エステルとやまい2
今回は全開の倍近く。
「ここは?」
「・・・そこの文字はこちらにすると効果が発揮されやすいのですよ?」
「・・・へぇ、なるほど。」
あれからさらに一週間ほどが経ち、その間ずっとエステルに魔法陣を手伝ってもらっている。
やはり、つきっきりで見てくれる人がいると進行具合がまるで違う。
魔力ラインで刻んだ木彫りの印。
それを掲げて軽く起動する。
文字が浮き上がり、魔法が発動。
炎の球がふわふわと浮く。
けれど・・・
「大きすぎないかな?」
一応、庭のテラスで発動しているのだが炎の球が軽トラックの長さくらいの直径である。
そしてそれらの周りに小さな・・・炎の球が浮き、まるで太陽を中心に公転する惑星のように回り始める。
すなわち炎でできた太陽系の縮図のような形になった。
火にあぶられた芝生の水気が飛んでチリチリになる。
周りにいた生徒たちも、どよめいていた。
「ま、魔力を込めすぎです!は、早くっ!!早く切ってっ!切りなさいっ!!っていうか、あつっ!?暑いですっ!?いや、熱いですわっ!?」
「あ、ああ、うん!!」
魔法陣にはいざという時のための停止機能がある。込めた魔力を空気中に拡散するための文字が刻まれているのだ。
すぐに縮小して消えてなくなる炎の玉。
今の魔法は炎系上級クラスの魔法『シュステーマ・ソラーレ』。
学園で学べる魔法の中では最高峰に位置する難易度である。
しかし、それは攻撃呪文の話。
これクラスの魔法をすべて安定して作れるようになって初めて、回復魔法にとっかかれる。
回復魔法はそれほどに敷居が高いものなのだ。
「し、死ぬかと思いました・・・というか、あれほどっ!!
あれほど少量で良いと言ったではありませんかっ!!私の持つ全魔力と同等に込めるとかその頭には何が詰まっているんですのっ!?
ほんのちょっと込めるだけでも家の一つ二つ消し炭にできるんですよっ!?
そ、それをあんな・・・あれが暴発したらこの学園の5分の1が吹き飛んでいたところですっ!」
「ご、ごめんなさい。」
いや、一応かなり加減したんだ。
ほんのちょっとのつもりだったんだが・・・成長期らしく、ぐんぐん魔力が伸びてる僕にとってのちょっとがそれくらいだったってだけで、などと言い訳しても嘘だと思われるか、人間かどうかの疑いをかけられるのが関の山。
素直に謝るしかない。
ちなみに僕たちに持たされるシンボルはそういった暴発があっても命だけは助かるように魔力を弾く素材で出来ていて、ちょっとおイタをしたがる生徒がいてもダメージを負わせることはできないとのこと。
そもそも学生の身分でそこまでのレベルに達する生徒はいなかったのだ。
いたとしても大抵は真面目で勤勉な学生。問題ないとされていたのだが。
後日、強力な魔法が書かれた書物の閲覧が禁止された。
不用意に発動させて危うく誰かしらを怪我させてしまうであろう、前代未聞の生徒が現れたからである。
言うまでもなく僕だった。
申し訳ないとです。
とはいえ、悪いことをする奴は馬鹿な奴でもない限り、隠れて悪いことをするはず。
水面下ではそういった魔法の悪用がされていたはずだ!とオルベインさんに愚痴っていたら、オルベインさん曰く、それは確かにいた!ということで、しかし証拠がないため、勉学の機会を失うであろう禁書扱いにはできなかったそうな。
そこで分かり易い失敗をしてくれた生徒がいた。
それすなわち僕である。
だったらこれ幸いと学園は即刻、整備を敷いた。
そういった裏事情や僕の勉学態度が真面目で優秀、かつ人柄が特に悪いわけでもないというのもあって、学園関係者は僕に対して非常に感謝しているそうな。
怪我の功名というやつである。
内心、結構大きな問題だと思って不安だったのでその点は安心だった。
ただ悪いことをしてた生徒には受けが悪いようである。
逆恨みとかないかちょっと怖かったが、その点は教師がちゃんと見ているとのこと。
すっごい良い教師たちが揃っているようだ。
むしろこれまたちょうどいいらしい。
今まで隠れて悪さをしていた生徒が僕を、もしくは仲良くしてるエステルややまいを襲うところを現行犯で捕まえればそこから芋づる式に他の悪事をーという具合だ。
とはいえ、それはさすがに申し訳ないと思ったのだろう。
僕たちだけは悪用しないという条件のもと、禁書扱いの魔法書を見せてくれる上に、回復魔法の教師も協力的になったということで結果的にはかなり良い状況になった。
悪事を働いていた生徒さんに感謝したいほどに。
そんな事件もあって、またしばらく。
いろいろと様子を伺っていたのだが、そろそろ動くべきだろう。
「エステルはやまいと仲直りしたい?」
「したいです!」
即返答。
「そう。」
「・・・あ、いえ、今のは忘れてください。
今更どうして仲直りなどできましょう。私に・・・そんな資格など・・・」
即答したことを恥じるように尻すぼみになるエステル。
資格、か。
資格ってどこでとるんだろう?
青春漫画なら資格なんていらないだろっ!とか大事なのは仲直りしたいかどうかの気持ちだっ!とかクッサイセリフを吐いてしまうのだろうが、ちょっとそれは恥ずかしい。
ので、適当にスルーさせていただこう。
「街の中央に噴水広場があるよね?
そこにやまいを送る。」
「え?
・・・いえ、ですから・・・」
「もう一度二人きりで会ってよく話せばいいさ。時間は・・・明日の12時の昼に。」
「・・・でも。」
「仲直りするしないは置いておいても、後腐れ無いように、ひどいことを言ったこと。それは謝っておくべきじゃない?」
「・・・。」
「罪滅しの様な自己満足で・・・とか言ったよね。そんな贖罪のような気持ちから接される人は複雑だと思うな。・・・言わなくても分かりきってると思うけど。」
「・・・あなたは・・・」
「僕は別に。ただ、君がそのことを勝手に気にしてちょいちょい、ジメられるのは嫌。」
そうそれが気になるのだ。
僕は気にしてないのに彼女が「こんな贖罪の気持ちでこの人と一緒にいる私は・・・」みたいな面構えをするのだ。
耳が痛いことに、そんな感じのつぶやきまでする始末。
そこまで気にするならとっととスッキリして来いや!と言いたい。
一応言っておくが、これは気遣いではない。
単に一緒にいる人間にジメられると僕がイライラするのだ。それだけである。
「・・・本当に、飾り気がありませんね。」
「これは無粋って言うんじゃないっけ?」
「・・・あら?そうでしょうか?
私はそうは思いませんでしたが。」
・・・違うのに。
何か彼女は重大な勘違いをしているらしい。
「せっかくのお気遣いです。
お言葉に甘えましょうか。」
そういう彼女は少しだけ、憑き物が取れたような笑顔でこちらを見ていた。
☆ ☆ ☆
「やっまーいっ!
だーれだっ!?」
「・・・タコ?」
「あたり。」
寮に変えるとちょっと不機嫌に見えるやまいがいたのでご機嫌具合を知る意味でも目隠し遊びをしてみた。
最近、僕が喧嘩別れした憎い友達と仲良くしてるから怒ってる、というのはちょっと違うか。
何かの葛藤で落ち着かないように思える。
「友達欲しいとは思わない?」
「・・・タコがいるもん。」
ぶすっとしながら答えるやまい。
この返事と態度。
僕が何を言いたいか察してるように見える。
ならば単刀直入に行くべきか?
「・・・エステルさんとかどうかな~。」
「・・・だれ?」
そっぽを向きながらいつもよりも気持ち平坦な声音で返事をするやまい。
とぼける気か。というか、知っていたなら前に名前を出したときに・・・名前がうろ覚えのまま言ったような。
でも、苗字は言ったはずで。
苗字を覚えてなかったのだろうか?
「やまい。」
「や。」
「友達の一人二人は・・・」
「いや。」
「ほら、頑張ってみようよ。」
「やっ。」
「さすがにもう怒ってないでしょ?」
「やっ!」
ど、どんだけ嫌なんだ。
無理強いするところではないか?
「ひどいこと言われたって話だけど・・・まだ気にしてるの?」
「・・・別に。気にしてない。」
顔を伏せながら言うので表情は見えないものの、声音からして嘘ではなさそうである。
「じゃあ・・・」
「・・・タコは友達がいた方がいい?」
やまいは僕をじっと見て言う。
その瞳はどこか揺れていた。
「そりゃね。そして、やまいの友達ができたら僕だって嬉しいし、やまいだって嬉しいと思う。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
長い間を置き、やまいは頷いた。
「とりあえず一回、話すだけでいいんだ。
一回だけ話してみない?友達になるかどうかは置いておいてさ。」
「・・・・・・・・・タコが言うならそうする。」
次の日。
あえて僕はついていかなかった。
こうした話は他の人間が深く関わってもどうにもならないだろうし、変にこじらせることになるかもしれない。
お互いシコリをなくす。
それを目的に、その次の一歩はお互いが歩み寄るしかないと思うのだ。
「机がぴっかぴかだな。」
落ち着かなかったので、勉強は手につかず。
かといってただジッとしてるのもできず。
とりあえず落ち着かなくても出来る掃除をしてみたのだが。
つい熱中して部屋がぴかぴかになってしまった。
机なんて新品同様に見える。
ちなみに洗剤がわりに使ったのは僕のタコスミ。
オウェーと吐瀉物を撒き散らすように机に満遍なく塗したあとに乾いて、なぜかゴム状になったタコスミをペリペリと剥がすとあら不思議。
ガンコな汚れも一緒に剥がれるのである。
酸化して腐食した?と思われる場所なども綺麗さっぱり。僕のタコスミには還元作用でもあるのだろうか?
掃除してる時に、ホコリで咳き込んだタコスミを拭いた時に気づいたのだ。
タコスミの検証をしてるうちに夢中になってしまったというわけ。
が、それにも終わりはある。
もう約束の時間から3時間は経っている。
時間がかかりすぎではないだろうか?
余計にこじれてしまったのだろうか?
やはりお節介が過ぎたのだろうか?
そんな心配をしては同じことをグダグダと考えていると、扉がキィと開く。
そこを見ると。
「た、タコ。」
「タコさん。」
二人揃って僕に礼を言ったのだった。
うまくいって何よりである。
それからの時間はあっという間だった。
僕とエステルの間にやまいが加わり、三人でお勉強の日々。
非常に充実した日々だった。
楽しいことは続く。
が、それは唐突だった。
そう唐突だったのだ。
やまいの魔法薬の修練も最終段階。
もうそろそろ卒業が本当に近くなってきた頃。
三人が、時にはティキも混ざることもあり、そんな仲のいい日々を過ごして3ヶ月。
「ひどい雨の日だな。」
「タコ・・・最近、私のところに頻繁に来てない?」
ティキのところにいた。
外はすごい大雨。
こんな日だというのにエステルとやまいは二人でお出かけ、もとい素材集めである。
雨の日にしか花を咲かせない植物の花粉が必要なのだとか。
確か植物が花を咲かせ、甘い匂いを放つ花粉を作るのは昆虫に花粉をまさぐってもらうためだったはず。
まさぐる際に雄しべや雄しべの花粉が昆虫の体に付き、それが他の花に移った時に雌しべに張り付き種ができる。
雨の日にしか咲かさせない花に存在意義があるのかどうか気になったものの、花とはその美しい外見だけでも十分に存在意義がある。
別に問題なかった。
・・・一応言っておくけれど冗談である。
とにかくその花は珍しくないものの、薬剤化でないと使える花粉なのかが見極められない材料であるがゆえに市場ではほとんど流されず、なおかつ僕が取りに行ってもそれまた見極められない。
なので二人が直接赴いたのだった。
ちなみに、僕も行こうと思ったのだが近くの森のホント近い場所にあるようで大丈夫だとのこと。
過保護なのもどうかと思ったし、そんなことで嘘をつく意味もない。
足場がぬかるんでるから気をつけるようにとだけ言って、僕はティキのところに遊びに来たのだった。
「あの二人がいい感じに仲良くなってるからね。」
「・・・まったく、難儀な子だわ。」
「ところでまだイライラは取れない?」
彼女には簡単な実験体、というと言い方が悪いがやまいの副作用の影響を受けたモニターとでも言おうか。
そのモニターとしていろいろと協力してもらってる。
副作用をどうにかするための何かしらのヒントが掴めればと藁でもすがる思いだ。
ちなみに加護については話している。
が。
「頭では理解していても・・・感情がね。」
「その割には結構、トゲ無くやまいと付き合ってる感じだけど・・・」
「非のない相手に当り散らすような真似は私の正義じゃないの!」
と、腰に携えた剣を掲げて叫ぶ彼女のその姿は様になっていた。
忌避感や嫌悪感よりも正義感に天秤が傾いているということなのだろう。
人助けの精神はどうも筋金入りのようだ。
ここまでくるともう、素直に尊敬の念を抱く。
スバルさん、苦労しそうだな。
「ちなみにその剣の名前は?」
「え?
これ?月光の壮麗剣だけど・・・それが?」
・・・おっふ、こいつは想像以上だぜ。
まぁいいや。
やっぱりどんなに時間が経っても忌避感などは消えない。
一度嫌われた人間には決して好かれることはないということになる。
どうしてこんな加護を持つように生まれたのだろうか?
そもそも加護ってなんだ?
僕の持つ加護はグリューネから与えられた。
じゃあ、やまいの加護は?
邪竜に会ったっていうのか?
いや、そんな話は聞いたことがない。
そもそも邪竜ってなんだ?普通の竜とはどう違う?
やまいの副作用を治すにはまずは加護が何で、邪竜とは何なのか。そこから調べる必要がありそうだ。
当然、図書館で調べたのだが、ほとんど情報はなかった。
すでに知っている情報だけ。
「・・・もう一回、図書館に行くか。ああ、それと多分あと一月以内にはこの街を出るつもりだから。
旅支度は整えておいて。」
文字はこの三ヶ月で怪しげながらも覚えた。
「え?」
「好きな男でもできた?」
わざとらしいニヤけ顔を作りながら。
「そ、そんなんじゃないけど・・・ただ結構長くいたから・・・」
「・・・まぁ気持ちはわかるよ。」
オルベインさんや、魔法科のおばさん先生、というと失礼だがプレシアさんなど仲良くなった人は僕にだっている。
ほとんどの時間を勉強に費やしてきた僕ならともかく、冒険者組合の仕事と称して人助けをしてきた彼女にとっては僕以上に知り合い、もしくは友人だってできただろう。
なにせここには4ヶ月くらいたのだから。
「そのへんの心の整理もつけておいて。なんなら残ってもいいし。」
「・・・そういうわけには行かない。私の夢はスラム街を救うことだから!」
「そう。」
なら僕に言うことはない。
☆ ☆ ☆
図書館に行くところでエステルに会った。
びしょ濡れである。
雨も滴るいい女、というやつか。あれは男だっけ?
「あれ?やまいは?」
「タコさん・・・タコさんっ。」
そのまま泣き崩れるエステル。
「ど、どうしたの?」
「私、やまいさんのことがどうしても好きになれないのですっ!!どうしたらいいのですかっ!?」
全速力で走った。
今までにないほどの速度で。
周りの人間をひき殺しかねないスピードで。
建造物が、人ごみが邪魔でエアジェットで空に駆け上がり、そのまま上空を、体に風を打ち付けるように、今までの魔法の集大成を使って今出せうる速度でやまいの元へ向かった。
『・・・おそらく迷宮の入口に・・・私ひどいことを・・・どうして・・・どうして私はあのようなことをっ!?』
彼女もまた戸惑っているのだろう。
いきなり湧いて出た嫌悪感、忌避感。その正体が全く分からず、親愛を向けていた相手を唐突に不快に感じだのだ。
彼女の心はぐちゃぐちゃだったはずだ。
彼女に対してもまた誰かしらの慰めが必要だと頭のどこかで分かった。
が、僕は迷わずにやまいのもとへ駆けていった。
「・・・はぁ、はぁ・・・やまい。」
僕の全速力はそれこそ本来ならば徒歩で1時間はかかる場所を一分でついていた。
迷宮の入口でぽつんと。
体を丸めて座り込む少女がいた。
体が震えているのはこの大雨に打たれて寒いからだ。
そう思いたかった。
エステルが帰ってくるまでに最低でも一時間は経過してる。
つまり。
その間ずっと雨に打たれていたのかもしれない。
彼女のそばには泥で汚れた盾が二つ。
無造作に投げ捨てられていた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・っ。
やまい・・・?」
近くに行って、やまいの肩に手をかけるが。
「さわらないで。」
手を叩き落されたわけではない。
何か見えないバリアがあるわけでもない。
でも、僕の手はまるでそうされたかのように弾きとんだ。
いや、僕自身がどけたのだ。
「や、まい?」
・・・僕は悪くない。
「いやだって・・・いやだって言った。
いやだって言ったのに・・・」
「・・・ご、ごめん。やまい、こうなるとは思わなかったんだ。」
そうだ。
僕は悪くない。
「いやだった。」
「な、何が嫌だったの?」
僕の声は震えていて、まるで割れ物に触るかのようにオドオドとしていた。
「でも、タコが言うから・・・タコの言うことなんて・・・でも・・・なんでタコの言葉を聞いたんだろ・・・」
「だ、大丈夫だよ。ほら・・・ほ、ほら、友達ならまた作ればいい。ここで諦めずに・・・」
ブツブツと何かしらをつぶやくやまいに僕は何を言っているのだろうか?
大雨のはずなのに、口の中だけは砂漠のように乾燥していた。
「あきらめず・・・?また・・・?」
やまいが動いた。立ち上がった。
自然、顔がこちらに向く。
見たくない。
見たくない。
見たくなかった。
でも見てしまった。
不思議と顔が動かなかった。
「そんなの・・・いっぱいやってきたっ!!!!」
めちゃくちゃだった。
ぐちゃぐちゃだった。
泣いて顔を歪めて、という見た目の話ではない。
彼女の瞳が。
流れる涙が。
まとう雰囲気が。
まるで今の彼女の心情を顕しているかのようにぐちゃぐちゃだった。
感情が、気持ちが、ぐちゃぐちゃで。
ぐちゃぐちゃで、ぐちゃぐちゃとしか言えなくて。
思わず僕は目を逸らした。
「今ままでなんどもやってきた・・・でもダメだったっ!
あれも、これもっ!!
全部、全部、全部っ!!
皆私を嫌って去っていくっ!!
だからっ!!だからっ!エステルを遠ざけたのにっ!!
あんな、あんなに苦しい思いをしてまで遠ざけたのにっ!!
きらわれたくないからっ!!
きらわれたくないから遠ざけたのにっ!!
会いたくなかったっ!!会って謝られたら・・・あやまられたら・・・ともだちになりたくなっちゃうっ!!だから・・・だから・・・なのに・・・」
どうして、どうしてエステルを避けていたのか。
それが今分かった。
今更ながらに分かった。
嫌われたくなかったのだ。
嫌われたらそれで終わってしまうから。
本当の友達だと思っていたからこそ遠ざけていたのだ。
「なかなおりだって、したかったっ!
でもそれ以上に・・・それ以上に・・・きらわれたくなかったっ・・・」
苦しそうにそう言って。
彼女は泣きながら。
「一番いてほしい時にいなかった・・・一番慰め欲しい時にいなかった・・・一番助けて欲しい時に助けてくれなかった・・・・・・タコは、」
僕にとって今一番言って欲しくないことを言葉にした。
『一番してほしくないことをどうしてしたの?』
「・・・っ。」
全くだ。
何が「こうした話は他の人間が深く関わってもどうにもならないだろうし、変にこじらせることになるかもしれない。」だ。
十分にこじらせているではないか。
いや、最悪の形を作っているではないか。
一生懸命作った料理にそのへんの泥水をぶっかけ、混ぜて、踏みつけて、かやしてブチまけるような最低、極まりない横合いだ。
「ど、どうしてって・・・そ、それは・・・かぞくだから・・・」
「今までいなかったくせに・・・かぞくづらしないで。」
「・・・っ。」
「私の家族はドード一人・・・だから。」
じゃあ、再開した時のあの笑顔はなんだったんだっ!と怒鳴りたかった。
そうしようとして、やまいの顔を見て。
「・・・・・・っ。」
彼女の顔はぐちゃぐちゃな中にもはっきり色濃く出ていたものがあった。
怒り。である。
敵意、殺意。
そう呼べるほどのレベルの怒りが僕に向けられていた。
家族の・・・かぞくの・・・いや。
保護者の僕に。
これにて次章に。
シリアスが続きます。
毎回、ひとつはあった感想がなくなってしまったので若干不安になりながらもやりたかった話の半分はこれにて終了。




