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勇者と愉快な仲間達と少女、魔王を倒す旅に出る  作者: 逆張りオタクの天照大御神


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7/10

勇者と少女の悪徳貴族撃退劇 中編2


 時は少し遡り、3人が外に出た時。


「はぁ、はぁ、何とか外に出れたが…」


「ごめんなさい、私のせいで…」


「リンのせいじゃない、あの貴族が俺達よりも賢かっただけだ」


「……」


『レン様、リン様、ラン様、ご無事でいらっしゃいますか!?』


「その声、ブーカか!」


『レン様!良かった、ようやく繋がりました…!』


「何かあったのか?」


『いえ、何故か念話が使えずレン様達だけ連絡が出来ずに居たのです』


 この世界にスマホや電話は無いが、代わりに魔法がその役割を担っている。


 ブーカの扱う魔法は、念話。スマホ程の範囲は無いが、国内ぐらいの広さであればどこでも会話が出来る。


「…?」 


(念話が阻害されていたのか…?)


 無い話では無いが、何度か繋げようとして繋がらなかったのはブーカの口振りから明らかだ。


 だが、だとすればあの奴隷商人達が居た場所が、おかしいと言うことになる。


(いや、あそこはただの奴隷売買をする為だけの場所のはずだ…)


 エグゼステンス王国ならともかく、ここはコクリーン王国だ。


 そんなことをする必要が無い。


(……国内内部にも知られたくない秘密がある?)


 考えられる可能性は、それしか無いが、だとすればその秘密とは何かと言う疑問になる。


(………考えていても仕方がないか、今は先にやることがある)


 考えるにしても、もっと情報が欲しい。それよりも今はランが心配だ。


「ブーカ、回復魔法を使える者を連れて来ているか?」


『はい、おりますが』


「ランが危ない、場所を教えるから何人か来い」


『分かりました、ですが何かあったのですか?』


「毒ガスの魔法を使う貴族とランが交戦している、長くは持たん」


『何と!?そういうことでしたか…』


「来るのは数人で良い、下手に犠牲者を出す訳にはいかんからな」


『では、私とヒールと何人か部下を連れて行きます』


「助かる、座標は―――」


「あ、あの……」


「どうしたの?」


「あの、私…」


(あの人を勇者だとは思いたくない、でも本当に勇者なら魔王を倒せるのはあの人しかいないんだ…)


 言いたくは無いが、目的の為に躊躇っている余裕は少女には無い。


「悪いが、君に構っている暇は無いんだ。ブーカ、至急頼む」


『承知しました』


「私、回復魔法が使えます…!」


「本当か…!いや、しかし…」


 少女を戦場に戻すのは、国王として賛成出来ることではない。


「レン、この子を連れてってあげて」


「ダメだ、こんな幼い子を戻すなど出来ない!」


「大丈夫、この子ランを一発殴ったのよ?」


「だからと言って!」


「それに、何かあるみたいだし」


「…!お、お姉さん!」


「…責任を取れるのか」


「責任なら、ランに任せるわ」


 あれなら大丈夫だろうと、理論でも感情でも無い信頼。


 仕事を通じて、旅を通じてラン・オーガストと言う男への評価。


「全く、あいつを信用し過ぎるのはどうかと思うぞ」


 そんな信頼を寄せているのは、リンだけではない。


「でも、レンだって同じでしょ?」


「仕方がない、名も知らぬ少女よ」


「は、はい…」


「悪いが、ランを助けてやってくれ」


「はい…!」


  *  *  *


「で、回復魔法を使えるお前が来たって訳か…」


「そうです」


「探していた女に助けてもらうのは癪だが…」


 四の五の言っている余裕はランに無い。


 ここは大人しく、助けて貰うのが最善だ。


「じゃあ、魔法を掛けます」


「ああ、頼む…」


 そう言うと少女は、ランに魔法を掛け始めた。


状態異常(アブノーマル)回復(ヒーリング)…!」


 すると見る見る内に、毒が引いて行く。


「お前、この魔力…!」


 毒が抜け、気分も良くなることもだが、何よりもランが驚いたのは、その魔力の質。


 ついでのように傷も回復して行く辺り、かなり高等な回復魔法だ。


 明らかに普通の魔法では無い、しかしこの魔力の質にランは覚えがあった。


「…ふぅ、これで毒が抜けて傷も回復しました」


「まさか、お前もなのか…!?」


「…?」


「……いや、礼を言うのが先だな。ありがとう、助かったぜ」


「い、いえ私は別に…」 


「つーか、瓦礫で出入り口埋めたのに、どうやって来たんだ?」


「えっ、普通にどかしましたけど」


「あー、そう…」


 どかすにはあまりにも大きいものばかりで、男でも数時間は掛かると言うのに、この体のどこに、そんな力があるのかと聞きたいが。


 今は、それ所ではない。


「まだ、どこか痛むんですか?」


「って言うのは一旦、置いておくとして」


「何だね」


「てめぇ、こいつの回復魔法を見て驚かなかったな」


「……」


「それが、どうしたんですか…?」


「リンの魔法を見て、こいつはビビってた」


「そ、そうですね、確かに驚いていました」


「可笑しいだろ、回復魔法は使い手が少ない希少な魔法だ」


 傷を一瞬で癒せるのは正に、チートと言って良い。


 理論上は無敵の兵隊を作れるからだ。しかし、その理論値故にか使い手は少ない。


 そして扱うにも、かなり高等な技術を必要だ。それこそ、自分自身を物質化するよりもだ。


 いくらリンが風魔法の使い手の中でも上澄みの存在とは言え、風魔法自体は割とメジャーな魔法の一つでもある。


 他所の国とは言え、大抵の事情や国柄は知っているが、コクリーンでも回復魔法は希少の筈だ。


 見たことがあるにしろ、冷静で居られる程の数を見たことがある訳が無い。


 だが悪徳貴族は、風魔法には驚いていたが少女の回復魔法には驚いた様子は無かった。


 普通なら回復魔法の方が驚きを勝るはずだ。ラン視点で考えられる理由は一つだ。


「あんた、一体何者だ?ただのコクリーン国民じゃないだろ」


「それって、どういう意味…?」


「僕ちんはただのコクリーン国の貴族だが?」


「じゃあ、もう一つ聞くぞ()()()


「……何だね」


「何で俺達を殺そうとした」


 狸野郎、と言ったのは毒ガスを回していたことではなく、この悪徳貴族の狙いが、この状況であることを悟らせない為の演技だからだ。

 

「街中に逃げられれば、いくら僕ちんとは言え追うのは難しいからね」


「逃げられて困ることなんて、あんたには無いだろ」


「僕ちんが、この場所を利用しているのがバレたら困るんだ」


「コクリーンは奴隷の売買が盛んだ、誰も口に出さねぇが全員が知っている話だ」


「……」


 悪徳貴族からすれば、バレた所で国が匿う。バレればコクリーンも被害を受けてしまうからだ。


 そう、この悪徳貴族にラン達を殺す必要も意味も理由も無い。バレた所で、隠せば良いだけ。


 互いに何も無かったことにして、少女を引き渡せば良い。1人の少女を奴隷にする為に意固地になった所で、損をするのを貴族側。


 なら何故、そこまでのリスクを承知でラン達を殺そうとしているのか。


「まだ、狸で居る気か?」


「…これ以上のことが、あると?」


「ああ、獣の臭いがプンプンするね」


「……全く、鼻の良い奴だ」


「で?誰の差し金だ」


「答える訳、無いだろ!毒霧の楽園!」


「そうかい、んじゃ全力の俺を止めてみろ…!」


 ここまで来たのなら、誰かが裏で糸を引いているのは間違いないだろう。


(速いっ…!こいつ、さっきまでは本気じゃなかったのか…!)


「超雷撃乱射!」


「ぬぐっ…!」


(僕ちんに、攻撃が当たった…!?)


 毒ガス化はしている。実際の雷程では無いが、ビリビリと体が痛む感覚がある。


 静電気のようなものではあるが、微かに当てられている。


「超雷撃直閃!」


「雷が、毒ガスに当たると思うなよ!」


(恐らく広範囲攻撃が偶然、当たっているだけ!ならば問題は無い!)


 ランの渾身の一撃でも、やはり悪徳貴族には大したダメージにはならない。


「ちっ!全然当たった感覚がしねぇ、本当に強いな!」


「当たり前だ、僕ちんはコクリーン国の魔法学校を首席で卒業したエリート中のエリートなんだよ!」


 二度目の悪徳貴族対、ラン・オーガストの戦いの火蓋が切られた。


 勝つのは悪党を懲らしめる雷か、自然すら食いにかかる毒ガスか。



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