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19日目の追撃

7月分3つ目終わり

「ニア、ゾンビを足止め」

「はい」

 門の狭い所でゾンビを拘束し後続が通れないようにするニア。

 その間に中に入って来たゾンビはキアが処理する。


「え、あ、」

 バンパイアロードは門を開放しておれたちを逃がすつもりだったようだが、ゾンビを数に入れなければ孤立無援。

 サイクロプス並みに強くても一体だけなら倒せる相手だ、そのサイクロプスを倒した実績もある。

「いくぞ」

「おウ」

 駆け出した先でバンパイアロード? レディ? に『風蛇』の拘束が襲い掛かる。

 おっさん形態が噛み千切るように解除していたが、美女になってからは頭を振るしぐさだけで解除されて行く。

 それでもニアの『風蛇』は一つや二つじゃない、首から上を包帯でぐるぐる巻きにするように拘束していく。

「鬱陶しいね」

 バッサバッサと頭を振って拘束を振りほどいていくがすべてを解除することはできていない。

 ニアの方もバンパイアロードに注力しているので、門で拘束していたゾンビが解放されてしまった。

 ゾンビの方は足が遅いので今は構わないだろう。


 バンパイアロードに攻撃が届くその距離までおれが近づくとさすがに首を振るのをやめておれを睨みつける。

「人族風情が!」

 盾の上からたたきつけるような攻撃。

 槍の間合いなのに腕と爪が伸びてハンマーで殴られたような衝撃を受ける。


「ぐっ」

 ダメージというほどのものは受けていないのにごっそりと何かが削り取られたような感覚に襲われる。

 とっさに一歩引くが足がもつれて膝をついてしまった。


「おまえもだ」

 後ろに忍び寄っていたキアもバンパイアロードに見つかって攻撃を受ける。

 ちゃんと武器で受けたように見えたのにキアもへたり込んでしまった。


「何をした?」

 おれの問いにバンパイアロードは両手で拘束をちぎり取って近づいてくる。


「当然の権利だ、徴税だよ」

 牙ののぞく唇から舌をちろりと出してあざ笑うバンパイアロード。


 何かを奪われた? 吸い取られた? バンパイアロードってことはエナジードレインされたのか?

 おれの知ってるバンパイアロードは3レベルか4レベルくらいの経験値を吸い取る化け物だ。

 こいつもそうなのか?

 まずい、これ以上は受けられない。

 弱体化だけでもやばいのに、吸収してるってころは相手の強化にもなっているかもしれない。


 槍にまとっていた『光の槍』を打ち出してバンパイアロードの接近を阻む。

 大した足止めにはならないが、待機中の魔法を発動したことで新しく魔法が使える。

 防御重視だ、回避できるような攻撃じゃない。

 かといって盾で受ければ貫通してレベルを吸われる。

 なら防御にバフをかけねば・・・『光の盾』?

 槍にまとわせていた『光の槍』を盾にまとわせる。

 本来の使い方ではないが、元々槍にまとわせるのも例外的な使い方だった。

 その慣れがあったこともあって即興的な『光の盾』は成功した。


 バシッと再び攻撃を受けるが今度はしっかりと受け止めてエナジードレインされた様子もない。

「む、生意気な」

 バンパイアロードは不満げだがこちらとしても攻撃手段を失ってしまった。

 魔法もかかってない店売りの槍でダメージなど与えられない、避ける事さえしないのではないだろうか。

 それでもけん制のために突き入れてみると大げさなほどにバンパイアロードは回避した。


「なんだ?」

「忌々しい人族め」

 バンパイアロードが毒づくとそのすきをついたようにニアの『風蛇』が彼女の顔や手足に絡みつく。

「ひっ」

 ダメージは期待できないが動きの止まったバンパイアロードの体に槍をつきまくる。


「あっああん」

 戦闘中とは思えない艶めいた声がバンパイアロードから漏れる。

 なにやってんだこいつ?

 

 心当たりと言えばおれのスキルの『性的挑発』。

 非常に不本意だが挑発スキルの一種として有効化している。

 おまけに『光の槍』を纏ってないただの槍はダメージとして通らない分、指でつついているような刺激を与えているのだろうか?


「いいゾ、突きまくレー」

 復帰してきたキアがバンパイアロードの後ろにせまる。

 命にかかわるからおれも必死だけど、やりたくてやってるわけじゃないからな。

 

 ニアの魔法とおれの攻撃で隙を見せたバンパイアロードはキアの剣にザクザクと切り刻まれる。

 キアの武器も魔法の武器というわけではないがバンパイアロードの方も通常武器からの完全防御ではなく強い軽減だったようで、キアの700倍攻撃にかかれば無傷ではいられない。


 事実体を抱えるようにしたバンパイアロードは足先から霧化していっている。

 消滅するのか退却するのかはわからないが、能動的な霧化とは違ってダメージによる不本意な変化のように感じる。


「おのれ」

 胴体に攻撃するのが申し訳なくなって手足や首から上に攻撃を散らしていたのだが、それでも反応はあるし、蚊に刺されたような赤い跡がキスマークのようにも見える。


 バンパイアロードの猛攻は『光の盾』を纏った盾で防ぎ切り、おれはそれ以上被弾することはなかった。

 おれに攻撃が集中したため、キアの攻撃も的確に入り続け腰までじわじわと霧化していたバンパイアロードは腰を越えたとたんに一気に霧化して消えてしまった。


「やったカ?」

「いや、まだだ、ってうわあ」

 いつの間にか門からあふれ出したゾンビたちが近づいていてあわてて館の中に駆け込む。

 壊れかけの扉の前を瓦礫でふさいでバリケードにした後で気付いた。

「ゾンビなら倒した方が早かったか?」

 数は多いが道を切り開く分だけ倒して、門の外まで強行突破はできただろう。


「彼女は放置ですか?」

 ニアの言うようにバンパイアロードは生きているだろう。いやアンデッドだから存在してるとかか。

 おれたちに恨みを残した高レベルのバンパイアロード、放置するには危険だ。

 弱っているうちに滅ぼすか、降参させて和解しておきたい。


「そうだな、この館にいるはずだ、探そう」

「はい」

「クゥーン」

 探索を決めたがキアが具合が悪そうだ。

「どうした?」

「具合が悪いナ」

 さっきバンパイアロードの攻撃を受けた時にうずくまっていたな。


「ステータスはどうだ?」

 キアに確認を勧めておれも自分のステータスを見る。


『遊佐 蕗 魔法使い

レベル 178-4=174

HP 238-4=234

MP 594-12=582

攻撃 208-4=204

防御 208-4=204

知性 386-8=378

精神 386-8=378

敏捷 208-4=204

SP 70-4=66

EXP 88894-2000=86894

NEXT 87000

スキル(ー)

水魔法 -3

風魔法 -3

氷魔法 -3

雷魔法 -3

光魔法 4

闇魔法 -3

所有経験値増加 2-1

嗅覚強化 2

鑑定

収納

索敵 2

隠密 2

槍術 3

盾術(性的挑発)2

未収得スキル(+)』


 うわあ、ごっそりやられてる。

 2000抜かれて4レベルのマイナスか、ステータスも軒並み下がってるし治療して治るものでもないんだろうな。


「あぁぁー、うわああン」

 キアから絶望的な声が聞こえる、キアもエナジードレインを食らってレベルが下がったのだろう。


『キア 剣士

レベル 136-4=132

HP 468-12=456

MP 196-4=192

攻撃 302-8=294

防御 302-8=294

知性 166-4=162

精神 166-4=162

敏捷 166-4=162

SP 22-4=18

EXP 67538-2000=65538

NEXT 66000

スキル(+)』


 数値は同じ4レベル分。

 バンパイアたちを倒した経験値が入っていないのは、まだ戦闘が継続しているってことなんだろう。

「やってられんな」

 1レベル上げるのにどれだけかかると思ってるんだよ!(おれたちは除く)

 人によっては一撃食らっただけで1年の努力が台無し。

 しかもあれは通常攻撃だ、エナジードレインは盾を貫通してレベルを吸ってくる。

 戦闘が長引けば食らう攻撃は100回や200回にも及ぶだろう。

 『光の盾』がなければおれだって・・・

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