急転
だが、額を流れる汗が冗談や酔狂で相手が剣を手に自分を襲おうとしているわけではないことが分かっていたのである。
本気…なのだ。
正常な精神で…である。
ランスロットは冷え切った目で秀美を見つめ
「残念ですが…死んでいただきます」
と足を踏み出して剣を薙ぎかけた。
その時、炎の巨人が現れランスロットの剣を掴み、反対の炎の手を伸ばした。
リリアが護衛につけていた精霊インフリートであった。
リリアは魔導宮が赤く強く輝くのに気付くと
「…秀美」
と呟き、驚いたように駆け寄った優に
「秀美に危険が迫っています」
行きます
と立ち上がった。
優も「僕も!」と足を踏み出しかけた。
が、リリアは優を見ると
「優はここで待っていてください」
と言い
「優にも守りをつけておきます」
だから
「優は自分を守ることを今は優先してください」
と両手を魔導宮に翳し
「我が精霊ドリュウス…優を守護し従え」
と女性の姿をした精霊を呼び出して優を託すと駆け出した。
インフリートの反応でリリアは直感したのである。
「私の世界の者が…この世界に」
リリアがアパートを飛び出し月食が続く闇の町に飛び出したその時…夜空の食の月からドラゴンがうねりながら現れたのである。
リリアは見上げて
「ドラゴン…」
と少し先に見えたインフリートと戦うサラマンダーの姿と秀美と対峙する見知った人物の後ろ姿に息を飲み込んだ。
「ランスロット!」
その頃、テレビにも食の月からうねりながら現れた竜の姿が写り、人々は慌てて窓を開けると夜空を見上げた。
幾筋もの雷光が晴れた夜空を駆け抜けあちらこちらで地上を穿つと火の手を挙げた。
有り得ない現実であった。
家の戸に手をかけていた的井修吾はマンションの廊下から見えたその光景に目を見開き
「マジか!」
と叫ぶと慌てて廊下の手すりに手をかけて空を見上げた。
「…少し前から変な呪いが現れたり」
どっかの駅では集団幽霊が現れたとか騒ぎがあったり
「何時から世界が天外魔境に変わったんだ!?」
秀美はランスロットの剣を避けながら回りの家々の窓が開くのを見て
「やべぇな」
と呟いた。
だが、人々の多くは空を見上げていたのである。
秀美はヒタリと汗を浮かべ
「ったく」
と息を吐き出すと一歩踏み出すとランスロットが剣を突き立ててくるのに腕で受け止めて反対の手で思いっきり横っ面を殴り飛ばした。
剣の刺さった腕からは血が流れ地面にシミを作っていく。
だが、秀美は剣を抜くと殴られて吹っ飛び見てくるランスロットに剣先を向け
「てめー、警察なめるなよ」
と言い
「どこのどいつか知らねぇが銃刀法違反に傷害罪だ」
しょっぴいてやる
と足を踏み出しかけた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




