時はシトラスに集中させてとか」

 おれの効率主義な提案にシトラスは首を振る。

「それは今まで通りで行きましょう、あまり目立ったことをして注目もされたくないですし」

 シトラスに配分される経験値は千倍の価値があると言える。

 シトラスを育てれば人モードになった時におれたちに配分される経験値が増加するわけだが。


「そうだな」

 数値がでかすぎていまだに実感がないがとんでもないことしてるんだよなこいつ。


 その後話し合って、シトラスは数日ごとに人モードと神モードを切り替えて、経験値の配分は全員が20%のまま動かさないことにした。

 一日ごとに切り替えたり、配分を極端にすることは目立ちたくないという理由で却下。

 効率を突き詰めるなら神モードの時はシトラスに集中、人モードの時はシトラスを最低限にするべきだが、それはしない。


 大量に稼いだスキルポイントをどう振り分けるかも悩ましい所。

 数日間はシトラスは今日と同じ人モードだから、毎日同じだけのスキルポイントが入ってくるわけで、それを見てからでいいということに落ち着いた。

 スキルを覚えても戦う相手もいないわけだし。


 今日も移動で街を2つ越える。

 王都が近づいてることもあって大分にぎやかになってきた、街も都市と言っていい規模だし、昼休憩で食事をとれるような村もある。

 村と言っても出店の集まりがそのまま居ついたようなサービスエリアのような休憩所だ。

 おれたちのような身軽な冒険者は街門も素通りだが、荷物を満載した馬車などは止められて臨検を受けている。

 おそらく関税を徴収しているのだろう。


 宿に入ってもう寝るだけなのだが少し不安がある。

 ニアが朝起きてからずっと呆けたままでまともに反応してくれない。

 キアはハッハッと息が荒く、ユズは「意味わからん、意味わからん」とつぶやくばかりで皆の様子がおかしい。

 理由は分かっている、シトラスのバカげた経験値が流れ込んでレベルが上がりすぎたせいだ。

 このまま寝たら昨日と同じだけの経験値が流れ込む、それは限界ギリギリの状態で耐えられるのだろうか?

「どう思う?」

 唯一まともなシトラスに聞く

「フキさん以外は不安定ですね、もったいないですけど一日休んだ方がいいかもしれません」

 シトラスから見てもそうなるか、配分は買えないつもりだったけど他の人は10%くらいに抑えておくかな。


「じゃ、ニアとキア、ユズに10%づつで残りの70%をおれとシトラスで分ければいいか」「わたしも10%ですね、人の時に経験値をもらう必要はないですから」

 シトラスは神モードの時に経験値をもらった方が効率がいい。

 千倍効率がいいから人モードの時は千分の一程度貰ってもしょうがないそうだ。

「おれも平気なわけじゃないんだけどな」

 若干不安になる、ニアたちよりは慣れているというか耐性があるのはおれが経験値増加のスキルを持っているおかげだとは思うが、ニアたちの様子を見ているとその気持ちもしぼんでくる。

「60%、昨日の3倍か」

 耐えられるのであれば諸々のペナルティーを解消したうえで新しいスキルも覚えられる。

 ・・・ペナルティーはもう消せるか?

 ステータスを確認してスキルポイントとペナルティーを確認。

「足りるぞ」


『SP 609 -500=109

EXP 273976

NEXT 274000

スキル(ー)

水魔法 -3→ 0

風魔法 -3→ 0

氷魔法 -3→ 0

雷魔法 -3→ 0

光魔法 4

闇魔法 -3→ 0

所有経験値増加 2-1

嗅覚強化 2

鑑定

収納

索敵 2

隠密 2

槍術2

盾術1

未収得スキル(+)』


「やった」

 やってやった。

 ペナルティーのない生活なんて一生無理だと思っていたけど、まさか力づくで解決するとは思わなかった。

 ペナルティーさえなくなれば光魔法の祝福に頼らなくても生きていける。

 今までは大弱点を祝福でごまかしていただけだった。

 大弱点をごまかしても通常の弱点は残ったまま、もし魔法を使うような敵が現れれば致命的なダメージを負っていたかもしれなかったのだから。


「もう、なんかゲームクリアした気分だな」

「そんなに負担でした? 大弱点は」

 この世界に来た時から感じていた世界からの敵意。

 光魔法の祝福を覚えた時から和らいだ気はしていたが、今スッキリとなくなった。

 シトラスに頷き返すとおれは心安らかに眠りについた。


 寝苦しさから夜中に目を覚ました。

 真っ暗な部屋に起き上がる気もなくして寝っ転がったままでいたらいつのまにか寝ていたようだ。

 朝にはちゃんと日の光で目を覚ます。

 夜中に起きた割にはしっかり眠れていたようで目覚めはすっきりだ。


「みんなの様子は?」

 昨日はレベルが上がりすぎて具合がおかしかった、特にニアは一日中呆けたままだったので心配だったが。

「半分に減らしたわけだし、もとに戻ってるといいけど」

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