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透明人間の俺だが、片思い中の同期のスケベが拝めない  作者: saba20


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6/15

6話:マドンナのSOS

心を開く鍵は、言葉にならない

小さな溜め息の中に隠れている。


「はぁ……次のクライアントへの提案

どうしよう……」


ある日の夜。自室のデスクで頭を抱えて

小さく吐息を漏らす藤咲。キャミソール姿の

艶美な装いのまま、藤咲はノートPCの画面と

にらめっこをしていた。例のごとく

透明人間となり藤咲の部屋に潜入中の俺は

本棚の陰から息を殺してその様子を密かに

見ていた。画面に映っているのは

藤咲が担当する大手顧客向けの

システム導入提案資料だ。


「上司は定番のパッケージ構成が

無難だって言うけど……やっぱり

クライアントの悩みに寄り添って

直感的に使える最新のWebUIと

効率化機能を提案したいなぁ……

でも、技術的に可能なのかなぁ……」


ぽつりと漏らされた本音。

IT企業の営業としてどんな難易度の案件も

完璧にこなす藤咲。その完璧な仮面の裏には

単なる形通りの営業トークで終わらせたくない

という藤咲なりの熱意とこだわりが

隠されていた。技術的なバックボーンや

システム構成の可否について自信が持てず

華奢な肩をすくめて一人で資料作りに

頭を抱える姿は、会社での隙のない姿からは

想像もつかないほど健気で守ってあげたいと

思える愛おしさに満ちていた。


(なるほど……藤咲はクライアントの課題解決に

踏み込んだ、ワンランク上のシステム提案で

案件を勝ち取りたいのか……!!)


翌日の昼休み。いつも足を運ぶ社員食堂には

向かわずに自席で、俺は藤咲の案件用の

社内共有ドライブへとそっとアクセスした。

クライアントが気にするであろう

セキュリティ対策や、藤咲がやりたがっていた

最新UIの実現可能性を完璧に網羅した

補足資料を共有フォルダに密かに

アップロードしておいた。 昼休み明け

すぐに藤咲の様子を確認しに向かうと

共有フォルダを開いて息を呑む

藤咲の姿が見えた。


「えっ……? これ、私が迷ってた部分の

仕様……全部網羅されてる……!?」


画面を食い入るように見つめ、パッと表情を

明るくさせる藤咲。誰が共有フォルダに

置いたのか分からず、驚きと喜びが

混ざったような表情でオフィスを見渡している。

その瞳は期待と感動でほんのりと潤み

桃色に染まった頬が藤咲の素直な歓喜を

物語っていた。普段のビジネスライクな笑顔

とは違う、幼子のように屈託のないその表情。

隠しきれない愛らしさが全開になり、遠目で

見ているこちらまで息が止まりそうになる。


「すごい……! これなら絶対に

クライアントに刺さる提案ができる……!」


誰も見ていないと思ったのか、胸の前で

キュッと小さな拳を握りしめて

ガッツポーズをする藤咲。心底ホッとしたように

瞳を細めて心から輝くような笑顔を浮かべる

その横顔に、俺の胸の奥は甘い熱でじんわりと

満たされていった。言葉を直接交わさずとも

俺の手で藤咲の不安を溶かし、あんなにも

可愛い笑顔を引き出せたという事実。

その優越感と満足感が

脳内を強烈に痺れさせていく。


(喜んでもらえてよかった……。

だけど、これだけで終わる俺じゃない)


会社で見せたあの無邪気な表情。今夜

誰の目もない自室へと戻った時、藤咲は

どんな顔で緊張の糸を解き、どれほど愛らしい姿で

喜びを爆発させるのだろうか。

密かなサポートで藤咲の悩みを溶かしたという

圧倒的な達成感と、これから目の当たりに

するであろう俺しか知らない藤咲への妄想が

頭を駆け巡る。背筋を襲う狂おしいほどの

興奮を必死に押し殺しながら、俺は今夜の

潜入へと思いを馳せ、静かに会社を後にした。

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