17日目にサイクロプス戦
4月分、2話目、ここまで
SPは243ある。
属性の大弱点は魔法でカバーできるから剣術を取り直すこともできるのだが・・・
「槍術って使い勝手はどうなんだろう?」
間合いを取れるから中衛と言った感じで守り気味に前に出られる。
「冒険者には少ないようです、集団戦に強いので軍などでは重宝されていますね」
「そうなんだ」
長柄の取り回しが狭い場所で使いにくいとかだろうか。
「やっぱり剣がいいのかな、斧も間合いが近すぎて危なそうだもんな」
「斧は強いけど遅くなるナ」
遅いと防御にも使えないし、よっぽど鎧で防御を固めないとな。
おれには合ってないか、タンクをするなら体格ももっとでかくないと。
今の光魔法は結構火力出てるから、わざわざ前に出るのも効率が悪い。
「前衛だけど今はキアに任せちゃっていいか?」
「そのつもりだゾ」
そのうちパーティーメンバーも増やすからそれまで頼むな。
「足止めでしたらうちも役に立ちますから」
「うん、そうだね」
3人パーティーで一見危うそうにも見えるけど、ニアの魔法が10人分だと考えると12人パーティーだとも言える。
『風蛇』ばかりを使う魔法使いが10人といういびつなバランスのパーティーだ。
「今日もオーガか同じくらいの強さの魔物を討伐でいいか?」
「はい、もちろん」
「楽しみだゾ」
移動も必要なくなったので時間も余裕がある、冒険者ギルドでゆっくり依頼を探してから行くことにしよう。
おれは朝の日課である光魔法の『耐性補助』と『感謝』を自分にかける。
バフと言えば土魔法だがそっちならパーティー全体にかけられるのだろうか?
かけられたとしても燃費が悪くて、戦闘時にしか使えないんだろうな。
冒険者ギルドまで行き依頼票の一覧を見る。
「オーガにサイクロプス、吸血鬼か。
どれもこれも100レベル以上推奨なんだな」
サイクロプスなどはその上で20人以上を推奨とある、おれたちが倒したオーガの2倍程度の強さということなんだろうか。
「一日ががりになるようですね」
探索を含めてではなく戦闘を始めてから一日かかるってことか。
絶え間ない攻撃で回復の隙を与えず、底なしのスタミナを20人がかりの攻撃で削りつくさないと勝ち目がないってことだ。
「でもおれたちなら?」
スキルポイントを200もつぎ込んだ光魔法は100レベルの魔法使い2人分以上。
ニアは10人分の『風蛇』で多重的に拘束できるし。
キアの『2刀4爪1牙流』は戦士7人分にも相当する。
3人だけで20人パーティーに匹敵するわけだ。
・・・2人の固有スキルずるくない?
支払ったスキルポイントと効果のバランスがとれていない。
おれがどれだけ苦労してスキルポイントをひねり出したと思ってるんだよ!
「ボクたちならいけるゾ」
「はい」
キアは新しいスキルを試したくてうずうずしているし、ニアも固有スキルを手に入れてからはずいぶんと自信がついたようだ。
こうなると固有スキルのないおれは少し焦る、戦力的に置いていかれないようにおれのレベルは二人より高めに保っておいた方がいいのだろうか。
オーガとサイクロプスの依頼票を見比べる。
依頼票の奪い合いをするような人気の依頼というわけでもないのだが、このくらいの大物になると一応依頼を先に受けておくのがマナーだと昨日教えてもらった。
依頼を受けずに討伐してしまうとその依頼を受けていたパーティーが困るのと、現場でかち合ってもめ事になるのを避けるためだ。
幸い依頼の期限は数週間あるし失敗やキャンセルした時のペナルティーも重いものではない。
「2つ受けておいて遭遇した方をやればいいだろ?」
二人に確認をとる、今日やらなかったほうは明日以降に回せばいい。
「さすがだゾ、リーダー」
「いいと思います」
なぜか感心された。
「これお願いします」
「はい、承ります。オーガにサイクロプス!? あの・・・オーガとは戦われたんですよね?」
依頼法を提出した受付の人は昨日と同じ人でおれたちがオーガを倒したことを知っている。
それでも驚くのか
「戦いましたよ」
「その時苦労しませんでした? それでもサイクロプスと戦うんですか?」
受付の人はおれたちがオーガを倒したときに3人パーティーだったことを知っているためにその驚きが出てしまっているのか。
「大丈夫です、戦力もアップしましたから」
オーガの時に比べればキアの固有スキルも取得しているしレベルも上がっている、一方的にやられる戦力差ではないはずだ。
「そうなんですか、それなら」
安心した様子で手続きをしてくれた受付の人はにっこりと笑って依頼票を返してくれる。
「どなたかを紹介する必要もなかったですね」
ん? 紹介してくれるの? パーティーメンバーを?
き、聞くだけ聞いてみようかな。
「あの、紹介ってどういうことをですか?」
「興味ありますか? 2人組のパーティーがメンバーを募集していましたのでどうかと思いまして」
人数もちょうどいい、パーティーメンバーになるのはまだ早いにしても合同パーティーとして依頼を一緒にこなすくらいなら考えてもいいのかもしれない。
「どんな人たちですか?」
「その人たちは7人でパーティーを組んでいたのですが、吸血鬼の討伐時にパーティーメンバーを5人失ってしまったんです」
「それはお気の毒に」
7人中5人もやられたのか、吸血鬼の強さはサイクロプスほどではないが眷属を従えているため一体でいることがない。
1パーティーで対応するのは荷が重いため複数パーティーによる討伐が推奨されている。
相手が多いとおれたちのパーティーは手が回らなくて壊滅するからな。
「話だけ聞かせてもらえますか?」
「そうですか! 今日の夕方にでも紹介できると思いますよ」
今はいないようだ、今日の所はおれたちだけで行くか。
「おまたせ」
受付を離れてニアたちの所に戻る。
「リーダー、パーティーメンバーを増やすのですか?」
「いや、最初は別パーティーとして共同の討伐をすることになるだろうな」
信用できる相手かを見極めないといけない。
でも、共有している秘密が大きすぎてうかつに信用することもできない。
パーティーメンバーとして迎え入れるのは当分先になりそうだ。
共同パーティーの顔合わせが夕方なので今日の討伐は急がないといけない、おれたちは街を出るとサイクロプスの生息地である山地へと向かう。
「見つけるのに時間がかかるようだったら切り上げて帰るからな」
「戦闘が始まっていたらどうするんダ?}
「それは・・・少し位遅刻してもいいか?」
約束があるのに討伐に出ているのもどうかとは思うが。
「よくはないでしょうがサイクロプスを討伐したのであれば許されるでしょうね」
「自慢できるゾ」
大人数で長時間かけるのが前提のサイクロプス討伐だ、半日終わらせたとなればおれたちのパーティーにも箔がつくだろう。
「サイクロプスの相手は初めてだからな、危なそうなら逃げるからな」
安全第一だ。
「わかってるゾ」
「もちろんです」
サイクロプスの生息地である山岳地帯までは自分の足で駆け足。
馬車に乗るより早く冒険者の体力のおかげで疲れもほとんど感じない。
少人数で軽装なのがその行軍を可能にしている。
「人数が増えたら移動も時間がかかるようになるだろうな」
「馬車は遅いゾ」
「乗り心地もよくありませんね」
増やそうとしているのが前衛のタンク職だから、鎧も金属製で走らせるわけにもいかない。
その上引き抜けるような相手だとしたらおれたちよりもレベルも低くなるだろう。
「育てるのも大変だぞ」
「秘密も守れませんといけませんね」
「いるのカ? そんなやつ」
考えれば考えるほどそんな都合のいい相手はいないことを思い知らされる。
ニアとキアほどの相手にはもうめぐり会えないかもしれないな。
山岳地帯に生息するサイクロプスはその巨体のため洞窟などに隠れることはできない。 活動している時間帯であれば木よりも高い位置にある頭がひょこっと出ているので遠くからでも場所がわかる。
「うわ、目があった」
こちらから見えるということは相手からも見えるわけで、サイクロプスの機嫌が悪ければ見つかった冒険者は戦うか逃げるかをすぐに決めなければならない。
「戦うつもりではいるけど、できれば奇襲とかかけたかったな」
「距離感が狂いますね、うちの魔法はまだ届かないです」
サイクロプスの巨体が木の間を縫い、バキバキと枝を折りながらこちらに進んでくる。 じゃまな木を押し込み根元からめりめりと折れていくのは怪獣映画を見ているような気分になる。
「いくゾ」
「待て待て、待ち構えよう」
キアも遠近感をなくしたようで、サイクロプスが近くに見えたのだろう、あわてて呼び止める。
「おれなら届くか?」
光魔法の『光の槍』は射程に限界を感じたことがない、遠くて目標が小さいと狙える気がしないのでそれが射程距離ということになるのだろう。
だが、目標がでかければその制限は延長される。
『光の槍』
木々の上からのぞいているサイクロプスの頭を狙う、当然目標は目だ。
一つ目が顔の真ん中にあるわけではなく通常の位置にあり、もう片方が初めから何もなかったようにのっぺりとしている。
標的は小さいがうまく当たれば相当に有利になるだろう。
だが、そううまくいくはずもなくひょいと頭を振っただけでよけられてしまった。
『光の槍』は目立ちすぎるから警戒されて当然なんだ。
なら、警戒させる。
「ニア、『光の槍』を避ける時、あいつは少しの間目をつぶっていた。
その時にまぶたを拘束できるか?」
「はい」
視覚を潰せれば接近するキアに有利になる、おれの『光の槍』も当たるようになるかもしれない。
メリメリと木をなぎ倒しながら近づいてくるサイクロプス。
「もういいカ?」
「ああ、あんまり離れすぎるなよ」
「近づきすぎてもいけませんよ」
もう出てもいだろうと飛び出す許可を求めるキア。
おれがキアの心配をすると、同時にニアがおれの心配をする。
ホントにいいチームだよ。
飛び出したキアは瞬く間に木の間を抜け見えなくなる、キアの到着にあわせてニアと目配せをし『光の槍』を撃ち込んだ。
さっきよりは中心よりに狙いを定めたので首を振ってかわすにも余計に動きがいる。
先ほどと同じように『光の槍』が通り過ぎる瞬間目をつぶったサイクロプスにニアの『風蛇』が襲い掛かった。
人ひとりを拘束できるだけの魔法が5つ、まぶただけを拘束するために使われる。
縫い付けられた様に固定されたまぶたはサイクロプスが指でかきむしってもびくともしない。
目を掻きむしりながらヴヴヴとうなっていたサイクロプスが突然グオーと叫び足元に手を振り回し始める。
木に隠れて見えないが、キアが足元までたどり着いて攻撃を加えたのか?
オーガ相手に薄皮一枚程度のダメージしか与えられなかったキアが格上のサイクロプスに痛撃を与えている。
足元まで来ていたらサイクロプスも気づいてはいただろうが取るに足らない相手と考えて無視したのがこの結果だ、腹立たしくてしょうがないだろう。
「こっちもおかわりだ」
『光の槍』をニアの『風蛇』に拘束されたままの左目にぶつける。
右目は元々ないからその呼び方でいいのかわからないが位置的には左側だ。
まぶたは焼けただれ、目にも直接ダメージが入る。
もう一回当てれば目を貫通して脳にまで届くだろう。
「もう一発」
足元ではキアがまた大けがを負わせ、立っていられなくなったサイクロプスは森の中に膝をつく。
「やりました」
ニアが喝采を上げる
「まだだ、近づくぞ」
木々に隠れてしまい遠距離からの援護ができない、今はキアが一人で相手をしているはずだ。
「拘束を外すなよ」
目を閉じさせたままなら一対一でもなんとかなるだろう。
「キア! すぐに行くから深追いするなよ」
大声を出して無茶をさせないようにする。
目の見えないサイクロプスは攻撃を待ち構えて反撃をしてくることもあり得る。
キアが両足を傷つけたから逃げ出すこともないだろう。
「遠巻きにしておれたちを待て!」
いい攻撃だったぞとほめてやりたいが大声ですることでもないだろう。
おれたちはキアのもとに急いだ。




