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日の当たる場所で立つ少女

 城砦に寄って帰ろうと思い立ったのは、クリスティナの手紙に何かよく分からない小さな種が同封されていたから。


 急でお土産を用意できなくて、自分が鉢で育てるつもりだった花の種をあげる。手紙にはそう書かれていた。


 記すべきは、理由よりまず花の種類だろうに、抜けているところがクリスティナらしい。



 ウォードの住む館は父のもの。今まで花に興味など示したことのない俺がいきなり種を渡して「蒔け」と言うのは不自然だ。


 それより城砦の誰かにクリスティナから預かったと伝え、育てるよう頼むほうがまだいいような気がした。


 

 実は、クリスティナの「家に着いてから読んで」という言いつけに背いて、ウォードは劇場で馬を引き取るやいなや封筒を開けた。


「……豚?」


 少し厚い茶色の葉をハサミでなにかの形に切ったものが出てくる。頭と尾が有るような。


『会えなかったので、にゃーごちゃんを作りました。にゃーごちゃんにあげてください』



 なんと豚ではなく山猫のつもりらしい。しげしげと眺める。ずんぐりと太めで足の位置もおかしいような。

 これが守護様とは、正直、不敬にあたらないかと心配になる出来だ。


つまりクリスティナらしい。



 不意にクリスティナの指の感じが額によみがえる。くすぐったさを拭い去ろうと、親指の関節で強く押す。


 父の不興を買った時の傷。「失望した」と言った顔は見ていない、視線が合ったのは刃が当たり血が流れてから。父が一瞬といえど動揺をみせたことで、逆にこちらは冷静になれた。



 ローガン・アガラスが父を裏切ると決めるまでに、迷いはどれくらいあったのだろう。

 親子の仲は良好に見えたが、好いた女とはそれほどの価値を持つものなのか。


「俺にはわからんな」


馬上でひとり、どこからも返事はない。



 クリスティナの手紙。『お返事が欲しいです。ください』と住所が書いてあった。

返事が来なかったのは住所を教えなかったせいだと本気で思っているところが、可笑しくも可愛い。



 会いに行ったおかげで得るものは多かった。クリスティナが城砦の主になりたい理由は、思いも寄らないものだった。


レイ・マードックは言った。

『先例がないからこそ期待してしまうな。クリスならどうにかなるんじゃないか、と』



 クリスティナができると信じているのなら、どれだけ望みが薄くても求め続け、くじけず向かっていくのだろう。

階段でうずくまっていた幼女は、少女となり日の当たる場所で凛々しく立つのだ。



 眩しいな。ウォードは日を避けるように、額に手をかざした。



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