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10日目の嗅覚強化

1月分 1つ目

 魔法における嗅覚の指示がどの場所なのかがわからない。

 何か手掛かりはないかと魔法のソース画面? を閉じてステータスに戻る。


「魔法とスキルの違いはなんだ?」

 魔法はMPを消費して発動するアクティブ行動、スキルは常時発動しているパッシブ効果。

 と言えなくもないが、『収納』なんかは能動的行為なんだよな。

 MP消費だけの違いなのか?

 そう言われてみれば剣術における戦闘スキルって見たことないしな。

 例えば、スラッシュとか火炎剣とかそのたぐいのもの。


「魔法がカスタマイズ前提なのだから剣技も個々人が自分でカスタマイズしろと?」

 ぼくが考えた最強の必殺技、見たいに『紅蓮鳳凰剣!』とかを自分で作って人に見せろと。

 その時にカスタマイズした魔法を剣に発動すれば属性効果も載せられるとか、そう言うこと?


「スキルのソースコード見たいな」

 MP消費の有無だけが違いならスキルもカスタマイズできるだろう。

 カスタマイズは無理でもスキルの詳細が見れれば、嗅覚を指定する文字列がわかるかもしれない。


 『鑑定』をスキルにかけても何もわからない、『鑑定』のレベルが足りないのか?

 と言っても『鑑定』のスキルレベルは上げられるようになっていない。


「『鑑定』が影響を受けているのはたしか『時間魔法』」

 キャラクターメイキングをしている時に『時間魔法』と『空間魔法』にペナルティーをかけようとしたことがあった。

 『空間魔法』にペナルティーをかけたら『空間魔法』の使用不可のペナルティーを受け、その時『収納』が使えなくなった。

 同様に『時間魔法』にペナルティーをかけたら『鑑定』が消えた。


 ならば『時間魔法』を取得すれば『鑑定』を強化できるのか?

 と、そこまで考えたところで本末転倒なことに気が付いた。

 たかだか数日の薬草拾いにスキルポイント200以上をつぎ込んで『時間魔法』を覚えるバカがどこにいるんだと。


「うん、お待たせ。嗅覚の強化は今はいいや」

「ボクが頑張るゾ」

「魔法の開発は一朝一夕でできる物でもないですからね。

 外でできる事なんてスキルポイントの振り分けくらいですよ」

 まったくだよ、魔法の開発をしている人は数えきれないほどの失敗をして、その中から見込みがありそうなものを何度も繰り返し検証してきたんだろうな。


「魔法学校に興味が出て来たな、先人の知識を学んでいけばわけのわからない魔法の文字列も理解できるようになるのだろう」

 学園都市を振り返ってつぶやく。

 もし通うのなら入学金や授業料で結構な金が必要になりそうだな。


「理解となると一握りの賢者になるでしょうね。

 学園で学べるのは元からある魔法の最適化程度だと聞いています」

 持続時間を伸ばしたりとかか?

 それくらいなら今でもできそうだな。


「リーダー、学校に行くのカ?」

 キアは嫌そうに言う、ニアなら通うにしても知識を得るにしてもやれることは山ほどあるだろうが、魔法を伸ばすつもりのないキアはこの街で過ごすのは退屈で仕方ないだろう。


「行かないよ。

 学園で学べる程度のことは今のままでもできそうだしな」

 ステータスを開いて魔法のソースコードを呼び出す。

 『感謝』の持続時間を減らしてみる。


 『鑑定』のおかげか魔法の文字列の中でも数値に関しては理解できる。

 持続時間は12時間、説明欄には1日とあったが実際は半日だった、野営をするなら掛けなおした方がいいかもしれない。


 持続時間の所をタップするとプラスとマイナスのボタンが2つづつあらわれる。

 それぞれ独自の言語で1hと10m、一時間と10分だろう。

 ボタンを連打して10分に調整、連動して減っていったのはMPの消費量だろう。

 元々大した消費量ではなかったから6だった数値が2時間にした時点で1になってそれ以降は変化しなかった。


 続けて運勢の数値も最低まで減らす、こちらは0でいい。

 ここから嗅覚に振れれば欲しかった魔法が完成するのだが、数値の情報は山ほどあるし、ダメもとでいろんな場所に数値を割り振って検証しなければいけないのだろう。


「うーん」

 何気なく魔法のウインドウを開いたままステータスの画面に目をやる。

 ここでスキルのソースコードが開ければいいのになと思いながら『嗅覚強化』のレベルを上げてみた。

 1%程度上げてみても全くの無駄使いなのだが、毎日10ポイント以上追加されるから軽い気持ちでポチってしまった。


 すると魔法のソースコードの画面がほわっと光ったような気がした。

「えっ?」

 何かを見逃したことが悔しくて魔法のソースコード画面を注視しながら再度『嗅覚強化』のレベルを上昇。

 押した後で気付いたが2レベルに上昇させるってことは9ポイントつぎ込んで10%強化になる。

 軽い気持ちでは済まない無駄遣い、浪費の極み、給料全額をギャンブルにつぎ込むような所業だ。


 胸が痛くなるような後悔を押さえつけて注視を続けていたおかげでソースコードの発光していた部分が特定できた。


「おそらくこれが嗅覚だ」

 数値をつぎ込んで最大値まで。

 効果を最大にしても消費MPは10程度、MPは余り気味だからもっと消費してもいいのだが効果的にはこれが限界のようだ。


 『新魔法として登録しますか?』と聞かれてイエス。

 魔法の登録画面に入ると魔法名の入力を求められる。

「嗅覚強化かな、フリガナもいるのか? これかっこいい名前にしろってことなのか」

 スメルエンチャント?

 すべてを嗅ぐもの、ビックノーズ、パフュームイーター、スニッファー。

「スメルなんちゃらかな、いやスメルだけでいいか」

 『嗅覚強化スメル』で入力


「よし、できた」

 2人を待たせてしまった、2人ともおれを邪魔しないように周りを警戒してくれていた。

 ホントにいい子たちだよ。


「できたカ?」

「出来たと言いますと?」

 ニアたちに何ができたかと聞かれる、まさか魔法ができたとは思ってないだろう。

 おれとしても道端でやるもんじゃないと思った。


「『嗅覚強化スメル』」

 グッと周りの匂いが強くなる、スキルの『嗅覚強化』を2レベル上げて10%敏感になった時も多少は感じていたけれど、魔法の『嗅覚強化』は時間制限があってMPも消費している分効果が強力だ。

 体感で3倍から5倍は感覚が鋭くなっている、ニアたちの匂いも除草作業後の草の匂いも道を通り過ぎた人や馬の匂いまでもが感じられる。

 今なら警察犬にだってなれるだろう。


 そういうことであれば3倍や5倍では済まない。

 犬の嗅覚は人の何千倍だとも聞いたことがあるし、それと同じくらいにはなっているだろう。

「何千倍ってのは大げさだろうけどな」

 敏感すぎるセンサーは壊れるのも早い。


 匂いには強くなったがこの中のどれが薬草なのかがわからない。

 おれは『収納』の中から普通の薬草を取り出して顔に近づける。


「うっ」

 強すぎるにおいに顔をしかめて薬草を遠ざける。

 手を伸ばしたまま風を送るように薬草で自分を扇ぐとはっきりと匂いが漂ってきた。


「この匂いか」

「うん、そうだナ」

 キアも薬草に近づいて匂いを嗅ぐ。


「普通にあるな」

 探しているのは黄色く変色した黄薬草だけど、匂いを確認したのが通常の薬草だから周り中にたくさんあって対象を絞り込めない。

「意味ねえ」

 最低でもサンプルとして黄薬草が必要だと言うことがわかった。


「森の奥に入ってまずは一本見つけよう」

 黄薬草を嗅いで普通の薬草との違いを確認しなくては。


 森に分け入ると街道に生えていた薬草の匂いは薄まり森の匂いが強くなる。

 森の奥に薬草の群生地がないかと風向きを見ながら匂いに集中した。


「こっちかな?」

「わかるのカ、ボクよりすごいゾ」

 キアの嗅覚を越えたか、今のおれは犬並みだからな。


 立っている高さより地面の近くの方が匂いがわかりやすい、身をかがめて地面に手が付きそうな高さで薬草の匂いを探った。

 キアも立ったり座ったりして歩きながらスクワットをしているような動きで匂いを探っているようだ。

 足の力も強いのだろうが地面に手を付けることを、ことさらに避けているような動きだったので聞いてみた。


「汚れるのが嫌なのか? 手を付けないみたいだけど」

 おれもレベル補正で筋力も体力も上がっているけど、立ち上がる時は指先くらいは付いてしまう。

 さすがに「よっこいしょ」と口に出したりはしないが。


 キアはフルフルと首を横に振る。

「地面に手をつくと走り出したくなっちゃうからだゾ」

 予想外。小学生とか犬じゃないか。

 両方要素があるだけに理由を聞いて納得した。

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