17日目の顔合わせ
5月分1話目
「足元悪いな」
サイクロプスとキアが戦っているところまでたどり着いたはいいが、サイクロプスが暴れたせいで倒木が積み重なっていて戦闘に参加するには迂回するかよじ登らなければいけない。
「すごい」
倒木に足をかけて頭だけ上からのぞかせるとサイクロプスとキアの戦闘が見える。
『2刀4爪1牙流』の戦い方を見るのはこれが初めてだったが、忙しなく7回攻撃するのが7倍の攻撃力だと思っていたのに、実際に見るのはそれとはかけ離れていた。
サイクロプスの足はズタズタ、跪いて倒木を振り回している右手は弱弱しく、左手は肉をごっそりそがれてぶら下がっている。
戦況を目の当たりにする前に「援護に来たぞ」とか言ってしまったがその必要もないようだ。
「すごい」
ニアが同じ言葉で嘆息する。
キアの手に入れた『2刀4爪1牙流』の攻撃力7倍というのは手数が増えるものだと思っていたのだが、そんなものじゃなかった。
普段通りに戦いながら両手両足、口と武器にオーラが集まっていく。
集まり切ったオーラはその部位での攻撃に使われるだけではなく、どこからの攻撃でも7か所からのオーラを束ねて叩きつけることができるようだ。
防御力の高い格上との戦闘において1倍の攻撃を7回あてるより7倍の攻撃を1回あてた方が防御力を貫きやすい。
キアの実力は単純に計算しても700レベルに相当すると言ってもいいんじゃないだろうか?
(ますますおれの立場がなくなっていく)
ニアの魔法使い10人分というのもたいがいなものだが、キアの攻撃力7倍はそれをも上回る。
サイクロプスと同等レベルでありながらはるかに討伐難易度の高いトロールとも戦えるわけだ。
トロールは再生能力が高く、同レベル帯の冒険者がチクチクダメージを与えても回復の方が上回り、いつまでたっても倒せないことになる。
それを倒せるようになるのだから単純に7倍というのは7人分以上で換算されるわけだ。
『光の槍』
サイクロプスは目が見えないままキアの相手をするのに手いっぱい、そこを狙い打ったおれの魔法が閉じたままの目を貫通してサイクロプスの頭を内側から破壊する。
力を失い背中から倒れるサイクロプス。
膝立ちから倒れただけなのに軽く地面が震えるほどの重量感だ。
「やっタ」
キアが胸の前に握りこぶしを揃えてぴょんぴょんと跳ねている。
両側に飛び出した剣が羽のようだ。
剣は血まみれで先端が折れている、刃こぼれもすごいことになっているだろう。
「やりましたね」
ニアも感心している、戦闘前の緊張感が嘘のように気が抜けた声だ。
オーガで100レベルクラスの強さを実感したところに2倍以上の強さの敵と戦うプレッシャーがあったのだろう。
サイクロプスに近づくとあらためて感じる、すごい巨体だ。
蹲っていてもおれの背よりも高いし、ちょっとした丘みたいなものだ。
「こんなもの収納できるのか?」
解体するにもえらい手間がかかるぞ。
ニアの方を見ると汚れを払い落したキアをよしよしして労ってる。
犬みたいでいいな、そういうのがいいんだよ。
「試してみたらいかがですか?」
そうだな、収納してみてダメならまた考えよう。
結果何の抵抗もなく収納できた。
「入り口もすごいが容量もとんでもないことになってるな」
スキルポイント1で取れるスキルとは思えない。
「収納できたのですね」
「すごいナ」
収納してみることを勧めていたニアが驚いた顔をしている、キアも目を見張っているから一般的な収納スキルはもっと常識的なのか?
「さすがリーダーです」
自信を無くしかけていたところなので褒められるのが気持ちいい。
キアたちがおれを見捨てることはないだろうとは思うが、おれも戦力として貢献しないとな。
戦闘時間が短かったので余裕をもって街に帰り、新しいメンバー候補との顔合わせをすることができた。
早めに冒険者ギルドに行ってサイクロプスの納品も済んでいる。
素材の買取もいれて金額としては約4千万円。経験値は5500も貰った。
この報酬の多さは少人数ならではのうまみだな。
『遊佐 蕗 魔法使い
レベル 141+11=152
HP 201+11=212
MP 483+33=516
攻撃 171+11=182
防御 171+11=182
知性 312+22=334
精神 312+22=334
敏捷 171+11=182
SP 243+11=254
EXP 70208+5500=75708
『ニア 術師
レベル 112+11=123
HP 172+11=183
MP 396+33=429
攻撃 142+11=153
防御 142+11=153
知性 254+22=276
精神 254+22=276
敏捷 142+11=153
SP 37+11=48
EXP 55682+5610=61292
『キア 剣士
レベル 124+11=135
HP 432+33=465
MP 184+11=195
攻撃 278+22=300
防御 278+22=300
知性 154+11=165
精神 154+11=165
敏捷 154+11=165
SP 10+11=21
EXP 61774+5580=67354
「順調だな」
独り言のつもりだったが後ろにいたギルドの職員さんに聞かれてしまっていた。
「はい、素晴らしいです」
ニコニコ笑って顔の横で組んだ両手がかわいいが、どこか商人のような狡猾さも感じてしまう。
「普通ならこの街でオーガクラスを狩り続けて、レベルを上げた上でサイクロプスクラスに挑むのですが、フキさんたちは一日で駆け抜けてしまいましたね」
職員さんは申し訳なさそうに続ける。
「今日の面談ですけど、フキさんたちがサイクロプスを倒すレベルだとしたら相手のレベルが低すぎることになりますね」
合同パーティーを組む相手だな、吸血鬼を相手にパーティーが半壊したという。
「構いませんよ、約束したことですし。
吸血鬼も倒したことがないので、もう少しこの街にいます」
吸血鬼はパーティーを組むことになる相手にとっても因縁の相手だ、敵討ちというわけではないが倒しておきたいだろう。
「よう、アンタらが共同パーティーを組む相手か、っておまえ遊佐か?」
面談で引き合わされたのは知った顔、元クラスメイトだった。
高尾と増見、おれとの交流はないが顔は覚えている。
不良っぽいものにあこがれているような会話をしていたような気がする。
「お前は足手まといだったって聞いたが、そうかそういうことか」
大した付き合いもないのに初手から見下してきた、やっぱり異世界転生は本性が出るな。
おれを一瞥した高尾はニアの事をじろじろと嘗め回すように見ている、おれが足手まといだったのに高レベルの街まで来ているのはニアたちのおかげだと思っているようだ。
・・・実際そうではあるけれど。
嫌な感じだな。
「共同パーティーの話だけどなかったことにしてくれないか?
ちょっと聞いていた話と違うようだし」
吸血鬼相手にパーティーが壊滅して路頭に迷いかけているものだと思っていたが随分と元気そうだ。
なくしたパーティーメンバーを気にかけている様子もない。
「おいおい、ふざけたこと言うなよもう契約は済んでるんだぞ」
何の話だ?
ギルド職員に尋ねると共同パーティーでの討伐依頼をすでに受けているとのことだった。
おれは聞いてないぞ?
さっき構わないと言ったけど、それは話を聞くことに対してだからな。
「あちらのタカオさんが共同パーティーの代表として受注したんです、フキさんに話は通してあるって聞いたんですけど」
初顔合わせなんだけど。
結果的に顔見知りだから余計に話がややこしくなっている。
「聞いてませんよ」
「あら」
ギルド職員はタカオの方に顔を向け尋ねるように首をかしげる。
「なんだよ! どうせ行くことになるんだから構わねえだろ」
「それが行かないことになりそうなのですが」
「いかねえならおれたちだけで行くんだよ!」
「タカオさんたちがフルメンバーで失敗した吸血鬼討伐ですよ、許可できるわけないじゃないですか」
タカオとギルド職員がもめ始めた。
それにしても、自分たちが壊滅した吸血鬼討伐を急造パーティーで攻略しようとしてたのか。
「おれたちは帰りますね」
「はあ? なめた事を言ってんじゃねえぞ!」
うるさいなあ、異世界に転移すると頭がおかしくなるのは結構普通にある事なのか?
全能感を得て周りの人間に対する気づかいがなくなる。
あいつにとってはこの世界の住人はゲームのNPCくらいにしか見えていないのだろう。




