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勇者と愉快な仲間達と少女、魔王を倒す旅に出る  作者: 逆張りオタクの天照大御神


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8/10

勇者と少女の悪徳貴族撃退劇 後編


 

(ちょう)雷撃(らいげき)轟音(ごうおん)()!」


 両手から放たれ縦横無尽に駆け巡る大量の雷が、毒ガスすらも包み込んで全てを破壊する。


「め、滅茶苦茶な魔法を使いおって!そんなことをしても、僕ちんには当たらないぞ!」


「ああ、だろうな!」


 いくら攻略法が分かっているとは言え、それを知っているのは相手も同じ。


 悪徳貴族は距離を取り、簡単には詰められないようにしている。


「なら何故、こんなことをする!」


「そんなの、てめぇをぶちのめす為に決まってんだろ!」


(頭が良いと思いきや、今度は無駄に魔法を連発とは脳の無い奴め…!)


 手強さを感じた賢さとは別に、やり方は当てずっぽうなだけの意味の無い攻撃。


「オラオラァ!さっさと攻めねぇと、俺は殺せねぇぞ!?」


 このまま毒ガスとなり、魔法を使う為のエネルギーである魔力が切れるのを待てばいい。


 底の知れない力を感じてはいるが、誰にでも限界はある。


 そこを狙えば良い、と天井から無駄に暴れているランを見下す。


(かなり厄介だが、こうしていれば奴が疲弊するだけで僕ちんが動く必要はない)


 魔力をかなり消費してはいるが、暴れ続けてくれているのなら先に魔力が切れるのはラン。


 悪徳貴族の魔力量は、まだ多少ある。ランが暴れ終わるぐらいまでは持つ。


「そう言えば、あの少女はどこに行った…?」


 上から見渡していると言うのに、奴隷にしようとしていた少女の姿が消えている。


「ここです!」


 回復魔法を使う少女は、攻撃する手段を持たないので素手で殴りかかるが当然のように透かされる。


「貴様、いつの間に!…と言うか、どうやって飛んで来た!?」


 ここは40mの高さ。魔法を使わずに、人間が飛んでくることは出来ない。


「えっ、普通に飛んで来たんですけど…」


「貴様はカンガルーか!?いや、40mはカンガルーでも飛ばないけど」


「ごちゃごちゃ、うるさいですよ!」


 落ちる間際に、もう一度拳を振るがガスとなっている悪徳貴族に効果は無い。


(全く、どいつもこいつも脳の無い攻撃ばかり―――)


 くだらない、つまらない、鬱陶しい、そう思った時に地面をふと見る。


「何だ、これは…?」


 下には帯電し続ける電気、恐らくは放出し過ぎた雷が残っているのだろう。


 だが悪徳貴族が気になったのは、そこではない。


(奴が、大人しくなっている…)


 てっきり暴れたままなのかと思いきや、ただ立ちながら、こちらをじっと見ている。


(……そういうことか!)


 溜まりに溜まった電気、不敵に笑う暴れん坊、魔法で浮いているだけの自分。


 悪徳貴族は、ここでようやくランの狙いに気が付いた。


「さぁ、降りて来いよ。俺はもう魔力を使わない、こいつには回復魔法がある」


「ッ…!」


「てめぇが魔力を消費し切って地面の電撃を浴びるのが先か、俺達が毒ガスで死ぬかのチキンレースだ!」


(こ、こいつ…!)


 ラン達も既にかなりの魔力量を使っているが、悪徳貴族はずっと毒ガス状態で居る。


 それも長いことだ、ここに来る頃には既に魔力を消費していた。


 相手が先に尽きるのであれば、仕掛ける必要は無い。ただ待つだけで勝てる。


 しかし、自分が先に尽きるのであれば、ここで仕掛けなければ勝機は無い。


 多くは無い魔力、持つかどうかは分からない。あまりにも相手次第。


「くっ…!」


(このままでは、このままでは…!)


「どうしたよ、降りて来ねぇのか?」


「ッ…!」


 待っていれば負ける。煽られた挙句、余裕を見せられ焦りのギアが一気に上がる。


「ぼ、僕ちんを舐めるなぁ!」


 建物内の空間全てに、毒ガスが放出される。


 魔力の消耗も考えず、全てを出し切り2人を確実に殺す気だ。


(やっぱ仕掛けて来たか…!)


(ど、どうするんですか!?)


 ここまでは想定通りと言えば、想定通り。


 問題は、この後だ。


(この毒ガスの中から、毒ガスと化した僕ちんを探し当てるのは不可能!)

 

 悪徳貴族が決着を付けるのなら、毒ガスで粘るよりも直接手を下した方が確実性が高い。


 だが、先のように見え透いた攻撃ではなく霧の中から霧のまま手を下せれば、相手からは見えず、自分からは相手が見えている状態で殺すことが出来る。


 そこに慢心は無く、ランと少女には見ることも見えることも無い。


(どうするも何も、俺達が限界なのを知らずに突っ込んで来たんだ)


 実はランも限界な上に、何と少女の回復魔法は一日に一度だけ使える特別な魔法。


 ここに戻ってきた時に、ランを治した一回で既に少女の回復魔法は使い物にならなくなっていたのだ。


(じゃ、じゃあ)


 そんな状況で、一見すると悪徳貴族が不利に思えていた盤面。


 しかし、実際には2人が不利。


 ランが考えたのは、見栄と虚勢で出来た罠を張ること。


 引っ掛かってくれるのなら御の字、引っ掛かってくれないのなら負け。


 そして問題は、この御の字以降にある。


 先程言った通り、ラン達には悪徳貴族が迫っているかどうかも分からない。


 故に当てずっぽうで、野生の勘で、一瞬の魔法の綻びを突くしかない。


 毒ガス化を解き、実体となり、ラン達の首を狙う瞬間を。


(まだ僕ちんの魔力はある、限界まで粘るのだ…!)


(まだ、まだだ…!)


 獲物を前に睨み合う二頭のライオンのように、互いに互いを焦らし合う。


(もう少し、もう少し粘るのだ…)


 今かと今かと、獲物に噛みつく瞬間を狙う。


(ここじゃねぇ、狙って来るとしたら…)


 ゆっくり、ゆっくりと一歩を踏み出す。


 焦らし、睨み、互いに互いを唆し合う。


(ここだ…!)


 悪徳貴族は、少女と言う獲物の首を。


(来る…!)


 ランは、獲物の首を狙う悪徳貴族を。


「まずは、貴様からだ!霧の中から現れる(サドゥンリアピーア)死神の手(グリムリーパー)!」


「噛み千切れ!雷撃直閃・雷音(ライオン)!」


 ライオンの雄叫びのように響き渡る雷は、悪徳貴族の首に届いた。


「っ…!?な、何で僕ちんが、見えて…!」


「これっぽちも見えてねぇよ、ただそんな気がしただけだ」


 回復魔法を使えると知れば、戦いに慣れている者なら真っ先に少女を狙う。


 戦い方や、その強さから戦い慣れしていると踏んだランは、それ一点のみに狙いを付けた。


「くっ、クソがぁっ……!」


 焦りから思考が狭まり、選択を早まってしまったのが悪徳貴族の敗因だ。


 強引な手段を取らなければ、結果は違った。


 とは言え、正義の前に悪が倒れるのは最早運命なのであろう。勇者が魔王に倒されたように。


 そして使用者が気を失ったことで、一部残ってはいるものの、ほとんどの毒ガスが消えた。


 これで一件落着。


「がはっ…!」


「ひぃっ!?だ、大丈夫ですか…?」


「あ、ああ、何とかな…」


 とは言い切れず、「2人して毒ガスを吸い込めば、帰れないで倒れるだけだ」と、少女の分まで毒ガスを吸い込んでいたラン。

 

 血を吐きながら膝をつくも、少女の手助けにより辛うじて立っていられる。


「早く、ここから出ましょう…!」


「悪い、助かる…」


「別に貴方の為ではありません、あくまでも私が困るからです」


「助けてくれるなら、何でも良いや…」


 随分と力持ちな少女はランに肩を貸しながら、気絶した悪徳貴族を片手で抱え込んで外に出る。


「無事だったか、ラン!」


「これの、どこが無事なんだよ…」


「一時は、どうなるかと思ったけど流石ランね」


「ま、まぁ?俺に掛かれば、この程d———がはっ…!」


「ひぃっ!?」


「早く回復魔法を掛けてやってくれ」


「はい!」


 外では控えていたレンとラン、そして騎士団の団員達が出迎えてくれた。


「ふぅ、助かったぜ…」


 毒気が少しずつ抜けて行き、ある程度は自分で歩けるようになった。


 本来、回復魔法は応急処置や多少の痛みが引く程度のもので、全回復する少女の魔法はかなり珍しい。


「まずは、この貴族をどうするかだな」


「それについてなんだけどよ、少し話がある」


「僕にか?」


「ああ、他の奴らには言えねぇ話だ」


「……悪いが皆、先に帰ってくれ」


「わ、分かりました」


 団員達は首を傾げながらも、言う通りに帰路に着く。


 リンも居ても良いが、なるべく少ない方が良い。


「あっ、お前も聞け」


「えっ、私もですか!?」


「何だよ、そんなに俺のことが嫌いなのかよ」


「大っ嫌いですけど」


「……」


「お前、相当嫌われてるな」


「…まぁ良いや」


 少女のことをよく知らないランに、嫌われるようなことをした覚えはない。


 どうせ知らぬ所で迷惑を掛けたのが原因だろう、といつものことのように気にせずに話を始めた。

2万3千字も書いておいて、ヒロインの名前出てないマ…?

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