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19日目の実戦訓練

7月分一つ目

 朝食をとって街を出る。

 依頼を受けたのはオーガだ、そこそこ近場で2体分。

 サイクロプスを倒したおれたちが苦戦するとも思えなかったので時間が余った時のために2体分受けておいた。

 当然同時に相手するわけではない。


「物足りないナ」

 前回のオーガ戦から『2刀4爪1牙流』の7倍攻撃を覚えての再戦だ。おれから見ても勝負になりそうもない。


「盾と槍の訓練もしたいから倒さない程度に長引かせてくれ」

 槍のスキルレベルは2、倒すことはできないにしても気を引くぐらいにはならないとタンクとしての役割が全く果たせない。


 一体目のオーガを見つけたので物陰から近寄る。

 全力で相手をするなら、不意打ちを仕掛けるのはキアだけでおれとニアは遠くから魔法を撃ち込むのがいい。

 今回はおれが槍と盾の訓練をしたいので、キアには倒さないように、ニアには完全に拘束しないように言ってある。


 絶好の位置に近づいたおれはオーガに不意打ちを仕掛ける。

 後ろから首を狙った全力の打ち込み。

 腕がしびれるような反動に手ごたえを感じたのだが、オーガにとってはおれの腕のしびれが相打ちになる程度にしか衝撃を与えられなかったようだ。


「無傷ではないけど、この程度かよ」

 オーガの首の後ろからは皮がむけて血がにじみ出してはいるが、吹き出すほどには出血していない。

 これだけ条件を揃えてこの程度だと真正面から戦っても全く歯が立たないだろう。


「グガアアア」

 向かって来たオーガを槍で迎え撃つ。

 だが腕の一振りで払いのけるとあっという間に接近されてしまった。

 近づかれると長柄の槍は防御には向かない、近づかせないための槍なんだけど格下が槍を持っても何の障害にもならないってことか。


「くそっ」

 それでも盾だけで何とかしのげているのはニアの拘束魔法がオーガの片手片足を封じているからだろう。

 やはり100レベルクラスの敵と戦うにはスキルポイントを100ぐらい突っ込まないと役に立たないのか。


 不自由な体制から繰り出されるオーガの攻撃を防ぎ続ける。

 槍が間合いを外しているので盾だけに集中することになる。

 受け止めるだけでは衝撃が貫通してくるので、攻撃にあわせて盾をぶち当てていく方が守りやすい。

 タイミングがぴったり決まった時にはオーガのこぶしにダメージを与えた上に、一瞬硬直させることもできるようだ。


「そろそろ殴っていいカ?」

 頃合いを見計らってキアが声をかけてくる。


「いいぞ、倒さない程度に頼む」

 今のキアの攻撃力なら背後から渾身の一撃を決めれば倒してしまいかねない。

 敵がキアの方を向いた時の戦い方もやっておきたいおれとしてはそれは困る。


 ザンとキアが切りつけオーガの膝の裏から血が噴き出す。

 おれが攻撃した時は皮一枚が精いっぱいだったのにキアの攻撃は肉をえぐって骨まで届きそうだ。


 当然脅威度が全然違うため、おれなどいなかったようにキアの方に向き直る。

 キアの相手をしている間はおれが攻撃する番だ、すでに傷ついている膝の裏を狙おうとしたが怪我をした足では体を支え切れないのかオーガはひざをついてしまう。


 頭が低くなったので攻撃して見るがおれの攻撃など対処する価値なしとばかりに無視される。

 戦闘中の防御力は不意打ちを仕掛けた時とは比べ物にならない。

「ダメか」

 ここまで無視されるなら槍なんか捨ててしまって魔法でも撃ち込んでやろうかと思い始めた時、力んで手元の狂った槍がオーガの尻に吸い込まれた。


 ギロッとこちらを向くオーガ。

 キアを攻めあぐねていることと、相対してからはキアが攻撃しなくなったこともあってやっと気を引くことができたようだ。


 こちらに向き直るオーガにまた盾を使った防御で耐え忍ぶ。

 防御時にほとんど役に立たなくなった槍を放り捨てて片手を空ける。

 防御に余裕が出てきた頃合いで光魔法の『光の槍』を呼び出して射出前のままオーガに突き入れた。


 バシッと有効打が決まりオーガの体にやけど跡を残す。

「使える、これなら戦えるのか?」

 槍にしては短めで突きだけでなく薙ぎ払いにも攻撃力が乗っているようで剣のようにも使える。

 攻撃を受け止めることはできないので防御には使えないが、そこは盾があるので心配ない。


「キア、そろそろいいぞ」

 おれの合図にオーガの後ろに飛び上がったキアが恐ろしい殺気を放つ。

 硬直しつつ恐怖を顔に浮かべたオーガが振り返ると、その首は体を離れ回転しながら打ちあがった。

 遅れて血が噴き出し硬直して立ったままのオーガの体を赤く濡らした。


 何もかもが一瞬のうちに起こったので、オーガの首がドサッと地面に落ちるまでおれまで硬直してしまった。

 血抜きは解体業者に任せるので早々に収納してしまい、その場で次のオーガに行くかを決める。


「全然いけるゾ」

「時間も余裕ありますね」

 体力気力共に十分残っている。

 次に行くのは決定として、その前に少し作戦会議だ。


「初撃はキアがやった方がいいな」

 今回はおれの練習のために長引かせたが不意打ちをするのがキアだったらその場で終わっていた。


 おれがタンクの役割をするのもその初撃で終わらない場合の保険だ。

 キアがてこずるような相手だとおれができることはあまりないのだが。


「槍が全然脅威にならないのが痛かった」

 ほぼ無視されていた、後半は調子よかったから次は最初から『光の槍』を手に持って戦うか。

 放り出した槍を拾って収納にしまう。

 しまう前に穂先を地面にこすりつけて返り血ならぬ返りグソを拭っておく。


「盾は何とか使えていたかな、タイミングよくはじくと格上相手にも負けない防御力があった」

 スキルポイントを10振っただけでこれなら全然元は取れる。

 もう90ポイントを振ってスキルレベルを3にするのもありだろう。


 盾役に手ごたえを感じステータス画面の盾スキルを見ていたらスキルレベルの後ろにちょんと点がついている。

 ちょうど画面にゴミが付いたような点で実体化していないことも忘れてそれを触る。

 するとたたまれていた文字が開かれる。

「スキルか?」

 剣術を使っていたころには覚えられなかったスキルが盾を持って一日で覚えてしまった。

 もしかしたら剣術でも覚えていたのに点に気が付かなかったのかもしれない。


 表示されたスキルは『性的挑発』

「なんじゃこりゃ」

 心当たりがあると言えばオーガの尻を槍で突いた時。

 さすがに痛かったんだろうと思っていたが性的に反応していたのか? そんなばかな。


「わかるゾ」

 わかるなバカ。


「うちも、何と言いますかリーダーには引き付けるものがあると前から思っていました」

 ニアお前もか。

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