18日目の再編成
6月分 1つ目
ギルド長がタカオたちを指名手配すると息まいていたのでそちらは冒険者ギルドに任せておれたちは依頼を物色するために掲示板の方に戻った。
「休みにしてもよかったのに」
「こんな気持ちで休んでも落ち着きません」
「取り返したいゾ」
レベルを取り戻したいなら一日休んだとしても全然取り戻せるけど、それでは気が収まらないようだ。
ではあるが、おれは休みたいので何かしら用事を作って休みたい。
「とは言ってもこの辺りではサイクロプス以上の敵はいないし同じ敵を倒しても初回特典の経験値はもらえないから取り戻すことはできないだろ?」
サイクロプスやオーガを倒した時のレベルアップは初回特典の経験値があったからだったし、今倒してもあまりうまみはないだろう。
「吸血鬼は行かないんですか?」
「吸血鬼かー」
サイクロプスよりは討伐難度が低いとは言うけれど、それはバランスの取れたパーティーにとってということでおれたちみたいな少人数の変則パーティーには当てはまらない。
「吸血鬼は眷属を従えてるらしいから少人数のおれたちには向いてないんじゃないか?」
「そう、ですね。それでパーティーメンバーを探してたのですものね」
昨日の今日で新しいパーティーメンバーを探す気にもなれない。
今回が最悪だっただけにしばらくの間他人を疑ってしまうだろう。
「ボクがんばるゾ」
「うん、キアはいつも頑張ってるよ。でも前衛一人じゃ限界もあるだろ」
キアのようなアタッカー兼避けタンクじゃなくて挑発スキル持ちの固いタンクがいないと安定しないんだけど。
「役割的にはおれなのか?」
キアの攻撃力が爆上がりしたからおれの光魔法は絶対に必要というわけではなくなった。
3人パーティーなら前衛は2人いた方がバランスはいい。
とはいっても・・・
「ちょ、ちょっと保留ね」
たしかに光魔法は単体攻撃しかなくて集団戦では弱いけど、吸血鬼相手だと弱点を突いた特攻攻撃になりそうなこともあってスキルをリセットするのもったいない。
どうしても人数不足がネックになってくるのだが、信用できるメンバーを探すのもまた難しいというジレンマに陥っている。
「うち達みたいに従魔契約で縛ってしまえばよいのでは?」
亜人の立場上そうなってしまうのだが、あまり人聞きの悪いことは言わないで欲しい。
「ボクがもう一人いればいいのカ?」
「そうだな、キアほど強くなくても前衛がもう一人いると安定するかな」
3人というのはパーティーとして最低限の人数を満たしていない気がする。
足止めのためには前衛は2人以上欲しいし補助や火力として後衛も一人じゃ足りない。
「うちが頑張りますよ?」
そうだった、補助は間に合ってるんだった。
ニアが魔法を10倍撃てるから後衛の援護は足りていると言えば足りている。
「おれは前衛の方がいいのかもな」
後衛の補助も前衛の攻撃力も足りている。
あと欲しいのは前衛のタンク、贅沢を言うなら物理攻撃が効かない敵のために魔法攻撃力があると完璧だ。
今は必要なタンクが不足していて贅沢な魔法攻撃が余ってるという感じか。
「それと範囲攻撃魔法があるといいな」
大勢を相手にした時にちまちま一体づつ倒すのも時間がかかる。
これも贅沢と言えば贅沢なんだけど。
おれがこの先の方針を話していると、キアはうんうんと頷いているのだがニアは次第にうなだれていった。
「どうした?」
「うちがふがいないばかりに・・・申し訳ありません」
なに? 自分のせいだと思っていたの? そんなわけないのに。
「ニアに不満があるわけじゃないよ。10人分頑張ってくれてるじゃないか」
誰が悪いとか言った訳じゃない、人数だけの問題だから。
むしろおれ以外は人数分以上に働いている。
「すみません、この環境に甘えてしまいました。うちは誰が来ても平気です」
甘えか、たぶん他の誰かがパーティーに参加したら自分が従魔の立場に戻ってしまうと思っているのか。
そんなつもりはないと言っても、街中では建前上従魔扱いをしなければいけないし、新しく参加した人がそれをうまくやれるかどうかというのはやってみないとわからない。
直近の2人は大外れだったわけだし。
「新しいメンバーは慎重に考える。その時はニアたちの意見も参考にするよ」
3人がかりで見極めれば表裏のある相手でも見破ってくれるだろう。
それまでは3人パーティーで基本的に大人数を相手にしないようにすればいいだろう。
「まかせロ。身辺調査してやるゾ」
キアが探偵みたいな事を言っている。
そうだな、その場でうそを見抜けなくてもおれたちと別れた後に何を話しているかわかればその人の裏もわかるだろう。
問題はそんな心配をしなくても、おれたちと組みたがる人があまりいないということか。
「その時は頼むよ」
パーティーはしばらく増強できそうもないから依頼票の中で目に付いたオーガ討伐を受付に持って行く。
他のサイクロプスはちょっと距離が遠くて日をまたぐことになりそうなのでオーガになった。
受付で受注を済ませて冒険者ギルドを出る。
つい依頼を受けてしまったが、どうしても行きたいわけじゃない。
経験値を盗まれた報告と共同パーティーの解除に来ただけだったがいつもの癖で依頼を受けてしまった。
「今日は休みでもいいけどどうする?」
「討伐行きたいゾ」
「取り戻しましょう」
二人は相変わらずやる気だ、休みにしたいので別の用事を提案する。
「討伐に行く前に武器屋に寄るよ」
「ア、そうだった」
キアの武器がぼろぼろになっていたので修復のため武器屋にあずけていた。
普段ならその場でさらっと研いで終わりだが、サイクロプスの骨がよっぽど固かったのか簡単には治らないので武器屋にあずけて、キアは代わりの剣を借りているのだった。
「昨日の今日ですしまだ治ってないのでは?」
「うん、キアの剣はまだだろうけど、おれの装備を見ておきたいんだ」
「リーダーのカ?」
武器屋まで来て探したのは武器ではなく盾。
盾は防具だが手に持つこともあって武器屋でも扱っている。
扱ってはいるが片隅に追いやられている、なぜかというと盾のスキルを覚えるにはスキルがない状態で盾を使い続けないといけなくて、スキル至上主義のこの世界ではスキルを持っていないものを使いたがらないということで、導入に消極的な人が多いのだ。
実際剣スキルがあればある程度護身にはなるし、盾スキルを覚えるためにはスキルポイントが10ポイント必要なことも使用者を減らしている原因だ。
おれは木製の盾に縁が金属で補強されたものを選んだ。
そこそこ頑丈にするために結構重くなっているので、これも不人気の理由だろう。
武器屋に200エルを払って手に入れた盾を背負う。
装備していると両手が塞がるので魔法が使えなくなるが、使いたくなったら後ろに下がって盾を外せばいいだろう。
盾に10ポイント使うとして武器はどうしよう。
右手を開けて魔法と盾の戦闘スタイルにすることもできるが、前線に立つのに右手に何も持たないのはなかなかに心細い。
その上盾にスキルポイントを振るためには武器のスキルレベルを2まで上げて盾のスキルを有効化しなければいけない。
魔法における基本魔法と上位魔法のような関係だ。




