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伯爵令嬢オヤジに腹を立てる・2

 実は見に行ったことがあるなんて、レイには言えない。クリスティナはこっそりと肩をすくめた。


 イヴリンさんのお出掛けついでに馬車で送ってもらう途中、レイへの伝言があるというイヴリンさんにくっついて武器の見本市へ寄ったのだ。



 子供は危ないからここで待っていてと言われたのは少し高い場所で、会場が見渡せた。


 何人もいるクリスティナと同じ年頃の男の子は、格好から鍛冶屋の見習いだと想像がついた。

みんな頑張ってるねえ、と応援する気持ちになる。



「さあ、ご覧ください!」


 手を打ち鳴らし注目を集める人がいて、クリスティナの目も自然にそちらへ向いた。


「得物を選ばぬ凄腕新人レイと男も惚れる頑強な肉体の持ち主サム。扱うはダガーナイフと長剣です」



 ふうん。長剣で戦って最後はダガーナイフてとどめね。猪を狩る感じ、クリスティナは顎を撫でた。


 すぐに考え違いに気がつく。

二種を携帯するのではなく、レイがダガーナイフで頑強筋肉男サムが分厚くて重そうな長剣だった。どう考えてもレイに不利。



 サムが丸太のような腕で長剣をぐるりと回せば、見物人から歓声があがる。なぜ、上半身は素肌に鎖でできたベストなのだろう。下に一枚着たほうが胸のモジャモジャが隠れていいのに。



 対するレイは長袖シャツに皮ベスト。手にしたダガーナイフは短い。長剣とやり合うのは向かないけれど「長剣が使い物にならなくなって手元に残ったのはダガーナイフ一本のみ」という設定なのかもしれない。


 山賊が好んで使うものなので、レイは扱い慣れている。合わせた戦い方も習得しているのだろう。


 筋肉量でいえば、完全にレイの負け。しかし何ごとも程度ってもんがあるとクリスティナは思うのだ、あんなにはいりません。



 レイとサムが見交わし場が静まる。呼吸が合ったところで試合が始まった。


 剣の短いレイは相手の懐へ入らなければならない。当然長剣に防がれる。金属のぶつかる音に、模擬試合と分かっていても「おおっ」と見物人から声が上がる。



「ダガーはやっぱ短いな」 

「長剣は重くて長いぞ。サムであんだけ大振りになるんだから、普通の者ならすぐに疲れて腕が上がらなくなる」

「俺は腰に下げて歩くだけで疲れきりそう。でもいいよな、長剣」



 クリスティナでも分かるようなことを真顔で大人達が会話する。

薪割りもナタでいいところを斧を使いたがるのが、男ってものだ。



 レイがダガーを左手に持ち替えた。これまでと角度を変えて相手の首を狙う。

同時にレイの腹にサムの長剣が。それを躱しつつ空いた右手で上手く押さえて、お互い動きを止める。



 どよめきが広がり歓声が湧くなか、クリスティナは耳を澄ませてレイとサムの声をひろう。


「手は大丈夫か。最後近すぎ、本気で首をやられるかと思ったぜ」

「はは、すまない。止められる自信があって、つい客受けを狙ってしまった。手は大丈夫、サムが止めたところに添えただけだ」

「あんたとやると、負けても売り上げがいいんだよな。不思議なもんだ」



 理由が分からない。サムが頭を捻る。

見せ方だよ、と教えてあげたい。レイの距離のとり方が抜群で、サムさんの腕から剣が生えたみたいに見える。体もひと回り大きく見映えがする。


 

 剣術をしっかり習いましたのレイと違い、荒削りで独学っぽいサム。そこが魅力に映るのは、レイの演出による。



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