13日目の狩り
2月分 2つ目
なにも予定がなければ街の移動は一日で2つくらいは余裕だ。
十字路の交差点である大きな街を越えておれたちは敵が強くなる方向に足を進める。
一度キアが泣き笑いのような顔で戻ってきてどうしたのかと聞いたらステータスを開いてレベルを確認したのだと言っていた。
「ダメになってしまいそうダ」
今までのレベル上げの苦労とのギャップに感情がぐちゃぐちゃになるのだとニアも同情していた。
「連日は厳しいか? ニアも分担する?」
「な、何をですか?」
「キアが大変そうだからさ、7割の配分を4割に減らしておれも4割。
それで2割がニアってことで」
経験値再配分計画を少しずつ進めていく。
キアは固有スキルを取得するためにできるだけレベルを上げたいが、一気につぎ込むと精神的に負担になってしまう。
おれも一部受け持つようにするがそれをニアにも手伝ってほしいとお願いしてみた。
「キアを助けると思ってさ」
通行の邪魔にならないように道から少し外れて可視化したステータスウインドウを2人に見せる。
「ニアはいつも頑張ってくれてるよね」
8割負担を耐えきったニアなら2割くらいはいける、最終的には3割負担してもらうつもりだがキアがめげている今のタイミングは断りにくいはずだ。
「2割だけなら」
よし、言質を取った。
「ニアァ」
キアがニアに抱き着いて感謝を伝える。
負担が減った分スキルを習得するまでの期間は長くなるがしばらくは危険な戦闘などもないだろうからこのままでいいだろう。
2人に見えるように経験値配分の比率を4割4割2割に変更する。
今晩が楽しみだ。
「待てえぇ」
楽しみにされていたのはおれの方だった。
街を2つ越えてたどり着いた新しい街アットで宿をとったのだが、一度一線を越えた2人は遠慮なしにおれのベッドに入り込んできた。
狩りつくされるのか? おれは。
「おはようございます」
つやつやの声のニアに起こされる。
反対側ではキアがおれに乗り上げるように絡みついている。
一人用のベッドで無理やり3人入るから狭くてしょうがない。
「んんー、あるじすきィ」
寝ぼけた様子のキアはおれにしがみついていないとベッドから落ちてしまいそうだ。
「あら、うちの気持ちはわかってますよね?」
ニアもキアに対抗するように体を摺り寄せてくる。
昨夜はお楽しみでしたよ。
ニアがおれの事とエッチなことが大好きなのはよくわかっている。
頷いたおれはキアの体を転がしてニアにあずけ、空けた隙間からベッドの外に出る。
ダメになりそうなのはおれの方だよ。
「ステータス」
『遊佐 蕗 魔法使い
レベル 67+9=76
HP 127+9=136
MP 261+27=288
攻撃 97+9=106
防御 97+9=106
知性 164+18=182
精神 164+18=182
敏捷 97+9=106
SP 178+9=187
EXP 33440+4118=37558
NEXT 38000
スキル(+)』
堕落はしてもレベルは上がる。
罪悪感に押しつぶされないためには何かしらで体を動かすのが一番良さそうだ。
『ニア 術師
レベル 80+4=84
HP 140+4=144
MP 300+12=312
攻撃 110+4=114
防御 110+4=114
知性 190+8=198
精神 190+8=198
敏捷 110+4=114
SP 5+4=9
EXP 39540+2059=41599
NEXT 42000
スキル(+)』
2割負担でも4レベルも上がるようになってきたか、1割当たり2レベルってことなんだよな。
『キア 剣士
レベル 83+9=92
HP 309+27=336
MP 143+9=152
攻撃 196+18=214
防御 196+18=214
知性 113+9=122
精神 113+9=122
敏捷 113+9=122
SP 19+9=28
EXP 41399+4118=45517
NEXT 46000
スキル(+)』
キアの上がり方はおれと同じ9レベル。
目標であるスキルポイント50にはまだかかりそうだが、レベル100の方はもう手が届きそうだ。
おれがステータスを確認したことで二人も体を起こし背筋を伸ばす。
お互いに体を寄せ合って自分のステータスを確認しているようだ。
「ぅぁぁ」
4レベル上昇のニアにも多少堪えるものはあったようで、かすかにうめき声が聞こえる。
キアはパッと開いてぱっと閉じる。
SPの上昇分だけ確認して、現在のレベルからは目をそらす方針を続けるようだ。
お互いに抱きしめあったら落ち着きを取り戻して身支度を始めた。
「今日の予定も移動だけだったけど、途中で少し狩りもしようか?」
おれの言葉にキアが喜んだ顔を見せる。
猫が驚いた時のように目を丸くして耳がぴょこんと立ったように髪の毛がざわついた。
「やったァ」
「よろしいのですか」
「急ぎの旅でもないからね」
むしろ時間を経過させるのが目的だともいえる。
「敵の強さがちょうどいい所に行く途中だけど、少し弱めの所で新しいスキルを試してみた方がいいだろ」
数値的には標的10倍とか攻撃力700倍とか景気のいい数字が並んでいるけど、実戦でどれだけ使えるかの方が大事だったりするし。
「それはいいですね」
「今更オークかァ」
前向きなニアに対してキアはオークと戦うのには飽き飽きしている様子。
出会った時もキアの方がレベルが高かったから、レベルが上がりにくい状態で飽きる位にオークと戦ったのだろう。
オークもゴブリンと同じように常に討伐依頼が出ているような定番の魔物だから、わざわざ冒険者ギルドに寄って依頼を受けることもなく街の外に出た。
「とりあえず移動して次の街との中間で道をそれて魔物を探そうか」
「いいゾ」
狩りはするけど移動もする。
移動のみに集中すれば街2つ分くらいは進むが途中に狩りを挟むことで半日ぐらいを使うことができる。
元々街の近くでは狩りの効率も良くないので街から離れるものだし、出発した街と帰還する街が別になるだけのことだ。
「この辺がいいかナ」
「そうだな」
キアが言うならオークの匂いが近くに感じるのだろう。
『嗅覚強化』の魔法を使えばおれの方が鼻は効くが常時発動できるものでもないからこういう時はキアの鼻の良さがとても助かる。
「キアは良い子ですね」
おれが褒めるまでもなくニアがよしよしと頭をなでていた。
おれもまぜて、とは言えず2人の様子を見守る。
最初は喉を鳴らしていたキアもおれが見ているのに気づいて、もういいよとニアの手を離す。
「ボクが先行するゾ」
森に分け入るキア。次におれが続きニアもついてくる。




