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10日目の和解

1月分 4つ目

「怒っていなかったら謝ることないんだよ。確認したうえでやっぱり怒ってたらその時に謝罪しろよ」

「うん」

 キアはもう大丈夫だな、元々気にする方でもないしな。

 キアの背中をポンポンとし体を離そうとしたが、されるがままだったキアの手がおれの背中に回ってぎゅっとしがみついてきた。


「放して、キア」

「まだ、謝ることがあるゾ」

「なに?」

「えーと、えーと秘密?」

 なんじゃそら。


「わかった、許すよ」

 名残惜しそうに体を離すキア。おれは何を許したんだ?


 後ろを振り向くと無言で目をつむって両手を開いたニアがすべてを受け入れるように待っていた。


「ニア、抱くよ」

「はい」

 体を寄せて腰を抱き寄せるように手を回す。

 「はぁっ」と甘い声が漏れて耳がとろけそうになる。


「んっ、うみゅ。あるじ様体勢を変えてもよろしいですか?」

「いいよ」

 おれの肩に顎を乗せたニアが身じろぎして姿勢を変えたがったので許可した。


「えっ?」

 立ち上がったニアは帯を緩めて前をはだけてはおれの膝の上にまたがってきた。

 服から解放された胸は当たるし腰は押し付けてくるし首筋はむしゃぶりつかれている。

 ハグってこんなんじゃないだろ!?

 これはセじゃね? セから始まる何かじゃねえのか?


「おい、やめ・・」

 引きはがそうとしたら後ろからキアが抱き着いてきた。

 両腕を拘束されたおれは声を出そうにも息を吸い込んだ時にニアの髪の毛といい匂いが口と鼻に入ってきてむせてしまう。


「ああっ、怖かったあるじさまぁ」

 ブルっと震えるニアが命の危険を感じて恐怖していたことがおれに伝わる。

 髪の毛を吹き出したおれはそんなニアを拒絶することもできずにただ自由にならない手で、手の届く腰のあたりをポンポンと叩くことしかできなかった。


 しばらくして落ち着いたニアは体を離す前におれをギューッと抱きしめてから立ち上がった。

 ニアが離れたことを見てキアも体を離す。

 キアは最初から最後まで結構力強かった。


「あるじ様ありがとうございます。うちたちを許してくれている事があるじ様から伝わってきました」

「あるじ様じゃなくてリーダーだゾ」

 キアもあるじって言ってたけどな。

 もうしみついてるみたいだし、人前で言わなければそれでもいいや。


 帰り支度を進めて賊たちから金目の物をはぎ取ることに。

 どっちが賊だよと言われそうだが犯罪者が被害者から奪った遺品があった場合ちゃんと回収するのも討伐者の役目だということらしい。


「あれ? なんでこいつが」

 前後の2人はこっちの世界の賊らしいが、ギリギリまで隠れていた左右にいた賊はフードを外してみたらおれのクラスメイトだった。

 井上と高橋。

 あまり話したことはないが特に目立ったこともない2人だった。

 いつも二人で固まってゲームや漫画の話をしていたような気がする。


「顔も見ずにぶっ殺しちゃったけど向こうに帰ったら恨まれるかな」

 向こうが襲ってきたわけだから逆恨みにもほどがあるな。

 おれが文句言いたいよ。


 クラスメイトの2人からは小銭程度しか手に入らなかった。

 武器は安物の弓だけだし貴重品は『収納』にでも入れていたのだろう。


「複雑な気分だ」

 クラスメイトを殺したとなると罪悪感もそれなりにあるが事前の説明では前の世界に戻っただけなんだよな。

 あいつらもそのつもりだったんだろうが、それにしても悪質だ。


 賊の二人は多少の金とちょっと良い剣2本。

 魔法のかかったフードが一着、魔法のかかったブーツが一足手に入った。

 

 簡易的な『鑑定』では剣は標準的な物より攻撃力が高く、フードは魔力を通すと『隠密』が発動し、普段も目立たないようになる。

 ブーツも魔力の使用で『俊足』というスキルが発動し普段から疲れにくいようだ。


「こっちは賞金かかってたりしないかな?」

 そこそこ腕のいい盗賊なんだろうし、指名手配されているなら賞金がかかっていてもおかしくない。


「かかっているでしょうね」

「持ち帰るカ」

 持ち帰らないとダメか。


「こんなでかいの『収納』に入れたくないな」

 容量を圧迫するし、なんか気分も悪い。


「足首があれば十分ですよ」

「切ってくるナ」

 ゴブリンと同じ扱い!

 誰の足首かは賞金首ギルドで『鑑定』すれば判明するし、冒険者ギルドでも受付をしているそうだ。

 賞金首ギルドなんてそれなりに大きな街でもないと支部なんてないし、たいがいは冒険者ギルドの一部門に納まっている。


 さっきは遺品の回収が義務だとか言ったけど所有権は討伐者のものになっている。

 遺族がよっぽど取り返したいものだった場合、討伐者から買い取るという形になるそうだ。


 賊二人とクラスメイトからも襲われたわけだからキアがちゃんと全員分の足首を切り取ってきた。

 袋に放り込み『収納』へと。


「んあー、危なかったけど結果的には1日でお金も集まったか」

 体を伸ばして気持ちを切り替える。


 クラスメイトが死んだことより襲われたことの方がショックだったけど。

 向こうとしても殺しても元の世界に戻るだけという気持ちがあるから気軽に襲ったんだろう。


「対策しないとな」

 クラスメイトに限らずニアとキアは美人従魔だから財産扱いされる恐れもある。

 腕時計をひったくるために手首を切り取るような無法地帯にいると思った方がいい。


「帰りにフード付きのマントでも買おう。

 街中は顔を隠した方がいいかもな」

「はい、美しくて申し訳ありません」

 ボケて言ってるのかな? 天然? 

 単純に正当な評価だともいえるが。


 黄薬草も取り終えたので街に帰る。

 黄薬草の報酬は数が少ないこともあって大したことはなかったが、賞金首の報奨金として結構な収入があった。


 面倒は避けたいので4人とも顔を知らない盗賊におそわれたと申告し、そのうち二人には賞金がかかっていたということだ。

 盗賊が持っていたお金も含めて、今日一日で70万円相当の稼ぎになったわけだ。

 こちらの通貨では7000エル。


「目標達成したか・・・」

 稼いだ金で魔法使いに転職して、属性の大弱点をすべて消すつもりだったが肝心のスキルポイントが全部使用済みになってしまった。


 スキルポイントだけの話ならスキルリセットという手段もあるにはあるのだが今回の盗賊との戦いは結果的に圧勝したものの、スキルポイントをケチっていたらきわどいことになっていたかもしれない。

 特に正面にいたリーダー格の男は剣術にもかなり自信があるようだったし、『剣術』のスキルレベルが3のままだったらスキルレベルで互角でも技術と経験で押し切られていたこともあり得る。

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