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11日目の想定外

1月分 8つ目

「えーと、えーと」

 減少させるとしたら魔法使いから剣士になった時か。

 いや剣士はまずい、魔法関連を取りまくっているから剣士にしてしまうとスキルポイントの増加分で押しつぶされてしまう。


「だとすると無職か」

 無職かー。

 魔法使い+『MP増加』で260%。

 無職に戻して200%、あれ?

 『MP増加』を消して100%、あれあれ?


「だめじゃん」

 増加と減少の組み合わせでもダメ、ステータスとスキルの組み合わせじゃないとダメってことか。

 それもスキルで減少させなければいけない。

 キャラクター作成時ならばともかく、現状で任意のペナルティーを付けることはできないため、以前に考えたステータス上昇の抜け道はすでに塞がれていた。


「ぬか喜びだったか」

 ゲームシステムの抜け道を見つけて浮かれていたが、アホなのはおれだった。


 剣士と魔法使いを反復横跳びしてステータス値を稼ぐ計画は泡と消えた。

 ステータスが上昇するタイミングで直接ステータス値を上げれば少しは効果があるだろうが、30%程度ではそれほどありがたみがない。


「お待たせ、転職に行こうか」

 200ポイントは余らせたまま放置だ。

 歩き出したおれにニアとキアも首をかしげてついてくる。


「確かに1500エル受け取りました。この木札をもってあちらの係員の指示に従ってください」

 転職の神殿ではお金を払ったことで転職の許可をもらった。

 言われたとおりに係員について行くと神像の前に水晶玉が置かれており、その水晶玉に触りながら転職を願うと魔法使いに転職できると説明された。


「こうか」

 言われたとおりに水晶玉に触り魔法使いへの転職を願う。

 水晶玉に振れた指先から何かが吸い出されると同時に何かが注ぎ込まれる感覚がする。

 吸い出される感覚はすぐに止み、注ぎ込まれることが1分前後続いてその間水晶玉に貼り付いていた指が自然と離れた。


「指が離れたら転職が完了です。おめでとうございます、これから魔法使いとして頑張ってください」

 そんな係員の言葉に送られてニアたちの所に戻った。


「お疲れ様です」

「どうだっタ?」

「転職したよ、どうだったかはステータス見ないとな」

 神殿の壁際に椅子があったので2人を連れてそこで落ち着く。


「ステータス」


『遊佐 蕗 魔法使い

レベル 64

HP 135 → 126

MP 135 → 250

攻撃 74 → 94

防御 74 → 94

知性 74 → 156

精神 74 → 156

敏捷 74 → 94

ーーーーー』


「おお、上がってる」

 HPがちょっと下がってるけどMP、知性、精神は2倍以上。

 攻撃、防御、敏捷も20も上がっている。


「おめでとうございます」

「よかったナ」

 

「SPはと」


『SP 205+120=325』

 

 うん、光魔法の3レベル取得に200ポイント、個別の魔法を3レベルまで取ってまた200ポイントつぎ込んだので、スキルポイントが軽減される対象は400ポイント。

 そこから30%の割引が効いて120ポイントが返却されたわけだ。


 だけかと思ったら、遅れて表示されるSPに驚愕する。


『SP 205+120-150=175』


「うおっ!」

 なんだなんだ???

 増えた分以上にすげえ減ったぞ。

 物理職のスキルは全部外したはず。

「?? ! これか!」


『ーーーーーーーーーーー

水魔法 -3

風魔法 -3

氷魔法 -3

雷魔法 -3

光魔法 3

闇魔法 -3

ーーーーーーーーーー』


 魔法職のペナルティ。

 5属性分で500のスキルポイントをもらっていたが、これが魔法職に関連した増減を生んでいるのか?


 ためしに水魔法のペナルティを解消しようとすると、63ポイントでペナルティレベルを下げられるとある。

 さらにマイナス2レベルから0レベルまでに7ポイントを追加で消費すると考えると、70ポイントでペナルティが消える計算だ。


 ペナルティを消滅させるコストとして元々100ポイント必要だったものが70ポイントになってお得なんだけど、そのお得分が前払いさせられているってわけなんだろう。


「割と抜け道はふさがれているんだな」

 以前にシステムがガバガバでズルし放題かと思っていたが浅はかな考えだったようだ。


「それにしても危なかったな」

 『剣術』をリセットしてスキルポイントを確保していなかったらスキルポイントがマイナスになっている所だった。


 マイナスになってしまうと当然スキルリセットも使えなくなるからスキルの借金を返し終わるまで何をすることもできない。

 何もできないと言ってもスキルの編集に限ったことなので行動に制限がかかるわけではないのだが。


「ん? またリーダーが悪いことを考えている顔をしているゾ」

 ぎくっ、キアに指摘されたが借金というのはもしかしたら悪くないかもしれない。

 首が回らなくなって利息に押しつぶされるような借金は愚かだが、借りた金を有効利用できるのであればまっとうな経済活動だ。


 実際に多くのの企業は借金を前提にして動いている。


 スキルポイントを借金するタイミングは転職時。

 魔法スキルの比率が高いまま戦士になってスキルポイントをマイナスにする。

 そうすれば本来払うべきスキルポイントを前借した形で魔法が使える戦士になれるというわけだ。


「まあ、やらないけどな」

 利息はないものの、借金状態というのは精神衛生に悪い。


 結局得になるようなズルはできなかったが、それはそれとして転職したことは大幅な戦力アップだ。

 ステータスの知性が上がることで魔法の威力も上昇した。

 現状の攻撃魔法は威力が過剰なのですでにオーバーキルなんだけど弱いよりはいいだろう。

 光魔法の本質は自己バフなので『剣術』もまた取り直して、自衛のできる魔法使いになるのが今後の育成方向だろう。


 ニアがあり得ないくらい強くなって、同時に10体の敵を『風蛇』によって拘束できるようになった。

 攻撃魔法を取得したらまた1段階化けるのだろうけど、次の育成対象はキアだ。


 キアの固有スキル『2刀4爪1牙流』はスキルの説明によると攻撃力を7倍にするということだ。

 一見『剣術』のスキルレベル2にも劣るようにも見えるが、これは『剣術』との乗算が可能だ。


 『剣術』のスキルをレベル3で持っているキアはただでさえ攻撃力が100倍になっているので乗算することで700倍になる。


 おれがスキルポイント200もかけて取った『剣術』のスキルレベル4を楽々と越えていく。

 しかもまだ先があるのだ。


「そろそろ先を考える時が来たのかもな」

 この世界における目標、さらなる成長を考えるならもうオーク狩りや薬草摘みは卒業の段階だろう。


「リーダーは何かで名を遺す人物だと信じています」

「ついていくゾ」

 ニアの期待はさすがに重すぎるが、2人のリーダーとして恥ずかしくないくらいには強くならないとな。

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