11日目の急上昇
1月分 7つ目
「14レベルは腰が抜けるゾ」
可視化したステータスを覗き込んだキアが言う。
8割は多すぎたか、計算してちょうど11レベルになるようにしておけばよかった。
「レ、レベルも78ですよぉ」
ホントだおめでとう。
「ぶっちぎったナ」
言ってるキアも70だ、固有スキルを取るまでレベルを上げるなら100は超えるな。
「返します、返せないんですかぁ???」
それは無理だな。
「キアもおれもすぐに追いつくからその高みで待っていてくれよ」
足に縋りつくニアの頭をなでてなだめる。
14レベルはおれでも未知の領域だったな。
「配分を、経験値の割り振りの配分を今すぐ戻してください!」
ハッと気づいたようにおれの目を見て経験値の配分の見直しを求めるニア。
万が一ド忘れして今日の夜の分も経験値がつぎ込まれたら死んでしまうとでも思っているのだろうか。
「わかったよ」
可視化したステータス画面で経験値の配分を操作する。
ニアの8割を1割に戻し、その分をキアにつぎ込んで8割にする。
「エ?」
耳元から声がして振り向くと間近にキアの顔があった。
ニアに見えるように可視化してあるが当然キアにも見えるわけで。
「エ、エ、エ、アア、ボクもするんだよナ」
キアは大丈夫そうだと思っていたが結構動揺してるな、実は内面で心臓バクバクだったりするのだろうか。
「大丈夫か? 次かその次くらいでレベルアップ分が20を越えそうだけど」
「20! それだと、、、90!!」
「スキルを取るためだと100を越えますねぇ」
キアがあわてたことでそれを見たニアが落ち着いた、キアのレベルが100を超えることをニアも気づいたようだ。
「ひゃ、100!! ナ、なんで!?」
なんでと言われても、それだけスキルがスキルポイントを要求しているからだな。
あらためて思うがこの育成システム、バランスが悪すぎるよな。
スキルポイントの要求数が高すぎるし、一般の人たちのレベル上げが大変すぎる。
ゲームでいったらベータ版と言ってもいいくらいだ。
運営に報告しなくては。
「連日で20づつ上るのは負担が大きそうだな、スキルの取得は遅れるが7割にしておくか」
20レベルづつ上った場合、二日ではちょっと足りないからどの道三日はかかる。
だとしたら7割でも遅れると言うほどではないな。
「ナ、それナ!」
おれの腰にしがみついて頭をブンブン振って頷くキア。よっぽどそうして欲しいらしい。
キアにも見えるように経験値の配分をキアに7割、おれに2割にした。
それを見て安心したようにへたり込むキア、言っておくけど7割もたいがいなものだぞ。
「せっかくだしニアの固有スキル取ってみなよ。『無尾の狐』だっけ?」
「はい」
キアが動揺してくれたおかげで、ニアが落ち着いた。
ついに固有スキルのお披露目だ、スキルの説明欄には尾の数だけ魔法を同時に発動できるとあった。
最終的には『九尾の狐』とかになって同時に10の魔法を発動するのだろうが、そこまでの道のりは遠そうだ。
「取れました、あら、スキルの名前が変わるんですね『九尾の狐』になりました」
ニアが自分のステータス画面をポチポチと操作してスキルを取得する。
・・・九尾?
「九尾カ?」
キアも異常に気付いた、ニアがぼんやりしてるのは寝起きのせいか直前の動揺を引きずっているのか。
「おかしいですね、うちも一尾になるものとばかり・・・。九尾!?」
おれたちの予想も一尾になるとばかり思っていた。
『無尾の狐』の説明には尾の数だけ同時に魔法を行使可能とあったので、一尾づつ増えていって一回づつ魔法の行使数が増えるだろうと。
「待て待て、スキルの説明を読んでみようよ」
まさか術者含めて10回分ってことはないだろう、何らかの制限があるか威力が弱まったりするとかか?
『九尾の狐 2レベルまでの魔法を9回追加で行使することができる。追加する魔法は術者が使ったものと同じものに限るが、対象は個別に選べる』
「コレ」
キアもあきれてる、10回分だったよ。制限も現状何の関係もないし、むしろ別の魔法を使えた方がびっくりするよ。
「最終的に想定していた究極の形だったな」
「あら? このスキル、スキルレベルが上げられるようですよ」
これより上があるのかよ!
いやまあ、2レベルまでという制限が3レベルまでに上がったりするのだろう。
3レベルの魔法を10回行使?
3レベルになることで威力が100倍になるわけだから・・・合計1000倍?
剣術や魔法のレベルはスキルレベル3でスキルポイントを100消費して威力が100倍になる。
4レベルになったら1000倍かとも思っていたが、1,10,100ときて次の段階はは1000ではなく200だった。
さすがに1000というのは取得自体不可能だからな。
・・・不可能だからな。
「次のことは考えなくていい、やったなニア」
念願の固有スキルを手に入れたぞ。
「はい、嬉しいです。これでいつ死んでもいい」
死ぬな死ぬな。
「ニアァ」
キアもニアに抱き着いて喜びを伝える。
そばにいてニアが大変な思いでスキルポイントを貯めてきたことを見てきたからだろう、自分がスキルを得たかのように喜んでいる。
名前を呼んでいるだけなのに猫の鳴き声みたいだ、犬系なのに。
『ニア
SP 56-50=6
九尾の狐 』
「早速試し打ちに行くか、と言ってもこの辺りで狩りをしてもオークすらいないんだっけ」
拠点を移動するか?
狩りの効率だけではなくこの街からはできるだけ早く出ていきたい。
冒険者ギルドの賞金首ギルド部門では知らない盗賊におそわれて返り討ちにしたと証言したが、提出した足首を『鑑定』すれば身元も判明するし、被害者という立場ではあるもののおれがクラスメイトを殺したことが他の誰かにばれるかもしれない。
ただでさえ評判が最悪なのにこの上同級生殺しなんて噂されたら最悪だ。
ここの学園都市といくつか離れたところにある闘技場都市がクラスメイトのたまり場になっているらしいからそのあたりからは距離を取りたい。
「今日は移動日にしようか、拠点としてもこの街はあまり良くないし」
「よろしいのですか? 転職はなさらなくて」
「やっぱり剣士にするのカ?」
この街に来た目的が魔法使いの転職だったけど、大弱点を解消するためのスキルポイントは使っちゃったからな。
「スキルポイントは使っちゃったか・ら・・な・・・」
待てよ? スキルポイントを使用した比率は魔法使い系の方が多いのか?
『剣術』に200ポイント使ってるからまずこれが重たくなってマイナス60ポイント。
『光魔法』で200ポイント、魔法の習得にまた200ポイント。
大弱点が5属性×100ポイント。
合計900ポイントが30%軽くなるのであればプラス270ポイント戻ってくる?
「全然アリか?」
思った以上に魔法使い側の比重が高かった。
ここまで偏っているならもう魔法使いだろ。
思い切って『剣術』のスキルをリセットしてもいい?
『剣術』そのものは護身として1レベルくらい取り直してもいいけど、200ポイントもつぎ込んで4レベルにしたのはやりすぎだ。
「アリとは?」
「転職しておこうかな」
「エ」
気が変わった、転職しよう。
「そうと決まれば」
『SP 6-1+200=205
剣術 4-4=0』
あとで取りなおすが、魔法使いに『剣術』4レベルは過剰。
30%加算されて60ポイントも失ってしまう。
直前に考えたことをなぞりながらスキルリセットを実行。
入手した200ポイントをどうするかと言えば前に考えたことがある。
『MP増加』
以前に『MP増加を』ペナルティレベル2にしてスキルポイントを10取得したことがある。
スキルポイントに余裕ができた時にペナルティを解消したのだが、その時のMPがペナルティを付けた時の減少分とは違っていた。
1レベルの時に10%分で1MP減少。
なのにレベルが上がってからペナルティを解消したら6MPも増加していた。
その時のMPの10%だ。
つまり、このスキルは現在値しか見てないわけで、スキルリセットによるコストを許容さえすれば、ステータスが変化した時の差分をそのまま自分のものにできるわけで。
例えば無職時に『MP増加』3レベルで100%増加させて、魔法使いに転職。
その時魔法使いの職業補正でMPが30%増加、200%に30%を掛け合わせて元々から260%増加したMPになるわけだ。
そこから『MP増加』を外して・・・・
・・・
・・・
あれ? 元に戻ってるな。
元々の130%になるわけだから普通に魔法使いに転職した時と変わらない。
コストで払ったスキルリセット分だけ損してる。
「いやいや、前提が間違っているんだ」
一人で考えこみ始めたおれを前に、ニアとキアは温かい目で見守っている。
(また始まった)とか思ってるかもしれないけどそこは許してもらおう。
前回はペナルティを抱えたままレベルを上げてペナルティを解消した。
その場合は明らかに得をしている。
今回やろうとしてるのは両方増加分、片方が減少にならなければ得をすることができない?




