水晶砦
ちょっと短め。
感想でやはり「重くて勘弁」と言う趣旨のものがありました。
申し訳ありません。
でも、この話だけはやりたかったんです。
この章が終わり次第、元のくてっとしたグルメリポート風になると思いますので御容赦を。
がたごとん。
がたんごとん。
がたんたごとん。
がたごとん。
がたんごとん。
がたんたごとん。
馬車がガタゴトと一定のリズムを刻みながら進んでいく。
馬車の中には僕とやまいとティキ。
他にも数名が学園都市アルタイルを出ていくのであろう。乗っていた。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・なにこの空気。」
ティキが一人で気まずげにしている。
僕は別にそうでもない。
そう。
僕は。
「いちおう鱗鳥のサンドイッチを作ってきたんだけど、食べる?」
「い、頂くけども・・・何?この空気。何があったの?」
「別に・・・何も。やまいも食べる?」
「っ・・・う、うん。」
やまいにも手渡す。笑顔でもって。
やまいはどこか戸惑っていた。
口に含む鱗鳥の肉をはさんだサンドイッチは非常に面白い食感が特徴の鶏肉だ。
鱗鳥の肉の中には鱗のようなつぶつぶとした繊維がある。
皮膚すべてがウロコに包まれている鱗鳥の場合、成長にしたがって日々、鱗が生え変わったり増え続けているようで、そのための生成器官として筋肉が使われているらしい。
ゆえに幼鳥の場合、その元となるツブツブが筋肉の中に無数に存在していて、それをパリっと噛み砕く食感が楽しい。
お肉自体はニワ鳥のささみのように淡白で、しかし鶏肉特有のあっさりとした味のする肉汁は多く、パサパサとはしていない。
むしろ水分が多いくらいで軽くべちゃっとするほど。
それがパサパサのパンと丁度良い塩梅で交わって、いい具合のしっとりサンドイッチができるのだ。
鳥肉の香りと味がパンにも染み込み、当然鶏肉自体にもある程度の下味はつけている。
噛み締めるたびにパリパリとした食感と、薄くはない鳥肉の味が口に広がり、それをパンがやさしく包み込んでお口にお届けする。
何か軽いものを食べたいな~っと思ったときに、おすすめしたい一品である。
「おいし。口の中でパリパリって・・・おもしろいね、これ。」
「そうだろう?・・・やまいはもう食べないの?」
「・・・い、いいの?」
「なにが?
食べたいならほら、遠慮しないで。」
あまり食が進まない様子のやまい。
周りの人が羨ましそうにサンドイッチを見ているからだろうか?
「・・・うん。」
やまいは笑顔でいるはずの僕を不思議そうに見ながらサンドイッチを食べ続けた。
☆ ☆ ☆
「ねえ、ほんとにどうかした?」
「なにが?」
夜。
馬車の中で寝るにはちょっと厳しいので、寝るときは基本みんなで野宿という感じである。
僕が一人でぶらぶらと付近を散歩していると、ティキに出くわした。
「・・・何か変だけど?」
「だから、何がさ。」
「・・・うまく言えないけど・・・あの子に対してよそよそしくなってない?」
「・・・そんなことは・・・ないと思ったんだけどな。」
やっぱりどこか分かってしまうのだろうか。
そう。
僕は決めたのだ。
やまいに対して過剰に接してきたのが今回の原因だと分かった。
なら特別干渉する必要はない。
保護者として、ただの子供を引率するお兄さんとしてやまいと一緒にいればいい。
別にこれは悪いことじゃない。
そもそも当初の予定では彼女には僕の住処を他の動物から守ってもらうために奴隷として引き取って来たのだ。
使えないと知っても引き取ってしまった以上、責任はあるわけで保護者として育てようと決めていた。そう、その時と同じ。
戻っただけである。
そもそも、彼女と過ごした時間なんてのは一年にも満たない。
そんな相手がイキナリ家族だとか言い出してもむしろ『おまえ、なにさまよ?』と言われるのが関の山。
僕の勘違いが解けた。
そう。
これはそれだけの話である。
よそよそしいのは今までのーそう。
保護者としての接し方を忘れてしまったためだ。
家族だという認識でもって動いていたためにそのときとのギャップから違和感を感じ、それをティキは『よそよそしい』と言ったのだ。
それだけの話。
「これが正しい接し方さ。」
今までどおり。
誰であろうと、いつであろうと。
誰かの内側に深く踏み込む必要なんてどこにもない。
「・・・タコはもうちょっと大人だと思ってたけど・・・まぁ私よりも年下だもんね。」
年下?
忘れがちだけど僕は一歳にもなってなかったな。そういえば。
「・・・どう言う意味さ?」
「そのままの意味に決まってるでしょう。」
全くわからなかった。
彼女の目はまるですねてる子供を見るようだ。
そんな姿が今はヤケに苛立った。
「うるさい。」
僕はその苛立ちをごまかすようにその場から立ち去った。
次の日。
朝一からティキが言った。
「謝ればいいんじゃないの?」
「・・・何の話?」
唐突に何を言いだしたのだろうか?
「何かわだかまりがあるなら謝ればいい。
謝ってお互いに許しあって、一緒にいればいずれまたもとに戻れるよ。」
「・・・っ。」
やまいとの関係のことを言っているのだろう。
謝ればいい。
そうだ。どうしてそんな簡単なことも気づかなかったのだろうか?
喧嘩したら謝る。
簡単なことだ。
そう思ったら一気に心が軽くなった。
もといすぐさまやまいのもとへ向かって、謝ることにした。
「や、やまい。」
「っ・・・な、なに?」
「その・・・あのこと、なんだけど・・・そ、その、エステルの・・・ご、ごめんね。もう二度としないから・・・許してほしいな・・・なんて。」
「っ・・・そう。別に・・・それは気にしてない。こっちこそごめんなさい。」
やまいはあのことを思い出したのか悲しそうな顔を僕の顔を見て、した。
「あはは、やまいは何も悪いことなんてしてないじゃないか。」
「ううん・・・タコのせいにしちゃった・・・私が・・・私が望んだことなのに・・・」
「そんなことないYO!」
「・・・。」
「・・・そ、それじゃこれで。」
よし。
これで仲直りだ。
「ちっがぁあああああああっ!!」
「うっわっ!?
な、なんだよ。」
「すっごい、すっごいぎこちないでしょっ!?
そのまんまでこれからずっと過ごす気っ!?」
「そのまんまって・・・別にいいじゃないか。」
「だから・・・前のように姉妹みたいに・・・」
「姉妹じゃないっ!!」
「っ!?」
自分でも驚く程の声が出た。
自慢ではないが僕のソプラノアニメ声は魔法で発声している。
つい声を荒げる、なんてことはまず起こりえないはずなのだ。が。
周りの人も何事かとこちらを見ていた。
謝っておこう。
「・・・ほんとにどうしたの?」
「どうもしてないって。ティキこそどうしたんだよ?」
「・・・謝ったのに全然変わらないし、前と違って・・・」
「前と違って?」
「・・・ずっと壁を感じるようになった。」
「・・・何をわかったようなことを。僕は何も変わってないって。」
「・・・。」
がたごとん
がたんごとん
がたんたごとん
馬車は一定のリズムを保ちながらただ進んでいった。
☆ ☆ ☆
今更であるが、なぜ僕たちがアルタイルを出たかというとやまいが薬を完成させたからである。
ならば長居は無用ということでさっそく豊穣の森、改め喰み殺す森へと向かった。
次の街は水晶砦と呼ばれる美しい砦が中心にある街。
クリスタルシティというそのまんまな街である。
この街は水晶やガラス、宝石職人などが多く、そう言った綺麗な物が好きな貴族も近くの貴族街には多々いるという。
近くには鉱山があり、そこから原料が採掘されるとこのこと。
街の近くまで行くと、そこかしこにゴーレムとでも呼ぶべきか。
クリスタルやガラス、石や鋼といった鉱石でできた動物らしきものがせっせと動いている。
それらが鉱山から採掘されたであろう荷車を運搬していた。
そうやって眺めていると乗客の一人が親切にも解説してくれた。
「ゴーレムを見るのは初めてみたいだね。あれらは人形師と呼ばれる職人たちが作る人の言うことを聞くことだけしかできない人工生命体みたいなものさ。」
「人形師?」
「ああ。
彼らはああいうゴーレムを作り、それを売ってお金に変えてるらしいね。腕のいい職人のゴーレムは国家予算クラスのお金でも買えないって噂もあるほどに高価なものだ。
決まって、職人は金持ちが多いね。羨ましいことに。」
と笑う親切な乗客A。
「国家人形師なんて制度もあるくらいだよ。」
錬金術師もありそうな役職である。
「国家の犬め、とか揶揄されるんですか?」
「いや・・・そんなことないと思うけど・・・そんな話どこで聞いたの?」
「いえ、別になんでもないです。気にしないでください。」
錬金術師はなさそうだ。
「ああ、そうそう。
最近、乗って操るタイプのゴーレムも出たって話だ。興味があるなら見るだけ見てみたらどうだい?」
乗って操ることのできる無機物の塊・・・それってロボットじゃない?
ちょっとワクワクしてきたが、それよりもここの特産品とかないのだろうか?
主に食べ物で。
「食べ物・・・かい?
えっと・・・何かあったかな?
確か・・・変な飴があるらしいとは聞いたことがあるけど。」
「変な飴?」
「ガラス職人が考え出した飴だそうで、子供に人気らしいよ。
俺はよく知らないけど。」
「へぇ・・・」
ガラス職人が考え出した飴、とくれば何となく予想はできる。
「いろいろと教えていただいてありがとうございます。」
丁度馬車も減速し、止まる頃合だ。
乗客もバスから降りる客のようにざわざわしだす。
「あはは、そんなの別にいいさ。よかったら・・・なんだけど、一緒に街でも回らないか・・・っていないしっ!?」
こうして僕たちは水晶砦クリスタルシティにやってきたのだった。
豆知識
身近にあるガラス。
これの原料は珪砂と呼ばれる半透明の砂で、二酸化ケイ素とも呼ばれるそうです。
石や砂という形で存在し、地殻の五割以上を占めている成分だそうです。
1500度以上に加熱し、ドロドロにした珪砂を竿の先に引っ掛けます。中心に穴が空いた竿の様な道具であるその竿に空気を送り込んで、空洞を作り、膨らんだガラスを型に、はめ込んでゆっくり冷やす。
およそ二千年前からこうして作られているそうです。
ちなみにどうしてガラスが割れるのか、割れやすいのかという仕組みは未だに解明されていないとか。
また、ステンドグラスなどにあるように着色されたガラスは珪砂のほかに酸化銅や酸化コバルトと言った金属を混ぜ合わせて作るのだとか。
現在使われている透明なガラス。
これも実は着色済みだったり。
ガラスのフチを見ると分かると思いますが、薄っすら緑に見えませんか?
珪砂を取り出す際、取り出せない鉄分が緑に見えるそうで、そこに赤紫を生む酸化マンガンを加えると緑と赤紫が混ざっていい具合に透けるように見えるそうです。
参考 テレビ朝日 奇跡の地球物語 ガラス謎学




