「来ちゃった」
ぴぃちゃんが「視界良好・絶好機・叔父上お留守・アンディ在宅・シャーメインお出掛け・お母さんも一緒にお出掛け」と教えてくれた。
可愛いダンスを読み解く隣でダー君が「ダーもできるよ。見て見てダーのも見て」とクリスティナに絡む……じゃなくて、ねだる。
ぴぃちゃんは迷惑そう。
狭い馬車のなか、フレイヤお姉さんがクリスティナに目配せしてダー君を背中から抱っこして膝に乗せる。ありがとう、捕まえてくれて。
「上手ね、ダー君。ティナちゃんを待つ間にたくさん見せて」
今日はお返事がわりにちょっと会うだけだから長居はしない。
アンディと話す間、お姉さんは馬車で待っていてくれる。ひとりのはずの馬車から話し声がしたら、御者さんは怖がるかも。
うん、早めに戻ろう。
「ティナちゃん、困ったらぴぃちゃんをね。すぐに行くわ」
「もとひじゃなくてダーがゆくのよ」
あらあらダー君がどんなお役に立つのかしら、という風に少し笑うお姉さんに、ひらりと手を振って「ちょっと行ってくるね」とクリスティナは馬車を降りた。
「行くよ、ぴぃちゃん」
肩でぴぃちゃんが「はいです」とお返事した、と思う。
高い位置にあるドアのノッカーを打ち付けて来訪を知らせた。お家にいるのはアンディひとりと知っているので、安心して叩ける。
ほどなく扉が開いた。
「クリス!?」
開く前から呼ばれたのは、先に脇の小窓で顔を確かめていたのだろう。
「びっくりした?」
お返事を待っているところに本人が登場したら、すごく驚くけれど嬉しいのはウォードで体験済み。
アンディのびっくり顔が見られて満足したクリスティナは、うふんと笑ってみせた。
お花を持ってくればよかった。
アンディが焦った様子で、辺りを見回す。遠くを見るために背伸びまでする念の入れようだ。
「クリス! どうして来たの!?」
「お手紙ありがとう。ティールームでお店のお姉さんがくれたよ。『会えない?』って聞いたの、アンディじゃない」
忘れちゃった? と聞けば、前髪を自分でくしゃくしゃにして呻く。
「だからって、いきなり来なくても。ああもう、クリスはこれだから」
「アンディ、なんだか私に失礼」
指摘するクリスティナは冷静である。
「あいつが、クリスのことを知ったんだ。自分より継承順の高い人がいるってことを」
早口でまくしたてるアンディ。「あいつ」とはマイルス叔父上のこと。叔父上が知ったことをアンディも知ってるんだね、と思う。
自分でも分かりにくい言い方なのは認めます。
「うん、そうらしいね。」
「えっ。クリス、知ってるの?」
ポカンと開いたお口がおかしい。落ち着こうアンディ、クリスティナはアンディの両肩に手を置いて軽く叩いた。
「身の回りに気をつけて大人しくお家にいるようにってレイに言われた」
だったらどうしてここにいるんだよ。アンディの声なき声は、ぴぃちゃんのダンスより分かりやすかった。




