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10日目の無駄遣い

1月分 2つ目

 匂いが近づいてくる、目的の黄薬草が少なくても普通の薬草で水増しして報酬を増やせば目標の金額には何日もかからないだろう。

 初心者向けと言っても、おれ日数的には初心者だし。


「ボクにもわかるゾ、こっちだナ」

 おれの進む方向にキアが鼻をきかせて同じものを捉える。

 おれの方は『嗅覚強化』の魔法の効果が切れたのでキアにバトンタッチして先へと進んだ。


「ありました」

 森の中にわずかに木が開けた場所があり、細く日が差している。

 先行したキアとおれの間にいたニアが振り返っておれに告げた。

 その手は戻ってきたキアの頭をなでていて、キアも嬉しそうに頬をニアにこすりつけている。


 道からも少し外れたその小さい草地には見てすぐわかるように黄色い薬草が点在している。

 軽く見ただけで10本は越えているその黄薬草をみんなで摘んでついでとばかりに普通の薬草も摘んでいった。

 納品用の袋にそれなりに溜まった所で薬草摘みを切り上げると街に戻ろうとおれたちは腰を上げた。


「おっとそこまでだ、武器に触らず手を上げろ」

 草地の入り口から恫喝する声。

 黒い皮鎧を着た男が弓を弾き絞っておれたちに狙いをつけている。


「なにガッ」

 狙われていなかったキアが剣を手に襲い掛かろうとして前に倒れる。

 背中には矢が突き立っていて起き上がろうとしても力が入らないようだ。


「動くなと言っただろう」

 前にいる奴とは別に何人かが森に忍んでいる。

 薬草狩りに夢中になってはいたが、声をかけられるまで気づかなかったことをとっても隠密系のスキルを持っている手練れだろうと見当をつける。


 キアが動けなくなっていることからも矢に毒が塗ってあってマヒさせられているのだろう。

 死んでないよな?

 攻撃をしたことで後ろの奴の『隠密』は剥がれて人がいることはわかる。

 だが、前の奴を警戒している以上後ろに目をやる余裕はないし、2人だけとも限らない。

 間違いなくもっといるだろう、左右も危険だと思っていい。


「いてっ」

 ガスッと背中から石を当てられる。

 キアに毒矢を当てたやつが自分の役目は終わりと思っておれに嫌がらせをしてきたのか。

 土属性の大弱点が残っていたら死んでたぞ。


「膝をつけ」

 仲間に毒矢を撃たれ、おれは投石を食らって戦闘状態に移行したことでおれの大弱点がすべて目を覚ました。

 視界は狭まり、風はチクチクと肌を刺し、わずかな湿度が喉を詰まらせる。


 戦闘どころじゃない、命令されるまでもなく膝から崩れ落ちる。


「素直なのはいいことだ」

 命令に従ったみたいで悔しいな。

「へっ、こいつヘタレだからよ」

 後ろからの声はおれの事を知っているような口ぶりだ、石を投げたやつだよな。


「余計な抵抗はせずにその二人の従魔をおれに譲渡しろ」

「一匹はおれのだからな!」

 それが目的か、高レベルの従魔で見た目もいい二人は資産価値があり、治安の悪い所では宝石をぶら下げて歩いているようにも見えていたのだろう。

 

 おれの護衛をしている彼女たちにさらに護衛が必要になるくらいのセキュリティーが必要だった。


 それにしても後ろの奴は態度が悪いな、目の前の奴に感じた強者感が後ろの奴には微塵も感じられない。

 それでも後ろの奴が自分の仕事は終わったとばかりにおれにちょっかいをかけて口を出しているのはもう一人か二人森の中に潜んでいるからだろう。


 そいつらの気配は全く感じられない、実力としては前にいる奴と同等だろう。


 ・・・絶望的じゃないか?

 姿を見せない実力者に動けない自分、麻痺した仲間。

 動けるニアもマヒ毒の矢に狙われているだろう。

 それがわかっているためニアも動くことができない。


(終わった、おれの異世界ライフ)

 死んでも元の世界に帰るだけと説明にはあったけど、この世界にはもう戻ってこれないだろう。

 せっかく楽しくなってきたところだったのに。


 おれだけならあきらめもつくがニアとキアにとってはこっちの世界が現実だ、殺されることはなさそうだが従魔は奴隷みたいな扱いをされそうだし、後ろの奴は特にひどい扱いをしそうだ。


 あきらめきれない気持ちでステータス画面を開く。

 周りには見えないし膝をついて顔を伏せているから目の動きも読まれない。

 画面に指を沿わせることはできないが視線の動きでカーソルを動かし、地面に着いた指でクリックをするイメージで画面を操作する。


 未収得スキルを見ても現状を打開できそうなスキルはない。

 おれが動けないのは各属性の大弱点によるものだからペナルティを解除しなければいけないのだが、それにはスキルポイントが足りない。


(キアが動ければ)

 パーティー編集タブからキアのステータスをのぞく。

 あれ? キアのスキルに見慣れないものがあるぞ。

『マヒ耐性 1』


 スキル名が点滅して激しく主張している。

 今現在キアが必死にマヒに抵抗していることでスキルが生えたのか?

 点滅しているのは今もスキルの経験値を貯めてレベルアップをしようとしているのだろうか。

 スキルレベル1はスキルポイント1で取れるから何とか取得することができたのだろうがスキルレベル2はその9倍は大変だ。


 何とか応援してやれないものかと『マヒ耐性』のスキルを注視して地面の指でクリックするとスキルレベルを上昇する時の+ボタンが現れる。

(なんでだ?)


 ステータスの状態がマヒになっていて無抵抗状態であることが関係あるのか?

 本来なら従魔と言えども他人にスキルポイントをいじらせることなんてあってはならないだろう。

 しかし。


(ごめん、必ず返すからそのスキルポイント使わせてくれ)

 経験値増加の配分を変えれば使った分のスキルポイントは取り戻せるだろう。

 確認をとることもできないから事後承諾ではあるが。


 キアの『マヒ耐性』を上げて動けるようになったとする。

 タイミングを合わせておれも光魔法の『祝福ブレス』を発動すれば全員動けるようにはなるだろう。


(そうなったとして勝てるのか?)

 出し惜しみはできない、おれはスキルポイントを100光魔法につぎ込む。

 合計で200ポイントつぎ込んだことで光魔法は3レベルになる


『SP 364-100=264』


 3レベルで取得できる光魔法は『光の槍ライトスピア』。

 100スキルポイントも使うが攻撃力に全振りの単体攻撃魔法だ。

 習得に200ポイント使うかと思ったが100で済んだ。

 光魔法にも合計200もスキルポイントをつぎ込んだことで威力も200倍になっているはず。


『SP 264-100=164』


 キアですら察知できない『隠密』持ちだ、剣術も相当鍛えているだろう。

 3レベルはあってもおかしくない。

 おれの剣術は実戦経験を伴わない張りぼての3レベル。

 まともに戦うにはもう1レベル上げて4レベルにしたい。


『SP 164-100=64』


 『索敵』と『隠密』にも10ポイントづつ突っ込んでスキルレベルを2にする。

 勝機が見えていたら無駄遣いが楽しくなってきたな。


『SP 64-20=44』


 もうスキルはいい、残しておいてもいいけど負けた時に悔いが残るかもしれないから能力値にも割り振ることにする。

(悔いを残すな。スキルポイントも残すな)

 お残し厳禁。


『遊佐 蕗

レベル 62

HP 131

MP 131

攻撃 64+8=72

防御 64+8=72

知性 64+8=72

精神 64+8=72

敏捷 64+8=72

SP 44-40=4

EXP 30685

NEXT 31000


スキル(ー)

水魔法 -3

風魔法 -3

氷魔法 -3

雷魔法 -3

光魔法 2+1=3(灯り 感謝 祝福 +光の槍)(嗅覚強化)

闇魔法 -3

所有経験値増加 2-1

嗅覚強化 2

鑑定

収納

索敵 2

隠密 2

剣術 3+1=4

未収得スキル(+)』

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