急転
秀美はふぅと息を吐き出すとランスロットが忘れて行った剣をリリアに渡し
「リリア、取り敢えず家に戻る」
とスタスタスタと早足で歩き出した。
先ほどの大立ち回りにこんな怪我。
人々が自失呆然としている間に退散しなければどんな騒ぎに巻き込まれるか。
まさにとんでもねぇ!である。
リリアは秀美を支えるように
「はい」
戻りましたら直ぐに手当てを
と答えて足を進めた。
周囲の家々の人々は呆然と空を見上げ、携帯で動画を撮っている人も居た。
秀美は心の中で
「こりゃ、明日のテレビは大騒ぎだな」
とぼやいていた。
血に濡れた腕で家に帰ると泣き出したのは優であった。
「兄…痛いー」
秀美は上着を脱いで腕を出すと
「いや、痛いのは俺だ」
と心で突っ込みつつ
「大丈夫だ、優」
お前が泣くな
と言い
「リリア、悪いが包帯を頼む」
と笑みを浮かべて告げた。
秀美の身体は鍛えられているようで筋力が締まっておりボディラインは綺麗であった。
リリアは術と薬と包帯で秀美の腕の傷の手当てをしながらフッと
「秀美の胸に痣が」
と指をさした。
秀美はそれに
「ああ」
と答えた。
「物心ついた頃からあるから悪いものじゃねぇな」
リリアは微笑むと
「そうなのですね」
と答え
「ランスロットが付けた傷かと思ってしまいましたが」
と心で呟くと
「でも…何故ランスロットがここへ?」
しかも秀美を襲うなんて
「ノルド・マギの名を奪いそれだけで満足だったのではないの?」
何故?
と考えていた。
そして、ランスロットが言った言葉を思い出していたのである。
『貴女は何時も何も知らずに…考えることすらせずに…』
…貴女はいつもそうだ…
『真にフィマールのことを考えられたこともないだろう』
リリアは包帯を巻き終えて秀美の腕を見つめ
「私は…いつもそう…」
私はいつも
と小さく呟いた。
秀美と優とリリアはこの日、何時になく沈黙を広げて用意していた麻婆豆腐を食べて早々に眠りについた。
ランスロットが消えた月は食を終えたように輝きを取り戻したものの、秀美が想像していた通りに翌日のニュース番組は夜空を舞った巨大なドラゴンと晴れ渡った空を駆け抜けた幾筋もの雷の話題で大騒ぎであった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




