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クリスティナ逃げる

「ぴぃちゃんはさ、可愛いけど、分かりにくい時が、ある、よね」


 呼吸を整えつつ切れ切れに言うと、ぴぃちゃんが「心外!心外ですよ」と嘴をパクパクする。

気を悪くさせたかも。


「時々ね、時々」


 本当に時々と思っているのかと疑いの眼がクリスティナに向けられる。うん、取ってつけたのが丸わかりだもん。



 それにしても。アンディの家からは結構離れたし角も曲がった。お姉さんとダー君はどこに停まっているのだろう。

 

 クリスティナからお願いした手前、ぴぃちゃんを信じて大丈夫? とは聞きづらい。



「どうかした?」


 クリスティナを可愛く睨んでいたぴぃちゃんの目は、いつの間にかクリスティナの後ろを見通すように小首を傾げた角度で固定されていた。



 遠くを見、クリスティナを見を繰り返す。同意を求めている、あるいは「どうしましょう」と伺いを立てている感じ。


遠くに何かあるのかな。振り返ると。



「え!? レイ!?」


 脇道からふと出てきた感じで立つ男性が、首を横に向けてこちらを見ていた。

頭からつま先まで真っ直ぐ一本になる立ち方は、見間違いようがない、レイだ。


胸は厚くお腹は平ら。おお、横から見ても野郎の理想的な体型ですよ。



――ではなく。


 クリスティナ? 唇の動きで名を呼ばれたと分かった。

なので「いいえ、クリスティナではありません。私は別の人です」と、こちらも唇の動きで伝える。


これで、人違いしたと思ってくれるといいけれど。



 お隣から、信じられないことを耳にしたかのような気配が伝わる。ぴぃちゃんだ。無理がある、絶対的に無理があります。そう思っているよね、うん、私もそう思う。



なので。

「逃げよう、ぴぃちゃん!」


ぴぃちゃんの横を駆け抜ける。


「お姉さんのところへ、本気で連れて行って!」



 一瞬遅れでぴぃちゃんも動き、すぐにクリスティナを追い抜いて先導してくれる。

これほど「私も空を飛べたなら」と思ったことは、ない。


 ぴぃちゃんと同じ白に薄桃色の羽がいいけれど、それしかないならダー君のあまり可愛くない翼でも可とする。



 追いかけてきていないといいな、レイ。と希望を込めて肩越しに後ろを見たところ、よりいっそう真剣に走るはめになった。


「怖い!怖い、ぴぃちゃん。レイが本気で追いかけてきてる!!」



 振る手の角度、上げた腿の高さが、明らかに足の速い人のもの。

はうるちゃんも速そうだし、ラング様も速そう。ルウェリン家全員が速そう。


これは私の足では勝てない。馬でないと。



「ぴぃちゃん! お姉さんどこっ?」


「待て! クリスティナ! 逃げるな!」


レイとの距離は明らかに詰まってきていた。



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