少女、小悪党に捕まってしまう
国の偉い人達に捕まえられ、拷問を受けてしまうと勘違いした少女が路地裏で泣いていると、見るからに小悪党な集団に見つかってしまう。
「どうした嬢ちゃん、こんな所で泣いて」
リーダーなのか兄貴分なのか一際、図体のデカい男が少女に話し掛ける。
「じ、実は悪いことをして思わず逃げて来ちゃって…」
しかし涙で前が見えないせいなのか、元々の頭の悪さのせいなのか、少女は気付かずに悩みを打ち明けてしまう。
「おおーそうか、それは災難だったねー」
悪党達にとって、少女が泣いている理由に興味は無い。
あるのは、この少女に奴隷としての価値があるかどうかだけ。
「誰にも助けを求められないし、求めたところでどうしようもなくて…」
「そうなのか、そりゃ悲しいだろうな…」
(思ってもいないことを…)
「だから、行く当てもなくて…」
「へぇ~、そうなのかい」
(兄貴、こいつ)
(ああ、引っ掛かったな)
奴隷を探しているとは言え、この国で奴隷は居ないし奴隷商売も禁止されている。
しかし、それでも奴隷商売をする者達は居るし、買う人間もいる。
彼らはそれで金を得ている商売人達。久々の獲物に喜ぶ。
「なら、俺達と来るかい?」
「えっ、でも…」
「良いんだぜ、遠慮しなくて」
「じ、じゃあお言葉に甘えて」
少女は自分の行き場所が、檻の中とも知らずに着いて行ってしまう。
(ちょっと小汚いが、その手の趣味の金持ちが食らいつくだろ)
幼い外見の少女だが、商売人からすれば売れれば何でも良い。
(流石兄貴だぜ、こんな簡単にガキを宥めちまうなんて)
(これぐらい朝飯前よ、にしてもやけに簡単に引っ掛かりやがったが何したんだこいつ)
(それより、早く行かないと怒られますよ)
(ああ、少し早めに行くか)
商人達は何も知らないのを良い事に、少女を連れ去る。
* * *
一方でランとリンは、と言うと。
「クソっ、あのガキどこ行きやがった!?」
「ここは世界有数の大都市、たった一人の人間を見つけるのは難しいだろ」
「国王様」
「やめてくれ未だに慣れてないんだ、レンで良いだろ」
「分かりました、国王様」
「リン、お前な…」
「良いじゃない、国王なんてなりたくてなれるものじゃないのよ?」
友達にからかわれて困った様子を見せる青髪青眼鏡の落ち着いた外見の男はレン・エイプリル、国王にして、元勇者のパーティーの一員。
「俺はなりたくなんか無かったけどな、それよりラン」
落胆しているが、それよりも頭の痛い話がある。
「何だよ」
「お前、また問題を起こしやがったな!」
「悪党を懲らしめただけだ、何が悪い!」
国王であるが故に、秩序を重んじるので問題ばかりのランとは喧嘩が絶えない。
「何度も言うが限度があるし、街を壊すな国が出すとは言え金がかからない訳じゃないんだ」
「うるせぇよ、バカ」
「っ…!てめぇのせいで、どれだけ借金してると思ってんだ脳無し野郎!」
「知らねぇよ!そんぐらい自分で何とかしろ!」
「な、何とかしろだと…!?よく、そんな事が言えたもんだな!」
そもそもの話、ランが問題を起こさなければ良いだけので、レンの問題ではない。
「喧嘩してる暇あるの?今はあの子を探すのが先でしょ、奴隷商人でも捕まったらどうする気よ」
「「……」」
喧嘩をせども二人は自分達が今何をすべきかは承知している。
「これが終われば決闘しろ、ラン」
「ああ、やってやるよレン」
(はぁ、もう少し落ち着いてくれないかしら…)
リンが溜め息を吐くのは王国内でも喧嘩が絶えないからではない。
喧嘩をするのは良い、しかし2人して被害を出す上に世界最強の勇者と、その相棒を務めていた者の殴り合いを止められる者はいない。
その為、口喧嘩をしている間に仲裁に入らなくてはならないが、この2人の仲裁をするのも中々に胃が痛い。
とは言え、決闘をされれば周囲への被害が出るのは目に見えている。
秘書だの補佐だの聞こえ良く名乗ってはいるが、実際はただの苦労人枠だ。辞めれるものなら今すぐにでも辞めたい。
しかし、いざとなれば頼れるのがこの2人だ。それだけ信頼出来る実績と実力が2人にはあるのだから。
「お三方、ここにおられましたか」
「ブーカか、どうした」
「探していると言っていた少女なのですが…」
「どうした、何かあったのか?」
「それがですね、非常に申し訳ないのですが…」
男は言葉を濁しながらも、少女は奴隷商人に連れ去れられたことを目撃したと、住民からの通報があったと言う。
しかも、装いを見るに隣国の者だとも言っていた。
「しまった、まさか隣国の商人に捕まるとは…」
「おい、それじゃ」
「もし既に入国されていれば、手が出せん…」
隣国・コクリーンはエグゼステンスとは仲が悪く頻繁にぶつかる事もあり、各国の王を集めた会議では常にいちゃもんをつけてくる。
とは言え、向こうも一つの大きな国である以上は下手に手出しは出来ない。
だが国境付近で奴隷商人が人攫いをしている、と言う噂があるもコクリーンは「勝手に迷い込んで住み着いただけ」と認めず、こちらもしっかりとした証拠を掴めず問題解決が出来ていない。
「今回もしてやられたわけか」
「申し訳ありません…」
「いや君のせいではない、悪いのは僕だ」
「ちっ、あいつら好き勝手しやがって」
流石の暴れん坊将軍、もといランも相手が国となれば下手に手を出せない。
最悪、戦争を仕掛けられるからだ。そうなれば国民への被害は大なり小なり出てしまう。
勝てはするが、今はその時では無い。
「仕方があるまい、今回は諦めるしか」
「待って、良い方法があるわ」
「方法?」
「ずっと考えてたことなんだけど、いい機会だから」
「?」
そう言うとリンは、ある作戦を思い付いたことをブーカ含めた3人に話し始める。
「リ、リン殿、それは…!」
「ちょっと危ない橋だけど、渡れない訳じゃないわ」
「ははっ、面白くなってきたなオイ!」
「全く、無茶な作戦を思い付く」
「あら、その無茶な作戦をしているのは一体誰かしら」
「仕方がない、こうなれば背に腹は代えられないか」
こうしてラン、リン、レンとブーカは軍隊を引き連れ、隣国に向かった。




